航空機器メーカーのエアバスは、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」を用いる新たなソフトウェアを公開しました。軍隊で戦術を策定する際に、3Dマップを操作したり、遠隔で共有しながら検討を進められるツールです。
21世紀の軍需に応える
エアバスの防衛・宇宙部門が発表したのは、「Holographic Tactical Sandbox: Augmented Reality for Mission Preparation(ホログラフィック戦術検討:任務遂行準備のためのAR)」というタイトルのデモ動画。ARヘッドセットを用いて、戦場での戦略立案を行うツールです。
このソフトウェアを使うことで、指揮官や兵士らは簡単に戦場の3Dマップを見ることができます。目の前に同じ画面を共有し、任務遂行の計画を立てたり、訓練を行ったりするのに有効です。
エアバスは公式声明の中で、この新アプリケーションを”21世紀の軍需に応えるもの”だとしています。「このツールは軍事における真のゲームチェンジャーです。これまで同様の(戦略立案)プロセスをサポートしながら、一方でより早く、優れた準備が可能です。また何より、遠隔で情報共有しながらミッションに取り組んだり、戦地をより正確に把握できるようになります」
本ツールを使えば、指を動かすといったジェスチャーによる操作で、3D地図を回転させたり、注釈をつけたりといったアクションも可能。様々な角度から戦場を眺め、実際に行動する前に有効な戦術を見つけられるといいます。さらにリモートネットワーク機能により、屋外でも情報を共有し、確認することができます。
対応デバイスは拡大の可能性も?
エアバスは従来HoloLensをユーザーとして使用しており、整備士の教育等にデバイスを活用してきました。しかし6月に研修、リモートでの協業、保守作業に関するアプリケーションの販売を発表。同社自身がHoloLens活用で得た経験を元に、ソフトウェア供給側への転換を明らかにしていました。
今回の軍事向けアプリケーションも、このソフトウェア開発事業の一環と見られます。
なお動画中で使用されるのは初代のHoloLensですが、アプリケーションは最新のHoloLens 2に対応するものと考えられそうです。一方でエアバスは対象デバイスを明言しておらず、HoloLens以外のARヘッドセット、例えばMagic Leap One等に対応する可能性も残されています。
HoloLensの軍事利用、課題は
HoloLensの軍事利用については、米陸軍が実戦・訓練に向けて10万台のHoloLensを導入し話題となりました。実際の戦地でなくてもリアルに戦場を再現したり、作業の効率化で過酷な状況に置かれる時間を短縮したりといった効果が見込めます。
一方で実戦への利用にはマイクロソフト従業員から抗議の声が上がるなど、課題が残されています。
(参考)Next Reality