【HoloLens】映画監督気分で3Dモデルを実写に合成できる映像作成ツール『Actiongram Beta』

SFやファンタジー映画からTVCMまで、CGと実写が合成された映像を目にしない日はありません。こうした映像制作には撮影スタジオなどの設備や高度な編集スキルが必要でしたが、AR(Augmented Reality、拡張現実)やMR(複合現実、Mixed Reality)が普及することで、近い将来、誰もが簡単に作れるようになるのではないかと期待されています。

https://www.youtube.com/watch?v=k-QwKms0xXU

『Actiongram Beta』制作動画例

「新しいストーリーテリングのメディア」をうたう『Actiongram Beta』は、そんな期待を感じさせてくれるHoloLens用の映像作成ツール。あらかじめ用意された3Dモデルのキャラクターや特殊効果を、直感的な操作で実写映像に重ね合わせて気軽に撮影することができます。気に入ったシーンが撮れたら、動画ファイルとして保存。HoloLens内で再生して、撮影結果をその場で確認することもできます。

130個の3Dモデルに多数のアニメーション

『Actiongram Beta』で用意された3Dモデルは130個。さまざまなシーンを想定した数多くの3Dモデルを使って、すぐに撮影を開始できます。ギャラリーで気になった3Dモデルを選択したら、3Dモデルにさせたいアニメーション(動作)を選んで作成すると、目の前に『ジュラシックパーク』の恐竜T.レックスを登場させたり、『アナと雪の女王』の主人公のように周囲を凍り付かせることもできます。ギャラリーにはコメディアンやレポーターといった人間はもちろん、イルカや馬などの動物から、ユニコーンやゾンビなどの空想上の存在の3Dモデルまで収められていて、想像力を刺激されます。

『ウォークラフト』のオーグリムさんをからかって軽くあしらわれる

スマートフォン用のARカメラアプリではCGを表示する場所にバーコードなどの画像が必要でしたが、『Actiongram Beta』では3Dモデルを任意の位置に自由に配置することが可能。ジェスチャーや音声コマンドといったHoloLensの直感的な操作で、3Dモデルを実写の背景映像と重ねたまま、拡大したり縮小したりするのも思いのままです。リハーサル(3Dモデルの配置やアニメーションの確認)を終えて、本番撮影が始まると、ギャラリーや視線の位置を示すポインタは非表示となり、3Dモデルと実写の合成映像だけを録画できます。

3Dモデルに視線を向けると表示されるメニュー

難しくも面白い3Dモデルとの共演

実際に多数の3Dモデルのどれを選んで、どんな動きを組み合わせれば、気の利いた映像が作れるのかは、監督役のユーザーの発想次第でしょう。『Actiongram Beta』の公式ページに公開されている制作例も参考になります。筆者は、最初はあまり難しく考えずに、友人に協力してもらい映画やTVの憧れのシーンの真似をしてみることから始めてみましたが、思いのほか楽しむことができました。

ゾンビのネッド君とコメディ鑑賞中

実写側の出演者と3Dモデルの共演シーンを撮るには、両者のタイミングや動きを合わせる必要があります。3Dモデルが見えているのはHoloLensを被っている監督役のユーザーだけなので、出演者は3Dモデルの動きをあらかじめ頭に入れて演技しなければなりません。これは実際にやってみると思ったよりも難しかったです。何度撮りなおしても、思ったような映像が撮影できないこともあるので、1~2度撮影しただけで、3Dモデルと息のあった演技が撮れたときには、それだけでかなり盛り上がれました。

炎を操る能力を特訓中

出演者にはあえて3Dモデルを事前に見せずに、監督役の出すディレクションとHoloLensから聞こえてくる音を頼りに演技してもらい、撮影後に答え合わせ的に映像を見るというワークショップをしてみても面白そうです。

限られた視野角での撮影にも慣れが必要

HoloLensといえば視野角の狭さが課題としてあげられますが、『Actiongram Beta』を使った撮影ではそのことをたびたび意識させられます。迫力のある恐竜を撮ろうと目の前で3Dモデルを拡大するだけで簡単に見切れてしまうためです。3Dモデルが動き出せばなおさらのこと。画面全体をカバーするような特殊効果のアニメーションにもすぐにはみ出してしまうものが少なくありません。

目の前を横切ると見切れてしまうイルカの3Dモデル

HoloLensの現状の視野角のなかでストレスなく映像を作ろうとするのであれば、3Dモデルのサイズはできるだけ小さくして、机の上など目線を合わせやすい位置に配置するのが良さそうです。これはVRアニメとして高い評価を得ている『Allumette』のような、神の視点から舞台を眺める画作りを参考にしたものです。プレイ動画では、3Dモデルとぬいぐるみのペンギンをイスの上で共演させてみましたが、『Actiongram Beta』の映像制作でもこの手法は効果的だと筆者は感じました。

イスの上を舞台に恋に落ちるペンギンを撮影

工夫すれば屋外での迫力ある映像も撮影可能

恐竜やドラゴンなど大型の3Dモデルを見ると、狭い部屋ではなく、屋外で迫力ある映像を撮影してみたくなると思います。PCと繋ぐ必要のない、ケーブルレスで独立型のデバイスであるHoloLensは、簡単に屋外に持ち出して使用することができます。ただし、晴天時の光量の多い日向では、シースルーの画面が白飛びして見えなくなるため、それを避ける必要があります。

NTTドコモ代々木ビルをよじ登るドラゴン (日陰側だったので比較的よく見えていた)

筆者が屋外で撮影を行った際も、直射日光が当たる公園の芝生の上では、メニューやホログラフは非常に淡く見えたり見えなかったりする状態で、上手く操作ができませんでした。そのため、建物や木の陰になっている場所を見つけて、操作を行うようにしました。

高層ビルに張られたワイヤーを滑車で降りてくる人の3Dモデル (撮影時にはほとんど見えていなかった)

晴天の青空を背景にHoloLensを被っているときにはほとんど見えていなかった3Dモデルでも、『Actiongram Beta』で録画した動画ではしっかりと表示されます。なんとか操作ができるようであれば、日中の日向でも撮影に挑戦してみるのもよいでしょう。

ストーリーテリングの新しいメディアへの期待

自分のストーリーを語るためには、ギャラリーに収められた3Dモデルの質にも目を向ける必要があります。『Actiongram Beta』のギャラリーには130個の3Dモデルが用意されていますが、ほとんどすべてがアメリカ向けのデザインです。公式ページによると、利用できる3Dモデルは、今後も増えていくということなので、日本発のキャラクターの追加も期待したいところです。将来、他のアプリでユーザーが作成した3Dモデルやアクションを追加できるようになれば、さらに可能性は広がります。

130個の3Dモデルが収められたギャラリー

HoloLensの空間マッピング機能も、まだその一部分しか活用されていないようで残念です。現状では、撮影している部屋の壁やテーブルと、3Dモデルはインタラクションしないようになっています。そのため、上手く配置しないと3Dモデルが机に食い込んだりしてしまいます。せっかく優れた深度センサーを備えたHoloLensを使っているのですから、部屋の床や壁、机の天板などを認識して、それに反応するように動作してくれれば、3Dモデルのプレゼンス(存在感)は、もっと高まるのではないでしょうか。

「新しいストーリーテリングのメディア」をうたう『Actiongram Beta』ですが、アウトプットはあくまで2D動画です。Oculus Story Studioが『Allumette』などのVR作品で実践している、2Dとは異なるストーリーテリングの試みと比べると、HoloLensを使ったストーリーテリングの試みは、始まったばかりです。将来的にはHoloLensの3Dモデル共有機能を使い、2D動画への変換を前提としない、複合現実内でのストーリーテリングにまで夢が広がります。

筆者はデジタル環境でのストーリーテリングに強い関心があり、あれこれ提案してしまいましたが、ベータ版であることを考えれば、開発者側でもさまざまな機能追加や改善が予定されているはず。新たなストーリーテリングのツールとして『Actiongram Beta』がどのような進化を遂げていくのか、今後も注目していきたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=uHjH60jhHNA

『Actiongram Beta』プレイ動画

この記事を書いた人

  • IT企業のアカウント・マネージャー。大学の非常勤講師としてメディア文化論やネットワーク社会論を担当。学生時代にインターネットやVRと出会い、新しい技術が暮らしや文化をどう変えていくかを追いかけています。
    Twitter: @kazuqi

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