2月27日からサンフランシスコで開催されているGDCでは、新発表された韓国のLGのPC向けVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)が展示されています。
筆者は幸運にも、GDCで体験することができたため、その体験内容をレポートしていきます。HTC Viveなど2016年に発売されたVRHMDよりも改良が加えられ、細かい点で改善が見られました。そういった意味で2016年に発売されたVRHMDを第1世代とするならば、改良型の施された1.5世代のVRHMDと言うことができそうです。
なお、LGによると、今回の体験に使用しているのはプロトタイプであり、今回の展示などのフィードバックを経て今後改良を加えていくとのことです。
LGのVRHMDはHTC Viveの弟分
レポートの前に、少々複雑な背景を説明します。
LGのVRHMDは、Valve社の提唱するVRシステムに則ったものになり、HTCが発売しているVRHMD HTC Viveの弟分のようなデバイスです。
VRプラットフォームSteamVRを展開するValve社は、HTCと共同でHTC VIveを開発、2016年4月より全世界に販売しています。Valveは「OpenVR」と呼ばれるプラットフォームを推進しており、HTC Viveの特徴であるルームスケール(部屋サイズの空間を動ける)などのシステムはこのOpenVRに則ったものになっています。
LGはこのOpenVRを採用したVRHMDの第2弾ということになります。そのため、HTC Viveと同程度の性能を備え、部屋サイズの空間を動けるルームスケールの仕組みを採用しています。
外見はHTC ViveよりはPSVRに類似、気になる2つの特徴
LGのVRシステムの構成はHTC Viveと同じく、VRHMD、手にそれぞれ持つ2本のコントローラー、2個のベースステーションと呼ばれるトラッキング用の装置です。
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これが一式となり、HTC Viveとほぼ同じ構成。ヘッドホンは内蔵せず外付けです。
ヘッドセットの外見は、おでこを覆う部分があり、PlayStation VRと類似しています。
ヘッドセット自体はHTC Viveと比べるとかなりコンパクト、装着感も軽量でした。眼鏡は側面のスポンジに当たることなくゆったり入るサイズです。
ヘッドセットの下部にはピント調整用のボタンがありました。
前面にはカメラがついていますが、現時点では動作しないとのこと。
耳元にはヘッドホン用のオーディオジャックがあります。
手に持つコントローラーはHTC Viveのものと似ていますが丸みがなく角ばっています。
ベースステーションはHTC Viveのものとほぼ同じ大きさで背面の端子等も同じでした。
LGのVRHMD、2つの特徴
LGのVRHMDの外見面での特徴は2つありました。1つはフリップアップが可能なこと。ヘッドセットを地面に対して水平の90度まで上げることができます。装着がしやすいだけでなく、ちょっと現実に戻りたい時にカチャッと跳ね上げればいいので便利ですね。
HTC Vive向けにこの仕組みをKickstarterで作っているプロジェクトもありました。
(参考:HTC Viveを着けたまま上下開閉できる「rEvolve」がKickstarterで目標金額の6倍を突破)
90度上げた状態で装着。おろしたあとでPSVRのようにヘッドセット部分を前後にずらしてピントを調整します。
装着感は軽いですが、鼻のパッドが当たってしまい気になるという声もあるようです。
2つ目の特徴は、「ヘッドセットとPCをつなぐケーブルが1本」という点。Oculus Riftでは2本、HTC Viveではヘッドセットから2本のケーブルが、さらに途中のボックスで電源コードが加わり最終的には3本のコードが伸びます。ヘッドセットから伸びるのは映像出力用のHDMIケーブルとデータ転送用のUSBケーブルでした。
LGのVRHMDでは、ヘッドセットからPCまでの接続をUSB Type-Cケーブルで1本にまとめています。USB Type-CはMacbookなどで使用され始めている新たな規格ですが、映像出力も電源供給もデータ転送も1本でこなしてしまうためVRヘッドセットも1本で十分になるようです。
気になるスペックは?
さてLGのVRHMDのスペックはどの程度でしょうか。ブースで聴いた限りの情報は以下の通りです。参考までにHTC Viveのスペックを付記しています。
LG VRHMD | HTC Vive | |
ディスプレイ解像度 | OLED 1440×1280 2枚 | OLED 1080×1280 2枚 |
リフレッシュレート | 90Hz | 90Hz |
視野角 | 110度 | 110度 |
端子 | USB Type-C | HDMI、USB |
眼鏡 | 入る | 入る |
基本的なスペックはほぼ同じですが、両目合わせて3K相当と解像度が高い有機ELパネル(OLED)を使用しています。LG製のOLED、画素密度は540ppiとのこと。またレンズはHTC Viveに使用されているフレネルレンズではなく、通常のレンズでした。
重量など数値が明らかになっていない部分もありますが、スペック上は改良型HTC Viveという印象です。
体験レポート
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今回体験できたのは、HTC Vive向けにSteamで配信されている『La peri』、壁打ちテニスのようなスポーツゲーム、『The Lab』の3種類のコンテンツでした。
描画性能やルームスケールのトラッキング等はHTC Viveと何ら変わりなく、画素のつぶつぶが見える現象(スクリーンドアエフェクト)も感じることはありませんでした。今回使用したPCはVR対応となるグラフィックボードの中では最小構成のGTX1060を使用していましたが、問題なく描画されていました。OpenVRの規格に則っていれば最低限のプレイ感が保証されることなのでしょう。
前述のようにディスプレイの解像度は上がっていますが、コンテンツ側の出力が1080×1280に最適化されていると考えられるため、1440×1280という高解像度の本領を発揮したグラフィックではなかったように感じられました。
体験していて気になった点は、レンズの影響か、真っ暗なシーンで霧がかかったような薄い白い膜がかかっているような見え方になった点。そして、ヘッドセットのサイズをかなり小さくしたためか、視界の下に非表示領域が見えてしまっていた点でした。
USB Type-C1本で取り回しやすくなったとはいえ、逆に細い端子とケーブルのUSB-Type Cは華奢で、踏んでしまった際などに心もとないとところもあります。ワイヤレスに関しても「対応可能」としていましたが、公式には組み込まない模様です。
見え方に関しては今後の製品版へのブラッシュアップで改善されることに期待したいところです。発売日と価格は今後、発表になるとのことで明かされませんでした。