韓国のSM Entertainment Group(以下、SMエンターテインメント)が、6月29日に「SM Congress 2021」をオンラインで開催しました。イベントでは、メタバースやXR領域にも関係の深い内容を含めた独自戦略が発表されました。
メタバース、プロシューマーとの関わり
SMエンターテインメントは、東方神起や少女時代、BoAなどが所属する韓国の総合エンターテインメント会社です。
総括プロデューサーであるLee Soo Man(イ・スマン)氏はイベントの冒頭で、「メタバースのコンテンツがブロックチェーン技術を通じて芸術作品のようにオリジナリティが認められ、その商品の価値がつく時代において、27年蓄積してきたSMのキラーコンテンツはSMの大切な資産であり、その価値はますます大きくなるでしょう」と語り、メタバースの重要性と同社のコンテンツの価値を強調しました。
またLee Soo Man氏は、同社のコンテンツがプロシューマー(生産消費者)によって再生産された「リクリエイテッド・コンテンツ」として無限に拡張される時代が到来するとして、同社の考える「コンテンツの未来・未来のコンテンツ」を紹介しました。
自分のアバターとリンクするグループ・aespa
メタバースに関係する発表のうちの1つは、イベントのはじめに紹介された「aespa(エスパ)」。aespaは「自分のもう一人の自我であるアバターに出会い、新しい世界を経験する」という独特な世界観を持つ新人女性グループです。現実世界のaespaのメンバーは、仮想世界の「もう一人の自分」であるアバター「ae-aespa(アイ-エスパ)」とSYNKを通じてリンクする、とされています。
2020年11月のデビューシングル『Black Mamba』は、リリースから51日で再生回数1億回を突破しました。Lee Soo Man氏はaespaについて「全世界の新人アーティストの中で、最速で1億回再生を達成したチーム」と述べ、ハリウッドからの映画化の話があることに触れています。
『Black Mamba』MV
世界観でありメタバースでもある”SM Culture Universe”
SMエンターテインメントは、「SM Culture Universe(以下、SMCU)」という名前の世界観をより展開していくことが説明されました。
SMCUは同社のアーティストの世界観であり、同社が描くメタバースでもあり、世界中のすべてのファンを招待する巨大な世界だと、SMエンターテインメントCEOのLee Sung Su(イ・ソンス)氏は語ります。これまでにも、コンサートやホログラム・ミュージカル「School OZ」やSuperMなどで、同社の「音楽とアーティストの世界観が調和したユニバース」であるSMCUは展開されてきたとのことです。
先ほど挙げたaespaの『Black Mamba』は、SMCUの最初のストーリーだと紹介されました。今はまだエピソード1しか公開されていませんが、シーズン1の残りのストーリーを見ることができる多様なコンテンツが今年公開されるとのことです。
SMCUの世界観を繋ぐ舞台・”KWANGYA”
SMCUの舞台となる場所は「KWANGYA(クァンヤ)」と呼ばれ、KWANGYAで繰り広げられる音楽とストーリーは同社のコンテンツを通じて届けられます。イベントでは、あるグループのMVに別のグループのメンバーが登場するMVが初公開され、SMCUの各グループの世界観を繋ぐ存在がKWANGYAであるとしています。
KWANGYAについて、「今後様々なプラットフォームとサービス、ゲーム、そして別の世界観に出会うことで、より豊かな私たちだけのメタバースとなるでしょう」とLee Sung Su氏は述べました。
SMCUを展開する新ジャンル”CAWMAN”
また、SMCUを新しい形で視聴者に見せるための新しいジャンル「CAWMAN」が紹介されました。CAWMANは、Cartoon、Animation、Web-toon、Motion graphiic、Avatar、Novelの頭文字から、氏が名付けました。「SMCUを表現できるすべてのジャンルのコンテンツをミックスした混合ジャンル」とのことです。
現実と仮想の境界を超えるフューチャー・コマース・ショップ
「現実と仮想の境界を超えてファンとアーティストを結び、新しい文化の流れを作り出す場所」と、aespaのae-KARINA(アイ-カリナ)氏が紹介するフューチャー・コマース・ショップ。アーティスト写真などの様々な既存のアイテムだけでなく、アーティストと関連した新しく多様な文化経験やSMCUを楽しむことができるとのことです。
AR技術を用いたグッズ
「拡張現実の技術を用いて隠された映像を見ることができるAR MD」として、Tシャツのアーティストや文字がAR技術で動いて見える映像が披露されました。
メタバース・Virtual Exhibition
新しい技術を融合したコンテンツであり「メタバースで出会う新しい世界」として、バーチャル展示会が紹介されました。ae-KARINA氏のARカードも登場するとのことです。
その他のフューチャー・コマース・ショップでの発表
上記で紹介したもの以外にも、様々なサービスがフューチャー・コマース・ショップで発表されました。
・アーティストの声でアラームを設定できるTTSサービス
・アーティストがデザインした洋服や調香したキャンドルなどが購入できるスペシャルMD
・SuperMとMARVELのコラボ
・SHINeeとJINRO IS BACKのコラボ
・NCT DREAMとPinkfongのコラボ
様々な事業展開
またこれまで紹介してきたメタバース関連事業以外にも、SMエンターテインメントから様々な事業展開が発表されました。
・世界の様々な都市を拠点とする男性グループ「NCT」のアメリカでのオーディション
・多くのプロデューサーやコンテンツの専門家らが集まる「SM STUDIOS」
・300本以上のMVを4K画質にアップスケールするリマスタリング・プロジェクト
・同社のコンテンツをリクリエイティッド・コンテンツとして再生産するプロシューマーと、特別な関係を持って支援していく「PINK BLOODプロジェクト」
・K-POPのクラシックとしての新しい編曲などを予定する「SM CLASSICS」
・アーティストと1対1のメッセンジャー形式でプライベートメッセージを交わすことができるサービス・プラットフォーム「DearU bubble」の拡張
・アーティストになりたい人向けの教育事業「SM Institute」
イベントの最後にLee Soo Man氏は、同社のコンテンツとK-POPを愛するファン一人一人が新しい文化を作るプロシューマーになることができるような、コンテンツ・ユニバースを作るための挑戦を続ける決意を伝え、SMCUと新しい文化の展開への期待を語りました。
今後どのようにこれらの戦略が展開されていくのか、注目が集まります。
(参考)SM Congress 2021