アイトラッキング技術に関するOculusの新たな特許が米国特許商標庁から公開されました。内容は、ライトフィールドカメラを用いたアイトラッキング技術に関するものです。より高度な視線追跡、ひいてはフォービエイテッド・レンダリングによる高解像度のVRを実現すると期待されます。
ライトフィールドカメラとは
これまでに発表されているアイトラッキング(視線追跡)システムの大半は、一般的なカメラや赤外線カメラを用いてきました。
このようなカメラと比較すると、ライトフィールドカメラは”光が動く方向”も捉える点が異なります。この方向に関する情報によって、対象物の深度情報、すなわち立体的な3D画像をキャッチします。そしてユーザーの視線をより正確に把握できるという仕組です。
アイトラッキングの重要性
アイトラッキングの意義としては、VRの中でキャラクターなどと視線を合わせられることにより、「そこにいるという存在感」を強められる点が挙げられます。また、フォービエイテッド・レンダリング(Foveated Rendering)が可能になる、というのも非常に重要な点です。
フォービエイテッド・レンダリングは、画面をレンダリングする際、人の中心視野ほど高解像度で、そして視野の外側に行くに従って低解像度で描画する手法のことです。高解像度のレンダリングを必要十分な領域にとどめることで、PCにかかる描画処理の負担を大幅に軽減させることができます。つまりVR体験に必要なPCスペックのハードルが下がったり、現在のグラフィックカードでも今以上のパフォーマンスを発揮できるなどのメリットが生まれるのです。
Oculusが描く視線追跡の未来
2016年10月に行われた開発者会議Oculus Connect 3(OC3)にて、同社のR&D;部門のトップであり、チーフ・サイエンティストのマイケル・エイブラッシュ氏は、フォービエイテッド・レンダリングを実現するために必要な視線追跡について論じました。
当時エイブラッシュ氏は、「完全なアイトラッキングにはまだまだ研究を重ねる必要があるが、いずれにせよ、アイトラッキング技術は将来のVRにおいて中心的な技術になるだろう」と述べました。しかし2018年11月現在でも、フォービエイテッド・レンダリングを可能にするほど高精度のトラッキングは難しいのが現状です。
OC3から2年。2018年9月のOculus Connect 5(OC5)にてエイブラッシュ氏は、充分なクオリティのアイトラッキングが4年以内(2022年まで)に実現することへの期待を表明しました。同氏の見通しは、今回公開されたライトフィールドカメラの技術にかかっているのかもしれません。
もしライトフィールドカメラを用いるのであれば、アイトラッキングはこれまでの考えよりも高コストの技術になる、という懸念はあります。しかし同時に、画像処理やVR体験の質の劇的な向上も期待されます。
(参考)UploadVR