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【XR Kaigi 2023】実写ベースでユーザーに扱いやすく。XR転換期に備えるTISの戦略とは

XR/メタバースをテーマとした国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi」が今年度も開催されました。今年の「XR Kaigi 2023」は「さらに未来に近づく10年へ」をテーマとし、オンラインと現地、双方で計60以上のセッションが実施されています。

今回はその中から、12月19日に行われたセッション「TISがなぜXRに取り組んでいるのか:360度実写観光メタバースアプリ『BURALIT』開発までの道のりとこれから」をレポート。登壇者は、TIS株式会社 インキュベーションセンターの高橋竜之介氏です。

XR領域の取り組みは2017年頃から

冒頭、高橋氏よりTIS株式会社の概要説明が行われました。同社が属するTIS インテックグループはTIS株式会社を持株会社とし、61社で構成される企業グループです。売上高は連結で約5,000億円、従業員数は2万人を超えています。業種はSI(システムインテグレーション)業ですが、業種別の売上比率ではカード・銀行・保険といった金融部門が上位を占め、プレゼンスを発揮しています。一方で、サービス部門も27%となっており、総合的なDX事業を担う企業となっています。

高橋氏が所属するインキュベーションセンターはテクノロジー&イノベーション本部内にあり、同氏はXR事業を担うXRTEAMの一員として職務に当たっているそうです。なお、同本部でXR企業をはじめとするイノベーション事業に投資するCVC TEAMの実績は、こちらから確認できます。

TIS株式会社(以下、TIS)のXRの取り組みは2017年頃にスタート。最先端技術研究の一環として研究開発を進め、2019年にVR空間上でディスカッションができる「VRプロジェクトルームサービス」を発表しました他方、東京大学や東京都市大学などの大学機関と共同研究も行ってきました。

TISは現在、XR開発向けフレームワーク「Extrealの開発を手がけています。このフレームワークは「多くの人が集まってコミュニケーションできるバーチャル空間」の開発者向けに提供されています。ベースはUnityで構築し、サードパーティ提供のライブラリやSaaSを活用。「Extreal」を使うことで、開発者はボイスチャット機能やマルチプレイ機能を比較的簡単に実装でき、アプリ開発期間を短縮できます。「その他、サンプルアプリケーションや学習教材ガイドも含め、オープンソースとして公開されているのでぜひ一度触ってみてほしい」と高橋氏は語りました。

続いて、XR領域での事業化を目指してきた過去事例が紹介されました。TISは、アバターガイドでツアーを体験できるサービス「XR Campusツアー」を2021年6月に、即売会等の小規模イベント向けのバーチャルサービス「XR Campusイベント」を同年11月にリリースしました。どちらも360度動画や静止画をベースに制作した空間上で、アバター同士の交流が楽しめます。


では、なぜTISが長期的にXRに取り組んでいるのか。高橋氏は「一言で言ってしまえば、XRに将来性を感じているから」だと言います。

「オンラインの情報量が増えることで、コミュニケーションがスムーズになる。学習や研修の効率が向上したり、エンターテインメントの制作方法や楽しみ方が変わったり、あるいは日常的な生活の利便性を劇的に変えてしまう可能性がある領域です。それ以上に社会課題を解決していく可能性もある。取り組む意義のある技術領域であると私たちは考えています」(高橋氏)

高橋氏によれば、XR技術がより普及するためには、インフラ・ネットワーク、ハードデバイス、ソフトウェア、体験設計などの進化が必須であり、かつ社会がXR技術を受容する環境が不可欠とのこと。TISはこれらの発展や受容が進みティッピングポイント(転換点)を迎えると、一気にXR技術が普及すると予想し、この大きな変化に備えてパートナー企業とともに継続した取り組みを行っています。

360度実写ベースが特徴の「BURALIT」を開発

TISでは現在、360度の実写画像で観光できるメタバースアプリ「BURALIT(ブラリト)」を提供しています。ここから、動画を交えながら「BURALIT」の紹介に移ります。

BURALIT誕生のきっかけは、TISと京都市伏見区、福島県喜多方市、大阪府高槻市の3地域の事業者が連携し立ち上げたコンソーシアムでした。

本コンソーシアムはXR技術を利用した地域活性化を目的としており、前出のTISサービス「XR Campus」を活用した取り組みを2022年9月に開始しました。そして取り組みの成果として同年12月、iOS/Android向けのスマホアプリ「BURALIT」をリリース。ヘッドマウントディスプレイを使わずに、スマートフォン経由で実写ベースのバーチャル空間を楽しめるのが特徴です。

さらに2023年12月にはPC向けブラウザ版を発表。スマホアプリ版と共通のプラットフォームのため同じ機能がブラウザでも使用可能です。

多くのXR/メタバースコンテンツは、自由度が高いCGを使ったバーチャル空間構築を特徴としています。一方でBURALITは、360度カメラで撮影した静止画動画を活用して空間を構築しています。

高橋氏は「観光メタバースという視点では、現地そのものを見ていただくのが大事。現時点では我々のスタッフが空間制作にかなり関与していますが、ゆくゆくは観光地の方に空間制作をどんどんやってほしいと思っています。その点で360度実写ベースはやりやすい」とその理由を説明しました。TISは今後、360度カメラを使った空間構築のノウハウを蓄積し公開する方針です。

新機能が追加され、より交流を楽しめるように

PCブラウザ版リリースに合わせ、新機能も追加されています。

一つ目はメンバーを限ったクローズドな交流ができる「グループ機能」。これまではオープンな場でのコミュニケーション機能のみ提供してきましたが、招待コード経由でグループを作れるようになりました。

次に「指差し機能」です。どうしてもバーチャル空間では、「あの人が何について話しているかわからない」という場面が生じます。そこでポインタで対象を指し示しながら会話する機能を追加。高橋氏は「一見、地味ですが非常に便利な機能」と紹介しました。

最後に「空飛ぶ機能」。ユーザーはアバターを通して観光地の上空を飛びながら、バーチャル空間ならではの面白さを感じることができます。

高橋氏は今後のBURALITの方向性に関して、「BURALIT自体を楽しんでいただくのはもちろんうれしいのですが、その上で『現地に行ってみようか』と感じてもらいたい」と述べ、ユーザーへの提供価値として、旅行前の情報収集や新たな観光地との出会いを強調しました。

一方で、観光地サイドには、当地をより魅力的に伝えるツールとして提供していきたいとのこと。「単純な賑わいや来訪促進だけでなく、BURALIT上でコミュニケーションが生まれたり、地のものを通販で買ってみたり、いつか行きたいと思ってもらえたり、そういった『つながりのきっかけ』になるようなポジションを目指していきたい」(高橋氏)と語りました。

XR事業発展に貢献する企業を目指して

今後、社会がより早くXR技術のティッピングポイントを迎える一助となるために、TISは研究開発、情報発信に取り組んでいきたいとしています。

その一環として先日、同社のXR事業の取り組みを発信するサイト「XR Campus」を設立。コンテンツを随時追加予定です。

また、同社の技術情報サイト「Fintan」では、XR技術研究や開発に関わる情報を公開中です。

最後に高橋氏は「TISと一緒に何かしたいといったご感想があれば、ぜひお気軽にお問い合わせいただきたい」と述べ、セッションを締めくくりました。

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