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業界動向 2019.10.18

UbisoftのVR脱出ゲーム、設置施設が全世界200カ所を突破 人気の秘訣は?

フランスに本社を置く大手ゲームメーカー・Ubisoft(ユービーアイソフト)。同社は「アサシン クリード」シリーズ等に加え、「Eagle Flight」や「Star Trek:Bridge Crew」、「Space Junkies」など、家庭用VRコンテンツの開発・販売でも知られています。

一方で同社の“家庭外部門(LBE)”では、実際に複数のプレイヤーが専用の場所に集まって遊ぶ「VR脱出ゲーム」にも注力しており、同社が手がける中ではもっとも広い地域でサービス展開を行っているコンテンツとなりました。

“専用の場所で遊ぶ”VRコンテンツ

ドイツにあるユービーアイソフトの傘下会社Blue Byteでは、「Beyond Medusa’s Gate」と「Escape the Lost Pyramid」という2つのVRゲームを「Ubisoft Escape Games」のブランドでリリースしています(なお、両作品はともに同社の人気タイトル「アサシン クリード」と同じ世界観です)。

Ubisoft Escape GamesのエグゼクティブプロデューサーであるCyril Voiron氏はRoad to VRの取材に対し、「弊社ではLBEとして提供する“家の外で遊ぶVRコンテンツ”を世界240か所で運用しており、市場をリードするポジションにいると思っています」と述べています。


(Ubisoftが施設型VRを展開する店舗/地域の一覧。ヨーロッパと北米大陸に多く設置されており、南米やアフリカ、中国、オーストラリアなどにも展開している)

そのVoiron氏が、サンフランシスコで開催されたXRDC 2019での講演で、LBEのVRコンテンツに対する開発スタンスについて話しました。

一般層向けの設計

Ubisoft Escape GamesのVRコンテンツは、VR空間で遊ぶ「脱出ゲーム」です。

それらはVRコンテンツに慣れ親しんでいるユーザー向けではなく、まだVRコンテンツになじみのない一般層向けのコンテンツになっています。いわゆる「リアル脱出ゲーム」に似た内容にすることで、より幅広い年齢層、身体能力の異なるユーザーが楽しめるように作られています。

VR脱出ゲームは2人または4人のプレイヤーで遊べるように作られており、各プレイヤーが謎を解くなどして全員が協力しないと解けないようになっているとのこと。これは「“見えるものではなく、感じるもの”を設計する」というBlue Byteのデザイン思想によるもので、謎解きを通じてプレイヤー同士が協力しあい、その体験を共有できることを目指しています。

家の中ではできないことをVR体験で

Voiron氏はまた、VR脱出ゲームを製作するうえでもう1つの重視したのは、ロッククライミングをしたり広大なスケールの場所を見せたりなど、「自宅ではできないことのVR体験をプレイヤーに提供する」ことだと言います。これは仲間同士でのコミュニケーションや弓の射撃、登山、ゲームコントローラーのボタンやスティックを使わずに物をつかむ、といったことを指します。


(画像:「Beyond Medusa’s Gate」に登場する巨大な像。プレイヤーに広大なスケール感を与える)

Ubisoft Escape GamesのVR脱出ゲームは、すべて標準的なサイズの部屋移動を考慮して作られています(ただし小さめの場所でも遊べるよう、あとからオプションでテレポートシステムを追加したそうです)。VR空間を移動するため、VR脱出ゲームでは現実空間よりも長い距離を移動することができます。

フィードバックを繰り返す

VR脱出ゲームは2人または4人用ですが、ゲーム開始時は各プレイヤーは別々の場所からスタートし、しだいに合流するように作られているそうです。これは空間の感覚とお互いが離れていることをプレイヤーに把握してもらうためでしたが、結果としてプレイヤーはグループで一緒に行動することを好むことがわかりました。

最新作のVR脱出ゲームではまだプレイヤー同士を別々に行動させるシーンが一部ありますが、それでもプレイヤー同士は離れた場所でもおたがいの姿を見ることができ、常に話ができるようになっています。プレイヤー同士は孤独に陥ったり道に迷ったりしないうえ、謎解きで詰まったときにお互いを助け合うことができます。

VR内のアバターを“自分自身”であると感じさせる

Voiron氏は、VRに慣れていないユーザーがVRヘッドセットを使ってみることで「実際にVRで何ができるのか」をユーザーが理解できるようになるとコメント。そして「VR脱出ゲームは“ゲーム”としてではなく“体験”としてアピールしていくのが良い」としています。

例えば、VR脱出ゲームのプレイヤーの多くはこれまでVRを体験したことがないため、Ubisoft Escape Gamesは「VR脱出ゲームは皆が想像する従来のVRゲームとは違うもの」であることを知ってもらう必要がありました。そのため、ゲーム開始時にユーザーの全身アバターを表示し、「そのアバターが自分自身である」ことを理解してもらうようにしました。プレイヤーがアバターを自分の分身だと自覚するのには、アバター見た目を変えられるアクセサリーが特に効果的だったとVoiron氏は言います。

コンテンツの改善で平均プレイ時間を延長

またVoiron氏はの講演の中で、プレイヤーの行動モニタリング通じてコンテンツの改善を繰り返してきたと語りました。

中でも特にプレイ平均時間を延ばしたことは大きな改善点で、最初のVR脱出ゲーム「Escape The Lost Pyramid」では平均プレイ時間は44分でしたが、続く「Beyond Medusa’s Gate」では平均プレイ時間は54分まで延びたとのことです。

次のVR脱出ゲームは2020年に

Voiron氏によると、VR脱出ゲームの開発チームは現在「Escape The Lost Pyramid」「Beyond Medusa’s Gate」に続く新タイトルを開発中。開発メンバーは過去2作よりも増え、2020年春に提供開始予定とのことです。

(参考)Road to VR
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