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業界動向 2023.12.21

「XR Kaigi 2023」のオフライン展示で目撃した興味深いハード&ソフトをご紹介。最新のXRを体験できるスポット

XR/メタバース業界横断の大規模カンファレンス「XR Kaigi 2023」。開発者やビジネス関係者が登壇するセッション、アワード授賞式、就職・転職相談コーナー、そしてプロダクトの展示など、オンライン・オフライン共に様々な催しが一堂に会するイベントです。

筆者としては、その中でも、オフライン会場である竹芝ポートホールの2フロアで展開されるエキスポ(ブース展示)に興味津々。XR技術を用いた体験可能な展示が集まっているため、VRもARもMRも、その技術を使って何ができるか、どんなコンテンツと相性がいいかを確かめられる場となっています。

5回目の開催となる「XR Kaigi」。今年も、様々な展示に魅きつけられました。その一部をご紹介します。

動くウォーターバッグロボに向かってえぐりこむように打つべし:Movable Bag+

ボクシングジムのトレーナーが疲れているときでも、怪我しているときでも、トレーナーの指示に従ってトレーニングができる「Movable Bag+」。ルンバのような走行ロボットと、殴ったときの感触がリアルなウォーターバッグを組み合わせることで、様々な姿勢からパンチを打てるVRコンテンツです。

ウォーターバッグロボットの操作はiPad。VR上では、このロボットの位置にアバターがいて、同じくiPadで指示したパンチングポイントが見えます。パンチングポイントの動かし方次第では、かなりのエネルギー消費が見込めそう。

なお、ウォーターバックロボットの位置は、「Meta Quest 3」のコントローラーを片方使って認識しています。インサイドアウトなVRシステムで実現できるVRボクシングトレーニングマシン。「RED° TOKYO TOWER」などのVR体験施設に入ってほしいと強く願ってしまう楽しさがありました。

立体音響で没入感MAX、乗り鉄ココロが満たせる白いロマンスカーの旅:ヤマハSound xR/小田急電鉄

BGMや車内アナウンスと共に聞こえてくる、レールとレールのつなぎ目と車輪がコラボして鳴り出すジョイント音や、運転手のマスコン操作が紡ぐノッチ音。電車に乗って旅をしているという感覚を強く覚えるのが、ヤマハと小田急電鉄のブースです。

コンサートホールのどこ場所からでも美声が聴けるアイドルライブや、オーケストラの練習参加体験など、様々なシーンで活用されているヤマハの仮想立体音響技術「Sound xR」に、回送中のVSE(50000形)の展望席で撮ったワイドパノラマ映像を組み合わせたコンテンツが展示されていました。

「Sound xR」は、一般的な2chステレオ用イヤホン/ヘッドホンでも強烈な没入感がある立体音響を再生できるシステムですが、ここで使用しているイヤホンはNECのヒアラブルデバイス。様々なセンサーが内蔵されており、向いている方向を判断してくれる特殊なデバイスです。

また現在位置を確認するために、首から下げたスマートフォンのカメラを使っていました。VRヘッドセットを用いた展開も可能とのことです。四方の音が撮れる360度全天球カメラで撮った映像を臨場感たっぷりに楽しめるシステムでしたし、鉄道の旅などの旅行系コンテンツとの相性がとても良さそうです。

MR(こっちがわ)とVR(あっちがわ)の境界線:テレビの向こう側へ

“テレビの画面の向こう側にある世界”を作り出すべく開発したという「テレビの向こう側へ」。ネタバレになってしまうので詳しく紹介することができないのですが、MRとVR、それぞれの大きく異なる体験を高いレベルで連結した作品です。

システムそのものは「いまある技術で作った」そうですが、そのアイディアは秀逸。また「子供の頃に感じた違和感をコンテンツとして昇華している」そうで、こういった点もユニークです。ぜひXR Kaigi 2023の現地で体験を!

PCもサイネージも手で操作できる外付けハンドトラッキングデバイス:Ultraleap

小型化、低消費電力、そして認識範囲の拡大。11年ぶりの大進化を果たした「Leap Motion Controller 2」も展示されていました。これは両手の動きを認識・反映できるセンサーで、カメラ/センサーが認識できる範囲で動かしている手をリアルに認識し、アバターに反映します。

小型ゆえにセットする場所を選ばないのがポイント。ブースではアクションカムのネックマウントを用いて首から下げていましたが、テーブルに置いてもよいですし、VRヘッドセットの前面に貼ってもよし。手の動きを細部のニュアンスまで取り入れたいのであれば“アリ”です。

シーズン外に訪れた観光客に喜んでもらうためのVR:VRホタルイカ-DIVE-

先ほどご紹介した「Leap Motion Controller 2」や、足踏みで移動できる「KAT locoS」の活用事例ともなりますが、「VRホタルイカ-DIVE-」も興味深い展示でした。富山県滑川市にある「ほたるいかミュージアム」常設のVRコンテンツで、ホタルイカの生態を含めた海の中の探索を楽しめるものです。

春の漁期となると活きているホタルイカを触って観察できるほたるいかミュージアムですが、シーズン外ではその体験はできません。そこで用意されたのがVRコンテンツ。等身大、そしてホタルイカ大となって彼らの発光の様子や、捕食者であるタイの姿が見られます。「ああ、ホタルイカ美味しいもんね」という気持ちも湧き上がってきます。

システム全体で数千万。本気すぎるVR180カメラ:アストロデザイン

「Meta Quest 2」や3、そして「Pico 4」といったリーズナブルな一体型VRヘッドセットの普及により、改めて注目されてきたVR180コンテンツ。より高画質な映像を撮ろう、生配信しようといったチャレンジをしたいときに気になってくる、16Kや8Kのカメラをアストロデザインが展示していました。

このカメラの性能は片側8K。つまり両目で16Kという圧倒的な立体映像を捉えることができます。8K4Kなら120p、4K2Kなら240pというハイフレームレート映像も実現できます。

なおカメラボディは1台1,000万円だとか。立体で撮るために2台&魚眼レンズも2つ必要。さらにモニターや録画システムも合わせると安くても2,500万円といった価格設定になるそうです。

「このシステムを拡張して360度の立体映像が撮れるでしょうか?」と質問したら、「ケタが1つ2つ増えていく」とのこと。プロ機材の凄まじさを垣間見た気分です。超高解像度のVR180映像はもっともっと増えて欲しいので、導入するプロダクションもこれからどんどん出てくると嬉しいですね。

日本未発売の新型ARグラスがお目見え:TCL RayNeo

半透過型ミラーは使わず、レンズ部分にパネルを組み込んでいる「TCL RayNeo X2」の実機も展示されていました。クアルコムの「Snapdragon XR2」を採用し、スタンドアローンでも動くオールインワンタイプです。

音声の翻訳結果を文字で表示してくれるので、海外旅行が怖くなくなる。これは未来の1つです。視野角は狭いのですが、「TCL RayNeo X2」がもたらしてくれるストレスフリーな世界を想像すると、早く日本で販売してくれないかな、という思いが募ります。

VR空間を美しく彩って動きまくりたい方にお勧めしたい高級DP Alt光ファイバーUSBケーブルケーブル:Shiftall/パナソニック

かなりニッチなアイテムですが、ぜひ皆様にご紹介したく。Shiftallの軽量高解像VRヘッドセット「MeganeX」用のオプションとして用意されている、光ファイバーのDP Alt対応USB Type-Cケーブルです。5.2K/10bit/HDRという美麗な映像をPCからMeganeXに送るためのケーブルなのですが、コイツの柔軟性がすごい。

うまく写真に撮れなかったのでチラシの図となりますが、親指くらいの直径のポールに巻きつけられるほどの柔軟性があるんです。前述したように仕様としてはDP Alt対応USB Type-Cケーブル。つまり他の有線接続なVRデバイスでも使えるはず。説明員の方にお聞きしたところ、よい笑顔をされていました。

VRChatユーザーのオフ会会場?:クリエイター・アンカンファレンス

現在進行系で活躍している様々な分野のクリエイターや、企業の方を囲んで話せるラウンドテーブルがクリエイター・アンカンファレンス。これからXR領域で活動したい方にとっては、普段から悩んでいること、覚えたいことを質問できる場となっています。

筆者が伺ったのは、VRChatで企業PRワールドの製作やプロモーションを手掛けている往来の東智美(ぴちきょ)さんの時間帯でしたが、ビジネス絡みの質問だけではなくVRChat内での楽しみ方など楽しい話題も多く飛び交っていました。

終了間際にVRChat社の方も訪れたこともあり、この界隈ではお約束となっている、アバターでの集合写真。まるでオフ会のようでしたよ。


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