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テック 2016.01.13

【体験レポ】Razerが作った300ドルのPC向けVRヘッドセットOSVR

PCの周辺機器等を販売しているRazer社はOSVRと呼ばれるPC向けのVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)を開発・販売しています。

PC向けといえば、先日予約を開始した「Oculus Rift」が注目を集めています。また、ValveとHTCが共同開発したVRHMD「HTC Vive」もPC向けです。

OSVRまず目を引くのはその価格です。Riftが599ドル(約7.2万円。日本での販売価格は送料込で9.4万円)に対し、OSVRは299.99ドル(約3.6万円)と半額の価格で販売されています。日本ではまだ販売されていませんが、担当者曰く「日本を含むアジアでの販売を検討している」とのこと。その分、体験の質はどう変わるのか注目したいところです。

なお、ブースで体験できたデモはゲームエンジンUnreal Engine 4(UE4)の公式デモ『Showdown』。Oculus Riftの開発者向けDK2や製品版プロトタイプCrescent Bayでおなじみのデモです。

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筆者の結論としては、「レンズの歪みが気になる以外は、Oculus Rift DK2とほぼ同程度の体験。299.99ドルという価格を考えると相応」というもの。単純比較以上に期待したいポイントもあるため、以下では詳細なレポートをお送りします。

OSVRは「オープンソース」

OSVRは2015年1月の発表以来、改良が加えられてきました。その最大の特徴は名称の由来にもなっている「オープンソース」という点です。VRHMDだけでなく、ソフトウェア開発のSDKがオープンソースとして提供されており、様々な周辺機器を対応させることができます。また、VRHMD自体も改造することが可能です。

そのベースとなるVRHMDが、Razerが開発・販売しているOSVR用のハードウェアHacker Dev Kitです。説明しにくいので本記事ではVRHMD自体もOSVRと呼びます。

性能と体験の質

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現在のOSVR(最新型のHacker Dev Kit v 1.3)の性能です。Oculus Rift製品版、Oculus Rift DK2と念のため比較すると以下のようになります。

  OSVR Oculus Rift DK2 Oculus Rift 製品版
ディスプレイ 1920×1080 有機EL 1920×1080 有機EL 1080×1200×2 有機EL
フレームレート 60Hz 75Hz 90Hz
視野角(FOV) 100° 110° 110°
トラッキング

頭、位置

頭、位置

頭、位置

価格

(日本での価格)

299.99ドル

(未発売)

350ドル

(425ドル)

599ドル

(94,600円)

パネルには有機ELを使っており解像度は1920×1080と2K以下です。ピクセルなど映像の粗さを感じることは全くありませんでした。見え方としては、明度が高く色味がやや淡いという印象。特にデモの最初でUE4のロゴが回転しながら現れるのですが、かなり白光りして淡く見えました。ソフト側の設定が理由になっている可能性もありますが、少し気になります。視界の広さに関わる視野角は100度とやや狭めです(参考:Oculus Rift 110度、Gear VR96度)。眼鏡は入らないので、眼鏡をかけている人は、はずさなければなりません。

HMDの顔側を見ると、非常に大きめのレンズを採用していることが分かります。下のつまみで左右それぞれのレンズの位置を調整することが可能です。このレンズが実は曲者。前世代のものそうでしたが、レンズによる視界の「歪み」(ディストーション)を感じました。レンズの口径が大きくなり、歪みも多少は減りましたが、依然として残っています。

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また、描画の滑らかさを現すフレームレートは60Hz(1秒間に60回の描画)。これはOculus Rift DK1並の性能で、頭を振ると映像がぬるぬる動かないのは若干気になります。

トラッキングは頭の動きをとるヘッドトラッキングと外部カメラによるポジション・トラッキング。ポジショントラッキングの方式はOculus Riftと同様赤外線センサーを使用したものです。

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精度に関しては、体験ブースが暗室ではなかったこともあり、イベント会場の光の影響を受けて、体験中に何度かトラッキングが飛ぶことがありました。

image201601121750541暗所で撮影したところ、偶然写り込んだトラッキングポイント

倍の価格がするOculus Rift製品版と比べると、有機ELディスプレイ、レンズ、トラッキング用センサーとも、コストを下げていることがうかがえます。

低スペックPCでも動く手軽さ

性能、VR体験の質としてOculus Rift DK2程度ということは、動作させるPCのスペックもOculus Rift製品版などに比べるとずっと低くなるということになります。

関連記事:Oculus Rift製品版の性能・価格・対応PC・付属品まとめ(2016年1月版)

Razerの担当者によると、GeForce GTX 600番台から動作するとのこと。Oculus Rift製品版は最新のGTX 970以上というところと比べると、格段にスペックダウンが可能。ノートPCでの運用もしやすくなります。

その根底にあるのは「できるだけ多くの人に体験してもらいたい」という考えがあり、動作要件は低くしたかった、とのこと。OSVRは、このようにVR体験の質をある程度妥協しながら、価格面また動作面での手軽さを追求しているVRHMDと言えます。

Steam VRへの対応

さて続いて、このOSVRではどんな体験できるのか、どこでソフトをダウンロードしてくればいいのかという疑問があると思います。

実はオープンソースであるOSVRには、Valve社のSteamVRが参加しています。ValveというとHTC社とのHTC Viveを開発していますが、実はこのOSVRもSteam VRに対応しています。

Steam VRはValve社が作ったVRエコシステム全体のことを指します。1億人以上がアカウント有するPCゲームの世界最大のプラットフォームであるSteam。そのプラットフォーム上でVRゲームが展開されます。ユーザーは通常のPCゲームをSteamで遊ぶように、VRゲームをダウンロードし、対応しているVRHMDで遊ぶことができます。そのVRHMDがHTC Viveであり、OSVRです。視線のトラッキングを可能にするFOVEもSteam VRへの対応を発表しています。HTC Viveでは部屋サイズの移動、FOVEはアイトラッキングなど各高性能なVRHMDごとの特徴はありつつも、最も基本的なヘッドトラッキングや立体視といった機能を抑えているのはOSVRということになります。

HTC Viveのリリースに合わせて、恐らく様々なソフトがリリースされるであろうSteamVRですが、そのゲームをHTC Vive(価格不明)よりも安価にそして手軽に体験できるOSVRでも楽しめるというは魅力的です。

また、様々なVR用のコントローラーなど周辺機器がOSVRへの参加を表明しており、各種周辺機器との相性も良さそうです。

さらなる注目点

さて、このように見てみると、OSVRはハードウェアの性能はまあまあの合格点ギリギリ、低スペックPCでも動くという手軽さは極めて特徴的。そしてソフトウェア(配信プラットフォーム)や周辺機器対応はOculus Rift等とくらべても遜色ないものになりそうです。

筆者は残念ながら開発者ではないため、OSVR向けのコンテンツの制作が他のVRHMD向けコンテンツ制作と比べてどう違うのか技術的な比較は語れませんが、低スペックPCでも動くことなどからイベントの展示にも使用しやすいかもしれません。(なお、フレームレートが低いため、めまぐるしく高速で移動するコンテンツには向かない)

最もマイナスとなったのはハードウェアによる体験の質という、まさに値段相応の問題点です。しかし、注目したいのは「OSVRはハードウェアもオープンソースである」ということ。OSVRの現在の筐体を改造し、オリジナルのVRHMDを作りこむこともできます。

CESでは、筆者は体験できず体験時の写真を見たに過ぎませんでしたが、ある大手企業ブースのシークレットコーナーにOSVRをベースにより体験の質を向上させたVRHMDのプロトタイプが展示されていたとのこと。

現在、スマートフォン向けの二眼のVRデバイスは、Googleが公開しているCardboardの設計図をベースにして、プラスチック製のより体験の質の高いものが登場しています。同じように、OSVRをベースにした派生VRHMDが登場する可能性も高く、注目したいところです。


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