Snapはエンタープライズ向けAR部門「ARES」を縮小する方針です。CEOのEvan Spiegel氏が、従業員に送付したメッセージの中で明らかにしました。これに伴い、170名がレイオフの対象となります。
2023年3月、Snapはエンタープライズ向けAR部門「ARES(Augmented Reality Enterprise Services)」を設立。主に小売企業向けに、服や靴のAR試着や、商品の3Dモデルを自由な角度から閲覧できるサービス「Shopping Suite」を提供していました。
発表時点で300社以上が導入していたほか、スポーツサングラスを取り扱うGoodrではWebサイト訪問者あたりの収益率向上、セレクトショップPrincess Pollyでは返品率の減少といった効果が報告されました。
(Snapのエンタープライズ向けAR部門「ARES」によるサービスの例。3Dでの商品ビューアー、AR試着、適切なサイズを探してくれるFit Finderなどが提供されていた。出所:Snap)
経営資源を広告事業へ集中、ARへの投資は継続
9月27日、Snapは「AR Enterprise Strategic Review」と題した記事を公開しました。Snap CEOのEvan Spiegel氏は記事の中で、「私たちは、エンタープライズ向けAR部門を閉鎖するという困難な決断をしました」とコメント。過去数カ月にわたる検討の末、小売業者にエンタープライズ向けARサービスを提供するには多額の投資が必要であり、現時点ではそれが困難になった、と述べています。
加えて、Spiegel氏はエンタープライズ向けAR部門閉鎖の理由について、「生成AIの台頭によるバーチャル試着の提供が容易化し、優位性が失われたこと」、そして「中核である広告事業に経営資源を集中させるため」としました。Googleは2023年6月、生成AIを用いたバーチャル試着システムを米国向けに公開しており、こうした米国ビッグテックの動向を受けてのものと思われます。
一方で、Spiegel氏は「当社はCamera Kitのパートナーや、SnapのARプラットフォームでの体験を使用する人々のサポートに投資を継続する」「クライアントが、ユニークで没入的なAR体験を通して、Snapchatの利用者にリーチできるよう支援する」とコメントし、ARへの投資そのものは断念せず、今後も継続することを表明しています。
(参考)Snap