株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)の研究開発部門ヴァイスプレジデント、Dominic Mallinson氏は、次世代VRヘッドセットが備えるべき技術的進化について語りました。その内容からは、PlayStation VR(プレイステーションVR・PSVR)の将来像への示唆も得られそうです。
注目の集まる次世代PSVR
メディアVentureBeatの報道によれば、Mallinson氏はSIEが次世代PlayStation(いわゆるPS5)でもVRに関する取組を継続すると表明。9,600万台以上のPS4が市場に出ており、PSVRユーザーをさらに増やしたいとの考えを示しています。
2019年3月、SIEはPSVRの世界販売台数が420万台を突破したことを明らかにしました。その一方で、次世代モデルなどデバイスの将来については依然として公表されていません。
VRの魅力を高める3つの技術進化
今回のMallinson氏も、いわゆる“PSVR 2”に関する明言は避けました。その代わりに同氏が持論を展開したのは、「VRの魅力を一層高める急速な技術的改良」という一般的なテーマです。
Mallinson氏は、将来のVRヘッドセットが備えるべき3点の技術的進化を挙げました。HDR(ハイダイナミックレンジ)、広視野角、高解像度です。
HDRは、通常撮影時に比べて、より広い明るさの幅を表現できる技術です。太陽光や炎といった、明暗差の大きいシーンをリアルに再現できます。このテクノロジーが、「備えるべき」物として挙げられるのは意外なことかもしれません。なぜなら、既存の主要ヘッドセットでHDRに対応する物はなく、言及するメーカーすら出て来ていないからです。
Mallinson氏はHDRが「近い将来採用される」ことを期待すると話しています。なおSIEは現時点でもVRディスプレイ技術に注力しており、コンシューマー向けでは唯一のフルRGB(の有機EL採用、リフレッシュレートは最大120Hzを誇ります。
視野角と解像度について、Mallinson氏は具体的な数値等を挙げつつ説明しました。
まず現行のVRヘッドセットの多くが視野角100度程度だとした上で、「視野角における次のステップはおよそ120度」だと期待を示しました。そして解像度は「次世代のVRデバイスでは約2倍」というのがMallinson氏の見通しです。ただしここで言う「2倍」が、総画素数や1インチ当たりのピクセル数などの何を指しているかは、報道内容からは不明です。
VRの技術的「革命」
またMallinson氏は、技術的「進化」だけでなく技術的「革命」についても話を進めました。
まず挙げたのは、ワイヤレスへの挑戦です。同氏はケーブルに繋がれてプレイすることのデメリットは、使いづらさや動きが制限されることだけではないと言います。
「この問題は、セットアップの仕方、システム設定、デバイスの収納方法にまで直結します。問題をしっかり直視しましょう。リビングにごちゃごちゃのケーブルがあるのは嫌なものです。だからVRの普及を進めるためにも、ワイヤレス化は実現すべき課題なのです」
Mallinson氏によると、60GHz帯のワイヤレス技術は確実に改善しており、今後オプションになりうるとのこと。ただし「ケーブルを使うよりもはるかに高コストのため、あくまでもオプションにとどまる」とも付け加えています。
次世代VR最大のポイントは?
最後に挙げたトピックスは、アイトラッキング(視線追跡)機能です。Mallinson氏は同機能が「VR体験を根本的に変える、最大のポテンシャルを持つ」と考えを述べました。
氏によれば、アイトラッキングはユーザーの意図を理解する、生体認証を行う、フォービエイテッド・レンダリング(Foveated Rendering)を実現する、等に有効。しかし何よりもエキサイティングなのは、入力機能での役割だと言います。「これ(視線追跡による入力)こそ、私が次世代VRの一番のポイントと考えるものです。視線によって、ユーザーインタラクションはもっとずっと豊かになるでしょう」とMallinson氏は説明しました。
PSVRの今後のあり方については、こちらの記事でも紹介しています。
(参考)Road to VR
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