アップルのARKitやグーグルのARCoreといったARプラットフォームの普及が進みつつあり、AR技術は存在感を高めてきています。しかし、ARには今なお解決されていない課題が存在します。それは、「空間に存在するARオブジェクトがいつまでそこにとどまるのか?」という「永続性」の問題です。
米国のスタートアップが、この課題に取り組む技術開発を行っています。
AR世界の「セーブボタン」
米国のJido Mapsは、ベンチャーキャピタルである「Y Combinator」のプログラムを終了したばかりのスタートアップです。“Persistent AR(永続するAR)”をテーマに掲げ、その技術開発を行っています。最近では日本のGREEも参加したシードラウンドで、210万ドル(約2.3億円)の資金調達を行いました。
“永続性”は、現在のAR技術に欠けている大きな要素です。JidoはこれをAR世界の「セーブ(保存)ボタン」だとしています。セーブ機能があれば、過去に存在したARを記録し、再び呼び戻すことも可能だということです。
例えばデジタルなリンゴをテーブルに置いて、その場を離れたとします。Jidoの技術を使うと、再度戻ってきた際にもリンゴはテーブルに置かれたまま、となります。ARデバイスに以前のARオブジェクトの位置を記憶させることが、この技術のポイントです。
動く物は無視し、存在し続ける物に注目
興味深いのは、この技術の実現に当たりJidoが注目しているのがポイントクラウド(点群/3Dモデル作成などに使われる点の集合)でない点です。同社はむしろ、空間に置かれた物体――継続してその場に存在するモノに注目しています。
同社によるとこのアプローチでは、その場の変化を無視することで、強力なプラットフォームを構築するとのこと。具体的に言えば、もし人々が歩き回っている場所をARデバイスでスキャンしたとしても、動く人々は無視し、動かない物体だけを捉えるということです。
Jido MapsのCEO、Mark Stauber氏は次のように話しています。「なぜこうしたアプローチをとるのか、ということについて、我々がとある場所を訪れた場合を考えてみてください。我々はその場に存在する興味深い点を、いくつかピックアップして見ているわけではありません。その場の全体像を捉えて、物同士の関係を見ているのです」
技術応用でゲーム開発も進行中
同社は研究を更に進めようとしており、この技術がシンプルで、複数人でも利用可能であることをPRしています。実際にゲームスタジオのHappy GiantはJidoの技術を用いたゲーム「QuasAR」の開発に着手しました。このゲームは、簡単なセットアップでマルチプレイのレーザータグゲームを体験することができます。
“Persistent AR(永続するAR)”についてはフェイスブックも取り組みを発表しています。またアップルの「ARKit 2.0」でも、ARアプリで一度利用したオブジェクトを、空間に記録する機能が搭載される予定です。
(参考)TechCrunch