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業界動向 2019.02.28

HoloLensの軍事利用にマイクロソフト従業員が抗議、CEOは判断変えず 米陸軍と5億ドル契約

マイクロソフトの従業員の一部が、同社CEOのサティア・ナデラ氏とプレジデントのブラッド・スミス氏に対して抗議文書を送付したことが明らかになりました。抗議文書はマイクロソフトが米国陸軍へMR(Mixed Reality/複合現実)デバイス「HoloLens」を納入する契約に対し、「戦争や弾圧のための技術開発を拒否する」内容です。

デバイス10万台、約5億ドルの大型契約

この抗議文書の背景にあるのは、マイクロソフトがアメリカ合衆国陸軍と締結したMRヘッドセット納入契約です。

契約が結ばれた新システムは「Integrated Visual Augmentation System (IVAS)」と呼称されており、先進機材を使用した「致死性の攻撃に対する防御力の向上」「攻撃能力の向上」が目的。マイクロソフトは10万台のMRヘッドセット「HoloLens」を納入する予定であり、契約金は4億8千万ドル(約540億円)。米陸軍は本格的にHoloLensを実戦と訓練両方に大型投入する狙いです。

HoloLensを“良いことのために”

従業員らは「HoloLensを戦争ではなく良いことのために」と題された文書内で、「戦争や弾圧」のための技術開発に従事することを拒否し、以下のように訴えています。

我々は、マイクロソフトが米軍に武力技術を供与するために開発を進めること、そして当社の製品を使い、一国が「致死力を高める」のを助けることを憂慮しています。(中略)我々は武器を開発するために業務に従事しているのではありません。そして、我々の技術がどのように使われるのかに対して、発言権を求めます。

抗議文書は技術の用途について透明性が欠けている点も指摘しています。HoloLensに携わるエンジニア達は今回の契約が起草される以前、このデバイスは「病院やNASAが使用するという想定のもと業務を行っていた」とコメントしています。

CEOは判断変えず

マイクロソフトが米軍や軍事関係の契約を締結するのは、今回が初めてではありません。しかしIVASに関する契約は、同社にとって初の戦闘用途での納入となります。CEOのサティア・ナデラ氏はこの判断を擁護し、同社は新しい技術を“民主主義を守る組織に提供する務めがある”としています。

ナデラ氏は同時に「当社は自由を守るために選んだ政府に対して、技術提供を拒むことはしません。これは当社の信念に基づく決定です」「我々は決定について高い透明性を持っています。(従業員と)会話を続けていきます」とコメントしました。

抗議文書中では、従業員はマイクロソフトがIVASに関する契約をキャンセルし、武力技術に関する開発を中止するよう求めています。また、独立した外部倫理委員会の設置なども要求事項として掲げています。

着々と進むVR/AR/MRの軍事利用、倫理的問題も

VR/ARの軍事訓練への利用は進んでおり、2025年までに17.9億ドル(約2,000億円)規模になるという予測も出ています。2019年2月現在は実戦での利用例はありませんが、今後用途拡大が進めば、マイクロソフトのような倫理的な問題が生じる可能性もあります。

(参考)VRScout
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