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メタバース 2022.07.11

都市の3Dモデルをオープンデータ化する国交省の「Project PLATEAU」、メタバースでも事例様々

(※本記事は書籍『メタバース未来戦略 現実と仮想世界が融け合うビジネスの羅針盤』の内容を一部、許諾のもと編集・転載したものです)

2020年12月に国土交通省が発表した「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」。これは現実の都市空間を再現した「3D都市モデル」のオープンデータ化プロジェクトで、いわゆる「都市と連動するメタバース」「リアルタイムのデジタルツイン」と非常に近接した領域だ。官民を問わず様々なユースケースや実証事例が生み出されている「Project PLATEAU」について、国土交通省の都市局都市政策課課長補佐・内山祐弥氏に事例や展望について訊いた。


内山 裕弥 / Yuya Uchiyama
1989年東京都生まれ。国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐。東京都立大学、東京大学公共政策大学院で法哲学を学び、2013年に国土交通省へ入省。水管理・国土保全局、航空局、大臣秘書官補などを経て現職。

国交省主導で「3D都市モデル」整備進める

——国土交通省が進める「Project PLATEAU」は、改めてどのような取り組みですか。

内山裕弥氏(以下、内山):
PLATEAUは2020年度に始まったので、2022年で3年目に入りました。当初の事業名は「まちづくりのデジタル・トランスフォーメーション推進事業」と言います。

私が所属する国土交通省都市局では、都市で行われるさまざまな活動や都市開発に関する施策を所管していて、PLATEAUもその一つ。プロジェクトの目的は3つあり、「3D都市モデルの整備」「ユースケースの開発」「整備・活用の機運・ムーブメントの醸成」です。

3D都市モデルの整備は、都市の3Dデータの整備、オープンデータ化ですね。国際標準にのっとったオープンフォーマットで3D都市モデルの標準データモデルを開発し、整備したデータを公開しています。ですが、「3Dモデルデータを用意したので、自由に使ってください」だけでは、なかなか利用が広がりません。

そこで国土交通省自ら、さまざまなPoC(Proof of Concept / 概念実証)を実施してユースケースを開発しながら、地方自治体などの政策領域、あるいは民間サービスのプロダクトにもPLATEAUを使ってもらうきっかけづくりをしています。今後は、地方自治体が公共サービスとして自ら3D都市モデルを作ってほしいですし、民間企業や大学なども参加していろんなものが生まれてほしいと考えています。


(PLATEAUはブラウザベースのWebアプリも用意されている。画像: Project PLATEAU)

——PLATEAUの3D都市モデルの特徴は何でしょうか。

内山:
従来あるような都市空間の形状を単に再現した幾何形状(ジオメトリ)モデルではなく、建物や街路、橋梁といったオブジェクトをコードとして定義し、建物などの名称や用途、建設年、行政計画といった属性情報(セマンティクス)を持っていることです。

例えば、建物であれば名称や用途、サイズなど、さまざまな情報がデータの中に含まれています。都市レベルの大規模なデータを構築しつつ、一つひとつのオブジェクトにもリッチなデータが入っているんですね。これがあると、コンピューターから見て「これは建物」「この部分は窓」といったことが理解できるので、それを使ったソリューション開発が可能になります。

PLATEAUでは、これまでに日本全国約60都市の建物や道路などを3Dデータ化し、都市全体レベルのスケールで再現しています。その上に都市のゾーニング規制や災害リスクデータ、動的な人流データなど、さまざまなデータを重ね合わせて都市全体を対象にシミュレーションできます。

——PLATEAUの3Dデータやシステムをメタバースに活用することは可能でしょうか。

内山:
現実の都市空間を3D都市モデルとして再現する「デジタルツイン」が主眼にあるものの、もちろんメタバース的な使い方もされています。例えば、三越伊勢丹ホールディングスと行った実証実験では、PLATEAUを活用して新宿三丁目エリアを中心とする「バーチャル新宿」を構築。人々がアバターで移動しながら、VR空間ならではの広告表示や街並みを楽しんだり、アバターを介した接客型ECのトライアルを行ったりしました。

PLATEAUのデータは、特にグラフィック面ではコンシューマー向けのゲームやアプリにそのまま使えるほどのクオリティーはありません。一方で、建物の大きさを把握したり、現実の建物との位置合わせをしたりするのには適しています。グラフィックを作り込んでいくノウハウがあれば、メタバース空間もわりと低コストで作れると思います。

特に、バーチャル空間の位置合わせに使えることは、都市型のメタバースを構築するうえで重要です。ARサービス開発のMESON博報堂DYホールディングスと共に行った実証実験では、ARデバイスを通じて取得した映像とPLATEAUの3D都市モデルデータをマッチングさせることで、自分がいる座標値を数センチメートル単位の誤差範囲にとどめています。これにより、その場にあるカフェの情報などをARデバイス経由で的確に表示できる。

さらに、この事例ではVR空間も組み合わせていて、遠隔でVR空間にログインしている人とARデバイスをかけて現実世界(渋谷)にいる人が、別々の空間にいながらも同じ場所にいるかのような感覚でミュニケーションを取れます。GNSS(測位衛星システム)による位置情報は50センチメートルから1メートルくらいは誤差が出るので、人と人が会話するスケール感だと厳しいものがありますよね。

(AR、VRユーザーのコミュニケーションイメージ。画像: Project PLATEAU)


(AR、VRユーザーが空間に残すコメントイメージ。画像: Project PLATEAU)

内山:
他にも、メタバース風ゲームの事例として、NTTドコモが実施した「バーチャル銀座」の取り組みがあります。これは、ユーザー自身の3Dアバターで銀座の街全体を駆け回れる追いかけっこゲームで、PLATEAUのデータを活用して制作されました。ゲーム内でアイテムを入手したり、ユーザー同士でコミュニケーションしたりしながら銀座の歴史も学べるという企画で、いわゆるゲーミフィケーションによる地域活性化の事例ですね。

また、観光庁や京浜急行電鉄シナスタジアネイキッド共に開発したユースケースとして、横浜のみなとみらいエリアを舞台としたメタバースを構築し、XRコンテンツを提供するソリューションもあります。オープントップバスと組み合わせたXR観光バスツアーを実施しました。利用者はXRヘッドマウントディスプレーをかぶってバスに乗り込み、移動中に現実世界の場所や建物に連動したMRコンテンツを楽しめるという趣向です。これは「何もない場所にコンテンツ性を持たせて観光資源化する」というソリューションの例ですね。

日本の強みは3D都市モデルのユースケース

——国土交通省が採択した22年度のプロジェクトの中に、メタバースに関連するものはありますか。

内山:
まだ詳細は決定していないのですが、例えば都市開発シミュレーションゲーム「シティーズ:スカイライン」のMOD(※)を作ろうと思っています。そのMODをシティーズ:スカイラインに導入すると、PLATEAUから地形や建物のデータを自動的にゲーム内に引っ張ってこられるというものです。

主な目的としては教育用途を想定しています。「シティーズ:スカイライン」自体は都市シミュレーターとして精緻なものではないので、子供にゲーム自体を楽しんでもらうことで、自分が住んでいる街のことをもっと知ったり考えたりするきっかけになれば。この取り組みはメタバースにつながるのではと思います。

(※MOD:読みは「モッド」。主にユーザーによって作成されたデジタルゲームを変更・改造するプログラムやファイルの総称。一例として、サンドボックスゲーム「Minecraft」ではグラフィックを美麗なものに差し替えるMODや、ゲームの処理を軽くしハードウェアへの負担を軽減するMOD、従来の「Minecraft」にはない新要素を追加するMODなどが存在し、広く人気を博している。Mogura VR 編集部注)

——3D都市モデルの活用については、東京都や静岡県など率先して取り組む地方自治体も見られますね。

内山:
東京都の「デジタルツイン実現プロジェクト」はPLATEAUのデータとシステムを使っています。プロジェクトが始まった当初から、東京都が一番のリーディングプロジェクトになるだろうということで一緒に進めており、我々が3D都市データモデルの作成やデータ作成手法の標準化などを行い、東京都はそれを基にして具体的なソリューションを生み出すという役割分担になっています。

静岡県の「バーチャル静岡」は点群データをベースにした3D都市モデルの構築を目指していますね。もともとPLATEAUの3D都市モデルデータも点群データから生成するので、静岡県の点群データも活用させてもらっています。

——都市圏と地方で3D都市モデルデータ化の取り組みスピードに差はあるのでしょうか。

内山:
データの規模や作成した際のインパクトもあって、東京都のような大きいところに注目が集まりがちですが、実は地方も比較的早い段階から参加しています。最初にPLATEAUで作った約60都市のうち半分以上は地方の小さな市町村ですし、大都市向けというわけではありません。

企業主導で独自に作られた3D都市デルは基本的に作った人たちしか使えないので、自治体の庁内では予算を取りづらい面があります。その点、PLATEAUで作ったものは防災や観光、地域活性化など、どのセクションでも使えるというメリットがあります。

PLATEAUのデータは比較的安く作れることも大きい。我々は基本的に新規でデータ取得はしていません。もともと自治体が持っているデータを集めてきて、それを組み合わせています。自治体は地域の平面地図や航空写真を持っていて、航空測量も数年に一度のレベルで定期的に行っています。他にも、自治体で行う調査では建物や土地の用途や構造などを細かく調べています。こうした既存のデータから、3次元形状とセマンティクス(属性情報)を組み合わせたPLATEAUのデータを作っています。

国土交通省がやっているのは、これらのデータの「組み合わせ方」の標準化です。どの自治体も必ず持っているデータなので、その気になればどこでも3D都市モデルを作れるということです。また、データをPLATEAUに統合することで、XRコンテンツやドローンなど、さまざまな分野で活用しやすくなります。既存のデータに新しい付加価値を持たせられることも、自治体がPLATEAUを推進しやすい要因だと思います。詳細度の高いデータの自動生成技術についても、現在開発を進めています。

——平面地図と航空写真、基礎調査データを取り込むだけでPLATEAUのデータに自動変換できるのでしょうか。

内山:
現状、詳細度の低いレベルのデータであれば、ほぼ自動的に作成可能で、100平方キロメートルのデータを1日かからずに作れます。金額も200万~300万円程度と、生成範囲からすると安上がりだと思います。詳細度の高いデータの自動生成技術についても、現在開発を進めています。

——PLATEAUはUnityやUnreal Engineといったゲーム開発エンジンにも対応していて、メタバースにも活用しやすい環境が整っていますよね。

内山:
20年度に最初に出したデータもfbxやobjなど、ゲーム開発エンジンでも使いやすいデータファイル形式にコンバートしたので、多くの方に使ってもらえたという面があると思います。XR分野もそうですが、例えば映像などコンテンツ制作の分野でも使ってもらいたいので、そう考えるとUnityやUnreal Engineでの使い勝手を上げるのはもはや必然みたいなところがありますね。

ユニティーで使えるとなれば、普段行政とあまり関わりのない分野に従事している開発者たちにも届くようになります。言ってみれば、PLATEAUの周りにまだいない人たちを巻き込むための施策ですね。さらに2022年度は、SDK(Software Development Kit / ソフトウェア開発キット)を開発し、UnityとUnreal Engine 4のプラグインとして使えるようにしたいと考えています。

現状ではゲーム開発エンジンで使うためにまずデータをダウンロードしたり、データ正規化のための処理をしたり、少し使い勝手が悪い。3Dモデルデータそのものも、メッシュの分割サイズなどエンジニアにとって使いづらい部分があります。そうした問題をSDKで解決できれば、開発環境が改善できると思うので、ゲームなどを含めて利用が広がることを期待しています。

そうなることで、我々が予期しない3D都市データの使い方がどんどん広がっていくのが理想です。まさにオープンイノベーションですね。そのためにも、とにかく使いやすさを上げていくことが重要だと考えています。

実は3D都市モデルのデータを使ったソリューション開発の事例は世界各国でありますが、行政主導のシミュレーションが中心で、日本のように3D都市モデルをコンテンツやメタバースと結び付けているものはほとんどありません。世界的に見ればPLATEAUの取り組み自体は後発なのですが、海外の方からは「ユースケースがすごい」と驚かれますし、そこが日本の強みになるのではと思います。

(聞き手: 久保田瞬、石村尚也 / 構成・執筆: 桑原健太郎 / 写真: 古立康三)

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2021年10月、旧フェイスブックが社名を「Meta Platforms」に変更し、メタバース関連分野へ年間100億ドル(約1兆1400億円)もの投資を行うことを公言したことで号砲が鳴った「メタバース狂騒曲」。NFTやWeb3、デジタルツインなど、関連するバズワードが入り乱れる中、その「本質」と「真価」を見通すのは容易ではありません。

結局、メタバースとは何なのか。仮想世界ではどのようなビジネスチャンスが生まれるのか。今からどうやって取り組んでいけばいいのでしょうか——。

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