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【体験レポ】ついにベールを脱いだ 一体型VRヘッドセットVive Focus

11月14日、HTCは中国市場向けに一体型VRヘッドセット「Vive Focus」を発表しました。Vive Focusは、PCやスマートフォンを使わずにケーブルなしで高品質なVR体験が可能なVRヘッドセットです。

Vive Focusは中国市場向けの製品となり、日本を含む中国以外の国での発売は予定されていません。発表時点から中国国内向けに開発者版の申込を受付開始しています。コンシューマー版の発売時期は未定で価格や性能詳細も不明です。

併せて、HTCは一体型VRヘッドセットおよびスマートフォンを装着するVRゴーグル向けの「モバイルVR」プラットフォームVive Waveを立ち上げます。Vive Focusはその最初の対応モデルとなります。

Vive Waveはモバイル向けプロセッサメーカーのクァルコムとHTCによって中国市場に展開されます。Vive Focusには、VRに最適化されたクァルコムのプロセッサSnapdragon 835が搭載されています。また、Gear VRと同様に手元にはリモコン型のコントローラーが付属します。

公表情報の多くないVive Focusですが、発表会会場ではいち早く実機を体験することができました。なお、HTCによると、今回展示されていたのは開発者版で、性能等に関しては今後も変更がありうる、とのこと。

水色のカラーリングに1対のカメラ、ヘッドフォンは内蔵

まずは外見から紹介します。Vive Focusは、全体的に水色の形状が特徴的です。水色の部分はラバーのような柔らかい素材になっています。

前面には1対のカメラが搭載されており、このカメラでインサイドアウトトラッキングと呼ばれる位置トラッキングを行います。インサイドアウトトラッキングではVR内でプレイヤーが動き回ることができますが、Oculus RiftやHTC Viveと違い外部センサーを必要としません。

正面から見た写真。1対のカメラが特徴的。VIVEのロゴ上部にあるのは冷却用のファン。


顔への装着面。形状はPC向けのHTC Viveと同様に見えます。レンズはフレネルレンズ。顔に接する部分はスポンジからより抗菌寄りの素材になりました。顔にしっかりと密着し外界の光をしっかりと遮断していました。


ヘッドセット上部電源ボタンと充電用のUSB-C。そしてカバーに覆われた接続端子。


接続端子はセットアップをPCに繋いで行うためのものと説明がありました。特殊な形状の端子です。


ヘッドセットの底面。右下にあるのは瞳孔間距離(IPD)調節用のスライダー。

ヘッドセット左下部。音量調節ボタン(左)とオーディオジャック(中央)、そして内蔵スピーカー(右)。Vive FocusはマイクロソフトのHoloLensのようにヘッドセットにスピーカーが統合されています。オーディオジャックを使って自分のイヤホンを使うことも可能です。

装着システムはPlayStation VRやViveオーディオストラップと同じく、後頭部のダイヤルを回して固定する方式です。筆者は眼鏡をかけていますが、ヘッドバンド自体が上下に可動するため、これまで装着したVRヘッドセットの中でも最も装着しやすいという印象を受けました。

https://www.youtube.com/watch?v=3xbVO12I7Eg

バッテリーも込みのVive Focusですが、装着時に「重い」と感じることはありませんでした。重心設計によるのかもしれませんが、PC向けのHTC Viveをオーディオストラップに換装しない状態よりもヘッドセットを気にせず快適に体験できました。

気になる体験は

デモ会場ではさまざまなコンテンツを体験できましたが、筆者は魔法使いの部屋で探し物をするゲームと3DCGの映像の2つを体験しました。

グラフィック

グラフィックのクオリティはPC向けのHTC ViveやOculus Riftとくらべても遜色なく、若干解像度も高いのではないかと思える美麗さでした。遅延は感じられず、1秒間に描画されるフレーム数を示すフレームレートは60fpsから75fps程度でした。視野の広さはHTC Viveと同程度でした。

グラフィックに関しては、Oculusとサムスンが展開するモバイルVRヘッドセットGear VR以上の体験がPCもスマートフォンも使わない一体型のVRヘッドセットで実現している、と感じられました。

気になる2つの要素「インサイドアウトトラッキング」と「コントローラー」

Vive Focusの特徴はインサイドアウトトラッキングによる位置トラッキングです。

インサイドアウトトラッキングは、VRヘッドセットの前面に内蔵されたカメラで現実空間を認識し、位置トラッキングを可能にします。この機能が搭載されているVRヘッドセットでは、プレイヤーはHTC ViveやOculus Riftのように外部センサーを設置することなくVRで動き回ることができます。

インサイドアウトトラッキングは、センサーが不要なため手間がなくなる夢のような技術ですが、その精度はヘッドセットによりバラツキがあります。厳密にはコア・テクノロジーを提供している企業によりその精度が異なります。現在、製品が発売されているないしプロトタイプ・開発者版が公開されているインサイドアウトトラッキング搭載のVRヘッドセットは以下の通りです。

●Microsoft
Windows Mixed Realityヘッドセット(Acerなど各社、2017.10製品版)

●Oculus
Santa Cruz(Oculus、2017.10プロトタイプ)

●Qualcomm
Snapdragon 835VR(Qualcomm、2017リファレンスモデル)
Vive Focus(HTC、2017.11開発者版)
Pico Neo(Pico、2017製品版)

●Google
Daydream Standalone Headset(Lenovo、詳細不明)

筆者は、Googleが技術提供を行っているLenovoの一体型VRヘッドセット以外は全て体験しています。

Vive Focusでは、確かにVRの中を自由に歩き回ることができました。体験時にはヘッドセット自体にプレイエリアが設定されておらず、周囲を気にしなければどこまでも歩いていけそうな感覚になりました。ケーブル接続されているPC向けVRヘッドセットではなかなか感じられない感覚でした。

Vive Focusの精度に関しては、すでに筆者が体験した他のインサイドアウトトラッキング搭載のヘッドセットと比べると違和感の残る体験となりました。歩いてみると、「世界が自分の動きに合わせて動く」感覚が若干残りました。また、床に手を触れてみたところ、現実の床よりも10cmほど高い位置にVRの床が存在しており、こちらも違和感に繋がりました。2017年10月に体験したOculusの開発している一体型VRヘッドセットSanta Cruzと比べると、さらなる精度向上が可能ではないかと感じられました。

また、Vive Focusには操作用にリモコン型のコントローラーが付属し、こちらで操作を行います。Gear VRのコントローラーと同じ構成となっており、前面にタッチパッドと戻るボタン、ホームボタンが縦に並び、背面にトリガーボタンがあります。トラッキングはジャイロセンサー等を使った「3DoF」(3自由度)です。位置トラッキングがないため、VRで手を自由に動かすことはできず、その回転のみ反映されます。この点もGear VRのコントローラーと同様です。

ゲームを体験していると、体験中に、ついつい手を前にかざしてしまいますが、実際には位置を取得していないため、自分の身体の側で小さく動かしていれば十分です。VRでは常に視界の右下にコントローラー(コンテンツにより手や銃など)が表示されていました。精度もGear VRのコントローラーと同程度で、簡単な操作を行えるといった印象です。

こうした比較的ハイパフォーマンスなVR体験ができるVive Focusですが、HTCの担当者によるとバッテリーの持続時間は2,3時間とのこと。前述のようにファンもあるため「連続使用が可能」と自信を見せていました。

どのようなコンテンツを出していくのか?

体験後、「このインサイドアウトトラッキングとコントローラーのVive Focusに、果たしてどのようなコンテンツが馴染むのだろうか」という疑問が残りました。

特定の圧倒的に巨大な市場が存在しない現時点のVR市場に対して、VR開発者が取り組んでいるのは1つのコンテンツを複数のVRプラットフォームに対して展開するという販売戦略です。その際に気になるのは既存のコンテンツを移植できるかどうかという点です。

位置トラッキング ハンドトラッキング
Rift、Vive、PSVR、Win MR あり 6DoF(※)
Gear VR、Daydream(スマホ) なし 3DoF
Vive Focus あり 3DoF
Pico Neo あり 3DoF
(参考)一体型Daydream あり 3DoF
(参考)Santa Cruz あり 6DoF

※6DoF(6自由度):3DoFに対して前後上下左右の移動を含む現実の動作の完全な再現が可能なことを意味する

上記の表は、各種VRヘッドセットの位置トラッキングと手のトラッキング(ハンドトラッキング)をまとめたものですが、移植するのであれば最適なのは同様の位置・ハンドトラッキングを採用しているデバイスからということになります。

Vive FocusはモバイルのAndroidベースで動作します。コントローラーの性能やプロセッサ等を考えると、PC向けのハイエンドなVRゲームを移植するよりは、高品質なモバイルVRであるGear VRやDaydream(日本未提供)向けのコンテンツを移植するのが最適のように考えられますが、それらのコンテンツは位置トラッキングが想定されていません。

また、モバイルVRで有力なコンテンツである360度動画はもともと位置トラッキングを前提としていません。

HTCのレイモンド・パオ氏は、Vive Focusが対応する「Vive Wave」プラットフォームはGear VRやDaydreamからの移植がしやすいプラットフォームであることを強調しました。

Vive Wave自体は位置トラッキングの有無、ハンドトラッキングの6DoF・3DoFを問わずモバイルVR全般に対応した包括的なプラットフォームです。対応デバイスもVive Focusのみならず、中国市場でシェアを増やしつつあるPicoなどのVive Focusと同等のデバイスが増えていく模様。今後、コンテンツの拡大にも期待したいところです。

HTCがVive Focusと同時に発表したVive Waveについては別の記事で詳しく解説予定です。

※2017年11月16日14:15 バッテリーについての記述を追記しました。

この記事を書いた人

すんくぼ(久保田 瞬)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。

Twitter:@tyranusii

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