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業界動向 2021.02.05

2021年のVR市場はどう動く? 2020年に報じられた、注目すべきトピックたち

VR関連業界で働く人々や投資家は、毎年次のような疑問に直面しています――「今年、VR市場や業界はどのように動くのだろうか?」。たびたび繰り返される話題ではあるものの、市場動向を推察することは容易ではありません。主要なVRヘッドセットメーカーは詳細な出荷台数を公表しておらず、調査会社が公開するレポートは総論中心のため、個々のデバイスやコンテンツの状況を、詳細に把握することは困難です。

米メディアRoad to VRは、直近のVRデバイス・VRコンテンツ関連で14のトピックを抽出。2020年の様々な報道や情報から、2021年におけるVR市場の動向を探っています。

Oculus Quest

「Quest 2はメインストリームになる」とザッカーバーグ氏

フェイスブックは2020年第4四半期の決算報告にて、広告外収入が前年同期比で+156%(約2.5倍)の大幅増となったことを発表。これは10月発売のVRヘッドセット「Oculus Quest 2」の好調によるもので、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は「Quest 2はVRヘッドセットとして初のメインストリームになる」と発言しました。さらに、次世代機が開発中であることも明らかにされています。

ザッカーバーグ氏は以前より、VRは長期的な計画であると説明していました。今回の”メインストリーム”発言からは、フェイスブックが過去になく強気の姿勢であることが読み取れます。

Quest向けVRゲームレビューの総数が、Rift向けを上回る

2021年1月末、Oculus Quest向けVRゲームのレビュー総数が、Oculus Rift向けゲームのレビュー総数を上回ったことが明らかになりました。またQuest向けゲームのユーザー評価は、Riftと比較して星4.5から5.0の高評価が多いことも確認されています。Oculus Quest 2といった一体型ヘッドセットに注力するフェイスブックの姿勢は、着実に成果を挙げているようです。

PC向けVR

Oculus Rift S、2021年に販売終了

2020年9月、フェイスブックはPC接続型VRヘッドセットOculus Rift Sを、2021年に販売終了することを発表しました。Rift Sだけでなく、今後はPC向けVRヘッドセットを生産しないことも明らかにしています。

他方、Oculus QuestをPCと接続する機能「Oculus Link」を使うことで、Oculus QuestでもPC向けVRコンテンツをプレイすることはできます。同社は今後一体型VRヘッドセットにて、VR市場の覇者を狙っているようです。

Steamの新規VRユーザーは約170万人

Valveによれば、PCゲーム配信プラットフォームSteamにおける2020年の新規VRユーザーは約170万人に達しました。SteamVRの総セッション数は1億400万にのぼり、ゲームの売上は前年比で71%増えたことが報告されています。

Oculus Quest 2のような“派手”な躍進でこそないものの、Steamでも着実にVRが成長していることが見てとれます。なお、売上の成長はValve自らが手掛けた「Half-Life: Alyx」が要因であるとしています。

SteamでのVRヘッドセットユーザーが急増

2020年4月、Steamでの月間VRヘッドセット接続数が初めて200万台を突破しました。その後も着実に伸長し、同年11月には230万台に達しています。月間の接続台数は前年比で94%増。SteamにおけるVRヘッドセットユーザーは急増しています。

高価格でも好調のVALVE INDEX

Valve社のPC向けVRヘッドセット「VALVE INDEX」は、2019年の発売以降、未だに世界的な品薄傾向が続いています。しかしSteamでの高収益製品トップ5に13週連続でランクインし、複数回に渡って収益製品首位にも立ちました。VALVE INDEXはコアなVRゲーマーの支持を集めており、フルセットが日本円で¥125,800 (税抜)という高価格であっても、一定の市場を確立できることを示しています。

PlayStation VR

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は2020年1月、PlayStation 4用VRヘッドセットPlayStation VR(PSVR)の世界販売台数が500万台を突破したと発表しました。2016年の発売から5年が経つ今でも、世界各地で購入されていることがうかがえます。一方で10月のPlayStation 5(PS5)発売時もPSVRに関する動きは発表されず、続報が待たれます。

VRコンテンツ

「Pistol Whip」開発元、収益は2019年から急増

VR射撃リズムゲーム「Pistol Whip(ピストルウィップ)」開発元のCloudhead Gamesは、2016年から2020年の収益推移を公開しました。資料によると、2020年12月時点の収益は前年同時点比で60%の大幅増。同スタジオ製のゲームをプレイしたユニークユーザー数も、前年比131%の増加ということです。2016年の盛り上がりから2年間の停滞を経て、2019,2020年と別次元の飛躍を見せています。

グーグルが「Tilt Brush」オープンソース化

2021年1月、グーグルはVRイラストレーションアプリ「Tilt Brush」のオープンソース化を発表しました。以降はグーグル社内での開発をストップし、コミュニティの手に委ねる形となります。

2016年のリリースから長く支持を集めていたアプリの開発中止、AndroidベースのVRプラットフォーム”Daydream”終了など、グーグルのVRへの注力が弱くなっている点をRoad to VRは指摘。「グーグルのような企業にとって、VRというまだマス向けのユースケースが限られる分野は難しいのではないか」と推察しています。

「The Walking Dead」のVRゲームが発売1年で売上2,900万ドル

VRゲーム「The Walking Dead: Saints & Sinners」が、発売から1年で2,900万ドル(約30億円)以上の収益を上げました。

開発元のSkydance Interactiveによれば、2020年10月に発売されたOculus Quest版が、Rift(Rift S)版の10倍以上の売り上げを記録していることも報告しています。他企業もQuest版での好調を報告しており、コンテンツメーカーの収益源として、優先的にタイトルが供給される可能性が高くなるものと思われます。

「Rec Room」の月間アクティブVRユーザーが100万人突破

ソーシャルVRアプリ「Rec Room」の、VRヘッドセットを使用している月間アクティブユーザー数が100万人を突破したことが報告されました。開発元のRec Room社は、VRユーザーの平均プレイ時間は1日あたり平均“2.7時間”で、使用されているVRヘッドセットの約半数は「Oculus Quest 2」であるとも明らかにしています。

アプリには非VRモードも用意されており、PC版のほか、PlayStation 4やiOSなど複数のプラットフォームで配信中です。新型コロナウィルスによるロックダウンの影響で、こうしたソーシャルサービスの利用は増加しています。

VRライブアプリ「Wave Beta」提供終了

2021年1月、VR音楽アプリ「Wave Beta」の提供終了が発表されました。開発・運営を行うWaveは、今後はライブ配信といった通常のメディアチャネルやストリーミングプラットフォームを活用し、より幅広いユーザーへの作品配信を目指します。

一部のVRゲームが多くのアクティブユーザーを獲得する一方で、大きなVRイベントビジネスをマネタイズできるほどには成長できていない可能性が指摘されています。

ロケーションベースVR

VR体験施設を運営するSandbox VRの米国子会社が事業再生手続きを行うなど、新型コロナウィルスによる施設型VR(ロケーションベースVR、VR体験施設)への影響は深刻です。他にもThe VOID、日本ではMAZARIAVR ZONE OSAKAといった人気のVR体験施設が閉鎖に追い込まれています。

大型資金調達

新型コロナウィルスの影響で、人と人の接触を伴わないコミュニケーション、ソーシャルVRやVRによるコラボレーションが注目を集めています。2020年の投資はソーシャル分野やVRトレーニングが目立ちます。Rec RoomOsso VRArthur Technologiesはその一例です。また将来のハードウェアとして期待されるVarjoCREALPimax等も資金調達を行いました。

(参考)Road to VR
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