Home » 一体型、ハンドトラッキング、視線追跡、触覚 第2世代のVRデバイスを予見させたGDC2017


テック 2017.03.08

一体型、ハンドトラッキング、視線追跡、触覚 第2世代のVRデバイスを予見させたGDC2017


2月27日からサンフランシスコで開催されたGDC2017では、メーカー各社が最新のハードウェアの展示を行いました。

2016年に発売されたOculus RiftやHTC Viveなどを第1世代のVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)とすると、次モデルとなるであろう第2世代のVRHMDに搭載されると予測される技術の展示が多くありました。

本記事では、一体型、ハンドトラッキング、視線追跡、ハプティクスなどを紹介します。

一体型×ハンドトラッキング、クアルコムの一体型VRHMD

スマートフォン向けのチップセットを製造しているクアルコムは、同社の最新型のチップSnapdragon835を使った一体型VRHMDを展示しました。一体型のVRHMDはスマートフォンやPCなどを必要としないスタンドアローンのデバイスです。ワイヤレスで、手軽にVRを楽しめるのが特徴的です。

クアルコムの一体型VRHMDは頭を動かすヘッドトラッキングだけでなく、歩いたりVRの中で手を動かすことができました。ヘッドセットの正面に搭載されたカメラで位置をトラッキングする「インサイドアウト方式」に対応しており、HTC Viveなどのように外部に装置を置かなくても自律的に位置を検出することができます。

また、手を動かす機構としては、ハンドトラッキングセンサーを展開するLeap Motion社と提携し、同社の未発売のセンサーを前面に搭載しUSB接続していました。

[wc_row][wc_column size=”one-half” position=”first”]

[/wc_column][wc_column size=”one-half” position=”last”]

[/wc_column][/wc_row]

体験したデモは、Leao Motionが1年前に公開した『Blocks』というデモで、両手でつまむような動作でブロックを呼び出し、そのブロックを積み上げたり投げたり、好きなように動かせるというもの。手のひらを裏返してかざすと、メニューが開きブロックの形を変えることができます。

体験している様子

Oculus Rift版の動画。これが全く問題なく一体型のVRHMDで体験できた

一体型とはいえ、PC版と全く同様に動作しており、非常に高精度に手のトラッキングを実現していました。インサイドアウトトラッキングによる位置検出は、会場内がかなり雑然としていたこともあり、「ずれていってしまう(ドリフトする)」といった点が気になりましたが、ハンドトラッキングは今すぐに製品化してほしい、と思えるほどの完成度でした。

ワイヤレスでスマートフォンを差し込む手間ももなく手軽に体験できて、なおかつ手に何かを装着したり持つ必要もなく直感的に操作でき、歩くことも可能。とVRの敷居をさげて使いやすくする大いなる可能性を感じた体験でした。

なお、このクアルコムの一体型VRHMDはメーカーに提供するリファレンスモデル(参考モデル)のため、今後各メーカーからこういったデバイスが登場する可能性があります。

視線追跡×ハイエンドVR TobiiがHTC Viveに視線追跡を搭載したデモを展示

スウェーデンの視線追跡センサーメーカーTobii Technologiesは、HTC Viveに同社の視線追跡ユニットを搭載したデモを展示していました。


HTC Viveのレンズの周りに配置されている視線追跡用のセンサー。Tobiiの担当者によると、このセンサーだけでなく基盤にもカスタマイズを施しており、データ転送用のケーブルはもともとHTC Viveに接続されているケーブルを使用しているとのこと。

体験したデモは非常に軽快で正確。目の動きを登録する初期設定(キャリブレーション)も目の前に浮くピンク色の点を3箇所見るだけで終わります。

体験できたデモは3つ。1つ目は鏡の前で自分のアバターの目が動くデモ。隣にある目が動かないものとの比較で「まるでそのアバターが自分の分身であり、自分がVRでアバターとして生きているような感覚」になりました。

体験動画。右が視線追跡ありのアバター、左がなしのアバター

2つ目は、少し離れたところに瓶が並んでおり、石を投げて当てていくデモ。視線を使わないと狙うのは難しいですが、視線追跡がある状態だとターゲットを見ているだけで正確に当たるようになります。視線追跡をコントロールのメインとして使うのではなく、補助的に使うデモでした。

3つ目は、砂漠のような場所で狙ってくる敵の攻撃を“掴んで、当て返す”デモ。敵の光の弾を掴んだら、視線で敵機をロックオンします。

Tobii Technologiesが展示したデモの様子を全て納めた動画(提供:Tobii Technologies社)

視線追跡に関しては日本のFOVEが搭載VRHMDを発売していますが、筆者の手持ちの開発機「FOVE 0」と比べるとTobiiの展示していたデモはそれを上回る精度でした。一方、HTC ViveにVRの仕組みOpenVRを提供しているValve社は視線追跡技術を持つSMI社と提携しています。TobiiかSMIかは不明ですが、今後OpenVRから登場するVRHMDに視線追跡機能が搭載されることは間違いないと考えられます。

Gear VRに位置トラッキングとハンドトラッキング「Ximmerse」

中国のXimmerse社は、Gear VRにアタッチして位置トラッキングとハンドトラッキングを行うキットを展示していました。同社はこれまでも開発機をさまざまなイベントで展示しており、筆者も2016年のCES2016以来数度にわたり同社のデモを体験してきましたが、ようやく製品版のリリースにこぎつけそうとのこと。

仕組みはPlayStation Cameraと同じく、RGBカメラを使用します。Gear VR上部に光るセンサーを装着、プレイエリアを見渡せる場所にカメラを設置します。カメラはモバイルバッテリーからマイクロUSBで電力供給可能です。

手にはPlayStation Moveコントローラーのような光るコントローラーを持つと、スマートフォンのVRデバイスながら手軽に歩いたり、手を動かしたりできるようになります。

体験したデモはVRで絵を描くというものでした。暗い場所でのデモでしたが、手のトラッキングは正確で思った通りに絵が描けたことに加え、前後左右1歩程度であれば問題なく動けるものでした。(それ以上動いた場合、実移動距離とVR内の移動距離に違和感を感じました)。

同キットはGear VR専用で99ドル(約11,000円)。今春発売予定とのこと、さらに性能を向上した新型も準備していると自信を見せていました。外部センサーを使って位置トラッキングを行う同様のキットにはCES2017などでも展示された「NOLO」があります。移動範囲はNOLOの方が広かった印象ですが、NOLOはKickstarterの予約時の特別価格で99ドル、希望小売価格は149ドル(約17,000円)と1.5倍近い価格差があります。

さらなる触覚再現を目指すミライセンス社

日本の筑波発のミライセンス社は、触覚フィードバックを再現するハプティクス技術の展示を行っていました。同社はGDC2015で基礎技術の展示を行った後、GDC2016で手に持つコントローラー「Orb」を展示しており、3年目の展示となります。

ミライセンス社は振動による衝撃だけでなく、質感や圧などを再現するハプティクス技術を保有しています。今回展示されていたハンドコントローラーのプロトタイプでは、2つのアクチュエーターを内蔵し、ザラザラした質感やバネを手で持って引っ張った時の感覚をきめ細やかに再現しています。バネを引っ張ったデモでは、引っ張れば引っ張るほど抵抗が増して「重くなる」感覚が再現されており、現在Oculus TouchやHTC Viveのコントローラーに搭載されているハプティクス機能と比べると圧倒的に再現度が高いものになっていました。

今回展示していたプロトタイプは製品版につながるものではなく、VRHMDメーカーなどへ技術を見せるための試作品とのこと。同社のCEO、香田夏雄氏は「メーカーの反応もいい」とのことで、次世代モデルへの採用の可能性もありうることを仄めかしました。米国にあるオフィスを、VRHMD関連企業のある西海岸へ移転し、メーカーとの連携をさらに強めると意欲を見せていました。


ミライセンスCEO香田夏雄氏

また、一方でオリジナル製品として、同社の振動子を組み込んだグローブやリング状のコントローラーを展示していました。体験することはできませんでしたが、グローブはすでに動いているものがあるとのこと。より精細なフィードバックが得られ、コントローラーを握るよりも直感的な操作が可能になります。

カメラ1つで位置トラッキングできる一体型VRHMD「Pico Neo CV」

中国のVRHMDメーカー、Pico社は一体型VRHMD「Pico Neo CV」 を展示していました。先ほどのクアルコムの一体型とは異なり、ハンドトラッキングはできませんが、前面にはカメラが1つしかついておらず、よりシンプルに位置検出を行っていました。触れてはいけないレーザーが張り巡らされた部屋で身をかがめながらプレイするデモが展示されており、多少の違和感はあるものの、実用に耐えうるレベルでの位置トラッキングができていた印象です。

今回は展示されませんでしたが、操作にはリモコン型のコントローラーを使用します。

ヘッドセットの形状はPlayStation VRと似ている

第2世代のVRHMDに向けて

GDC2017では、LGが新たなVRHMDを発表しました。そちらの体験レポートで記したように、HTC Viveを改良した1.5世代の体験でしたが、今回の記事で紹介したのはいずれもVRの体験の質がさらに1段、2段向上する「次世代のVRHMD」を感じさせるものでした。

筆者は、Oculus、HTC、SIE、またグーグル、マイクロソフトなどパートナーメーカーなど各社から2017年後半から2018年にかけて、第2世代のVRHMDが登場する可能性が高いと考えています。その際に鍵となる要素がGDC2017には展示されていました。

今後の各メーカーの動向からも目が離せない状況が続きます。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード