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業界動向 2023.01.23 sponsored

バーチャルが育む共有体験が、人と街を繋ぐ。「エアレース渋谷2022-2023」が見せる未来とは?

(編注:「渋谷キャスト」掲載記事を転載)


(提供:渋谷キャスト、以下同じ)

今冬、渋谷キャストでは、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)、現実世界の3つの領域にまたがったプロジェクトとして「トリプルキャスト」を始動します。
「トリプルキャスト」では、渋谷キャスト初の試みとして、VRChatに渋谷キャストのVR空間を構築。バーチャルイベント「エアレース渋谷2022-2023」を中心に、リアルとバーチャルの一貫性のある世界観を体験できる3つのコンテンツが連動した企画を展開します。

「エアレース渋谷2022-2023」は、VRとARを使ってバーチャルとリアル(現実世界)を繋ぎ楽しむレースイベント。ユーザーはバーチャル空間につくられた渋谷キャストを舞台に、空中飛行ができる球体型のマシンに乗り込んでレースゲームを楽しめます。
さらに、レースの結果データをARで再現。渋谷キャストを訪れた人はスマホ片手にARを活用してレースを観戦したり、フォトスポットで記念撮影を楽しんだりすることも可能です。

VR・ARは昨今よく耳にするキーワードですが、渋谷キャストが今VR・AR・リアルを跨ぐイベントを開催することには、どのような思いや意図が込められているのでしょうか。また、この渋谷キャストの新しい挑戦は、渋谷の街にどんなインパクトをもたらすのでしょうか。

今回は、「エアレース渋谷2022-2023」を企画した建築設計事務所NOIZ豊田啓介さんと、VRの設計を担当されたVoxelKeiさんにお話を伺いました。

【プロフィール】
豊田 啓介 / Keisuke Toyoda
1972年、千葉県出身。1996~2000年、安藤忠雄建築研究所、2002~2006年、SHoP Architects(ニューヨーク)を経て、2007年に蔡佳萱と建築事務所NOIZを設立。
2016年に酒井康介が加わり、東京、台北、ワルシャワを拠点として、コンピューテーショナルな手法を駆使し、建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築設計事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや製作、システムの実装から教育、各種リサーチ& コンサルティング活動も積極的に展開する。

VoxelKei
訓練用シミュレーターシステム製造メーカー勤務を経て2003年に独立。リアルタイム3DCGを主軸にCG全般の制作を行いながら、2010年前後からアプリケーションの開発を独学。
以降CG技術を活かしたアプリケーションの開発を模索しつつ2014年からはVRヘッドマウントディスプレイ向けのコンテンツを制作。2018年にVRChatを始めてVRのさらなる可能性を感じ、VR空間での表現やその活用を模索して現在に至る。

共に体験し物語を分かちあう仕掛けが、場の力へ繋がる

——「エアレース渋谷2022-2023」とは、一体どんなイベントなのでしょうか?

豊田:
VRは、100%バーチャルの世界に入り込んだ体験をつくりだせる技術で、専用のヘッドマウントディスプレイを使用します。一方ARは、多くの場合スマートフォンやタブレットの画面を使用して、リアルとデジタル2つの世界を融合させる技術で、たとえばポケモンGOはこれを活用した例。
VR・AR・リアルを活かした3段階の楽しみをつくろうと企画したのが、今回の「エアレース渋谷2022-2023」です。

冬のイベント企画についてご相談いただいた際、もともと手元にあった渋谷キャストの3Dデータを活用したいと考えていました。せっかくだったらバーチャルとリアルの両者をうまく繋ぐようなもので、なおかつ冬っぽくてワクワクするようなものがつくりたいと構想しました。

豊田:
一方で、渋谷キャストは住宅街への入り口に位置するので、広場で開催されるイベントもファミリー向けや、個人のクリエイター向けのものも多く、草の根の感じが強いですよね。だから、今回の企画においても渋谷ならではのテック感を感じられるものでありながら、特殊な技術やデバイスをもつ人だけが楽しめるイベントにはせず、どの世代でも楽しめる要素が必須だろうと考えていました。

今回VR空間の設計を担当してくださったVoxelさんのつくるものは、ひとつずつのクオリティも技術のレベルも高いのに、必ず遊び心があるところにこだわりを感じて、個人的にずっとファンでした。「エアレース渋谷2022-2023」も、かっこよさだけじゃなく、いろんな人が純粋に楽しめるイベントにできると渋谷キャストならではの面白さが出せるんじゃないかと考え、Voxelさんとぜひご一緒したいとオファーしました。AR技術については、DETOR(※)さんにご協力いただいています。

(※DETOR(デトア)……様々な領域を対象にした「設計のためのソフトウェアの設計と開発」を行うスタジオ。3DCG、幾何、データビジュアライゼーション、ユーザインターフェースなどの知見を用いつつ、対象領域の専門家との対話を通じて、実際的な問題の解決や設計手法・フローの効率化に貢献するツールを具現化していきます。)

VoxelKei:
光栄です(笑)

リアルをVR空間で再現して、そのVR空間で起こった景観をリアルに持ってくるという試みを個人的に結構長いことやっているので、技術的にバーチャルとリアルをARで繋げることはわかってました。ですが、実際にそれを実現している企業のプロジェクトはあまりないので、今回の試みはチャレンジングであり面白いと思っています。


(インタビュー当日、ご自身が活動で使用されているアバターと同じスタイルでご参加くださったVoxelKeiさん(右))

豊田:
意外にないですよね。僕は建築の人間なので、バーチャルとリアルが別物とされてお互いに閑散としてしまうのではなく、相互に連携してバーチャルも物理空間もどちらも楽しくなってほしいし、「現地に行くと楽しい」という流れをちゃんとつくりたいんです。

そのためにも、バーチャルとリアルを融合させられる土台をつくり、今後同じような取り組みが行えるエコシステム(仕組み)をつくりたい。それができて初めて、今回のような実験的なイベントの価値があると思うので、そこにうまく繋げていきたいです。


(取材当日、VoxelKeiさんが持参したヘッドセットを装着し、ゲームを楽しむ豊田さん)

豊田:
ARを活用したポケモンGOが社会現象になった理由の一側面には、「ポケモン」というみんながよく知っているものを媒体としてゲームで遊びつつ、現地にも足を運ぶ流れができたことがあると思っています。

そうやって、周りの人と物語をどれだけ共有するかが場所の力に繋がっているんだとすると、その場に行ったことがあるかないかという物理的な2択じゃなく、その中間に「バーチャルで行ったことがある」とか、「バーチャルでみんなと共有した体験がある場所」が意味を持ってくるはず。

だから、今回のレースもバーチャルの渋谷キャストを舞台にすることで、レースの参加者は渋谷キャストを知っている気になるし、行ってみたくなるという流れをつくれるよう意識しています。


(あえて上下に移動するレースコースにすることで、普段は見えない角度から渋谷キャストの建物や街を見てもらえる瞬間をたくさんつくるように工夫しているそう)

VoxelKei:
VR空間上で現実世界を忠実に再現したところへ行ったあとに現地へ行くと、 初めて訪れたのに来たことある感というか、「あのとき、あの友達と遊んだ本物がここなんだ」という感慨があります。

一時期VRで旅行に行くのが話題になった時、VRで行けばリアルで行く人が減るんじゃないかと言う人がいましたが、僕はむしろ逆だと思っていて、VRで楽しんだ記憶があれば本物を見たくなると思うんです。

VRで行ったから満足して現地に行かない人は、最初から現地には行かない人なんですよ(笑)VR空間で遊んだことは、現地に足を運ぶきっかけになる。そういう意味では、VRで体験することは現地に行った時の体験をより豊かにするものだと考えています。

つくって終わりのコンテンツではなく、新しい表現を生み出し続けるための仕組みを育む


VoxelKei:
VRとリアルを繋げる技術はすでにある。あとは、それを実際運用するときにどううまく使えるかがチャレンジングな部分です。さっき豊田さんがおっしゃっていたエコシステムの話で言えば、VRを活用したプロジェクトは話題性を求めて1回つくられたけど、その後はほったらかしにされてしまいがちなんですよね。

でも、今回のように渋谷キャストという施設自体が主体的に取り組むことで、システム自体を施設の1つのような位置付けで育てていける可能性があると感じました。

豊田:
特に渋谷キャストの場合、企業が施設を借り切ってイベントをやることもしょっちゅうあるわけですよね。そんなとき、VRやARを取り入れたコンテンツを0から毎回つくるとすごくコストがかかってしまうけど、もともとパッケージがあるとコンテンツさえ入れれば手軽に開催できるようになる。

そういうふうに、参加する側やイベントを企画する側にも付加価値が出るようなエコシステムまでもっていきたいですよね。そこに早く到達するためには、今回の「エアレース渋谷2022-2023」はすごくいい起爆剤になるのではと思ってます。

VoxelKei:
これからは今回つくったVR・AR・リアルを繋げるシステムをいろんな人が実際に見て使うことで、それを今後どう活かしていけるかのアイデアを練っていく段階だと思います。つくって「みんなこれで楽しんでね」で終わりのフェーズから、「こういうことができるので、じゃあ今後どう使っていけばいいだろう?」と考えられるスタート地点にやっときつつある段階だと感じています。

豊田:
ARとVRは似てるようで、やっぱり全然違う生き物。
その両者を繋ぎ、今後も継続的に活用していけるような開発に取り組めたことは大きな価値になるはずです。今回を成功事例にしていくことが渋谷キャストにとっても大きな意味をもってくるし、VRやARが今後もっと発展していく上でも大事だと思っています。

今回の取り組みに限らず、現実とバーチャルの関わり方って本当に可能性がいっぱいあるんです。たとえば、「巨大なポケモンが渋谷キャストをガサガサ揺らして、 それをみんなでやっつけるとポケモンが建物の裏に隠れて、でも、トンネルの向こうに足が見える」という表現は、3Dの都市データがあって初めて実現できること。だから、すでにデータがある渋谷キャストだったら、そういったオクルージョン(手前にある物体が後ろにある物体を隠す状態)を活かせます。そういう渋谷キャストならではの強みをいろんな企業に活用してもらいたいですね。

VoxelKei:
VRの世界をつくるときに使う3Dスキャンデータというのは、あくまでデータなわけで、誰が使っても同じなんですよね。今までは手で3Dモデリングをしていたのですが、 そういうスキルがない人でも3次元のデータをつくれる時代になってきている。だからこそ、それをどう使うかがこれからのテーマだと思っています。

(取材では、VoxelKeiさんの作品「旧摩耶観光ホテル活用実証実験プロジェクト」がつくり出した光の表現を活用して、ホーンテッドキャストができるかも!?と盛り上がる一幕もありました)

バーチャルとリアルが混ざりあうことで、予期せぬ世界との出会いが生まれる

豊田:
「エアレース渋谷2022-2023」は、もちろんヘッドマウントディスプレイを使ってレースで飛び回れたら1番楽しいですけど、 それは全員ができるわけじゃないですよね。ただ、普段はVRに縁がない人にも「楽しそう!」というワクワクを体感してもらいたいんです。

渋谷キャストは広場があるので、普段交わらないような人もふらっと訪れて混ざりあうのが面白いところ。しかも、キャットストリートと渋谷の繁華街が混ざる気水域にあるのも特徴で、VRとARのどちらにも興味がなくてもたまたま現地に来ちゃう人が混ざるチャンスが常にあります。

豊田:
ちょっとお弁当を食べにきた人が、普段だったら絶対知らなかったような世界をのぞくことが起こってほしい。VRでゲームをがっつり楽しむ人もいれば、ARで観戦を楽しむ人もいるし、その見慣れない光景を側から「なにあれ?」と、ぽかーんと眺めている人もいてほしい。そういったVRやARの世界と現実が重なりあうとより立体的になり、VRやARがさらに広がっていく可能性に繋がると思います。

最初に携帯電話が出たときに、道の上で喋ってる人をみんなが違和感を持って見ていたように、いろんなレイヤーがあって、それぞれ別でもいいし混ざってもいい。「昔は違和感があったよね」ということをみんなが記憶してくれる最初のイベントになってくると、それだけで嬉しいですね。

VoxelKei:
VRでゲームを楽しんでもらうことはできるけど、そのデータをARに飛ばして、現地を訪れた人がスマホで面白い体験ができるかどうか。それが1番難しいところであり、今回のプロジェクトでは1番重要です。今回の「エアレース渋谷2022-2023」は、何も知らない人がスマホだけを持って現地に来て、 そこで楽しめるかどうかが実験的なところです。

さらに僕の担当部分に関しては、VRとしてシンプルに楽しんでもらえるものにしたい。操作方法をそれほど覚えなくても、できるだけ直感的に飛べて、かつ酔いにくい飛行システムをつくっているので、空を飛ぶ楽しさや気持ちよさを感じてもらえたら幸いです。



豊田:
Voxelさんのつくる世界は、独特の世界観というか透明感みたいなものがあって、それが今回も活かされています。バーチャル表現ならではのリアルとは違う渋谷が見えている。
ゲームとも映画とも違うちょっと独特の世界観が魅力ですし、普段VRに触れない人が「じゃあ、ちょっとやってみようかな」という入り口になりうると思います。

VoxelKei:
そうなると嬉しいですね。さらにVRのユーザー目線で言えば、VRでレースに参加した後、たとえば友達や家族と一緒に渋谷キャストに来て「これ俺が飛んだやつだよ」と、周りの人とVR空間の体験をリアルで共有する使い方をしてもらえたら幸せです。

ややこしいんですけど、地方に住んでいる人が、東京に住んでいる友達に参加したVRレースのデータだけを渡す。そして、「東京に住んでいる人が、地方に住んでいる友達がVR上の渋谷で飛んだ姿を現地で見る」ということも起きたら面白い。そういう交流や楽しみ方をしている人たちがTwitterなんかに出てくると非常に嬉しいですね。

豊田:
ありそうでなかった世界ですね。

バーチャルな空間を活用することで、現実世界でその場に「行った・行かない」という2択の狭間をつくりだし、今までにない人の流れをつくりだす。さらには、バーチャル空間だからこそ実現できる表現を活用し、リアルだけでは成立しなかった試みをかたちにしながらバーチャルとリアルのどちらも活かしていく。渋谷キャストの挑戦からは、これからの時代の人と街の新しい出会い方や街の活用の新たな可能性を感じます。

「エアレース渋谷2022-2023」の詳細は

こちらからぜひご覧下さい。

なお、下記日程でAR体験会を渋谷キャストの広場で開催します。お近くにお越しの際は、皆様奮ってご参加ください。

・1月27日(金)~29日(日)15時~20時
・2月24日(金)~26日(日)15時~20時

PHOTOGRAPHS BY Yuka IKENOYA(YUKAI)
TEXT BY Atsumi MIZUNO

(企画・制作・提供:渋谷キャスト)


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