Vivid Visionは、VRを通じて視力障害を回復するソフトウェア『Vivid Vision』を提供する医療系VR企業です。先日同社はVRを用いて視力を回復する実験を行い、眼科学系のWeb雑誌であるBioMed Journal of Phthalmologyに掲載されました。
これまでVRは眼の発育過程への影響が懸念されたり、ディスプレイを至近距離で観ることへの視力悪化への懸念などがありました。本誌は『Vivid Vision』を成人の弱視を回復するための新しい治療方法になり得ると紹介しています。
『Vivid Vision』とは
Vivid VisonはJames Blaha氏によって2013年にスタートし、きっかけは彼自身が患っていた弱視を、自身が開発した治療用VRゲームによって克服したことです。同社が提供する『Vivid Vision』が治療するのは弱視や斜視などの両眼視障害で、これは幼少期に何らかの原因によって片目、もしくは両眼に適切な視覚的刺激を受けることができなかったために、視力の発達に問題が生じる疾患です。
同社は2017年5月に220万ドル(約2億4,000万円)の資金を調達し、同社が提供する『Vivid Vision』は現在95のクリニックが導入しています。
今回行った実験は、『Vivid Vision』がもたらす治療効果が確実なもので、さまざまな人に適用可能であることを証明するために行われました。実験では17人の成人被験者が、2ヶ月間にわたって約40分間のVRセッションを8回受けるというものです。被験者の約半数が立体感の認識に関して障害を抱えていましたが、VRを用いた治療によって90%以上の被験者の立体認識力が向上、視力が回復するという結果に至りました。治療前と比べて文字を読むことが容易になり、両眼視力が向上したとのことです。
ゲーム感覚で行う治療
治療では、弱視になっている目に多くの刺激を与え、利き目に与える刺激を減らすというシステムを用いますが、ヘッドセットには2つのディスプレイがあるため、この仕組みは比較的簡単に構築できます。また、治療はゲームを用いて行い、プレイヤーは弱視のほうの目でゲーム内の重要ポイントに集中するため、プレイヤーの脳が弱視の目から多くの情報を得ようとするため、視力が回復するという仕組みです。
BioMed Journal of Phthalmologyでは、今回の実験で得られた結果は、成人の弱視回復において大きなポテンシャルになり得るとしていますが、同時に今後も継続的な実験を行い、成人だけでなく子供も含めた治療方法になる必要があるとしています。
治療にゲームを用いることによって患者のモチベーションが向上し、神経システムにも大きな影響を与えるとのこと。また、従来の治療に比べて短期間で高い成果を上げることができる点もメリットであり、VRを活用した治療の可能性を拡げる取組と言えます。
(参考)
Road to VR / VR-based Treatment for Vision Disorders Shows Positive Results in Peer-reviewed Study(英語)
https://www.roadtovr.com/vivid-vision-amblyopia-vr-treatment-efficacy-study/
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