2018年9月末、フェイスブック傘下のOculusは新一体型VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」を発表し、大きな話題を集めました。安価かつ手軽に、身体や手を動かすことのできる高品質なVRを体験できます。
本記事ではこの「Oculus Quest」に関し、2018年9月末時点で判明している情報をまとめています。
目次
1.Oculus Questとは
2.Oculus Questの発売時期や価格は?
3.QuestにはどんなVRコンテンツがあるのか
4.Oculus Go、Rift、Questのちがい
5.他の一体型VRヘッドセットと比較
6.Oculus Questの今後
Oculus Questとは
「Oculus Quest(オキュラス・クエスト)」は、フェイスブック傘下のOculusが発表した、新しい「一体型VRヘッドセット」です。Oculus QuestではPCやケーブル、外部センサーの設置なしに、このヘッドセットとコントローラーだけで、高品質なVR体験が可能となります。
Oculus Questはヘッドセット前面の四隅に内蔵されたカメラを使うことで、「VR内での上下左右前後への移動」が可能となるほか、付属のハンドコントローラーのハンドトラッキングも同様に行うことで、VR内で手を自由に動かすことができます。
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(画像左:3DoF……頭の回転だけを追随する。身体を動かしての移動はできない。 画像右:6DoF……3DoFに加えて前後左右上下の動きに対応する。6DoFの方が自由な動きが可能)
Oculus Questの発売時期や価格は?
Oculus Questの発売時期は2019年春を予定しており、価格は容量64GBのモデルが399ドル(約45,000円)です。日本国内向けの発売については2018年9月時点では不明ですが、日本語の公式Webサイトが準備されているとこともあり、見通しは明るいものと思われます。
また、399ドルという価格については、アメリカ国内へ発送する時の価格となっているため、日本で購入する場合は関税や輸送費などが上乗せされることが予想されます。
(参考:一体型VRヘッドセット「Oculus Go」の日米価格比較)
日本 |
米国 |
|
Oculus Go 32GB |
23,800円 |
199ドル |
Oculus Go 64GB |
29,800円 |
249ドル |
Oculus QuestにはどんなVRコンテンツがあるのか
Oculus Questが発表された発表会では、Oculus Questのローンチタイトルは50以上とのこと。そのほとんどはVRゲームを予定しています。
Quest向けのストアでコンテンツがどの程度充実するのか現時点では未知数ですが、
OculusのCTO、ジョン・カーマック氏は講演の中で「Oculus Questの使用用途は80%がゲームで、20%がメディア(=動画視聴など)を想定している」と述べています。また、複数のVRコンテンツ企業が、Quest向けのVRコンテンツに取り組んでいることも発表されました。
コンテンツとしてはすでにハイエンドVRヘッドセット「Oculus Rift」向けにリリースされているVRゲーム「Robo Recall」や「Climb」、「Moss」といったグラフィックの美麗なゲームも移植を予定しているとのこと。他にも「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーをテーマとした新作VR体験「Vader Immortal」3部作など、大作も予定されています。すでにRift向けには数百のコンテンツが配信されている中で、どれだけQuestのコンテンツ数が充実するかは、開発者が今後どの程度移植やQuest向けの開発を行うかにかかっていると言えるでしょう。
Oculus Go、Quest、Riftのちがい
Oculusは一体型VRヘッドセット「Oculus Go」、PCと接続して使用するハイエンドVRヘッドセット「Oculus Rift」を販売しています。それぞれの主なスペックを表にすると、以下のようになります。これらの表から比較してみましょう。
Oculus Go |
Oculus Quest |
Oculus Rift |
|
国内価格(税込) |
32GB:23,800円(米国向け199ドル) |
不明 |
50,000円(米国向け399ドル) |
ディスプレイ |
2560×1440 1枚 |
1440×1600 2枚 |
1080×1200 2枚 |
視野角 |
110度 |
不明 |
110度 |
リフレッシュレート |
60Hz,72Hz |
72Hz |
90Hz |
トラッキング(ヘッドセット) |
3DoF(回転のみ) |
6DoF(移動も可) |
6DoF(移動も可) |
トラッキング(コントローラー) |
3DoF(回転のみ) |
6DoF |
6DoF |
PCが必要かどうか |
不要 |
不要 |
必要 |
備考 |
外部センサー不要 |
外部センサー不要 |
外部センサーが必要 |
Oculus Goのハードウェアとしての特徴をまとめると、
・安価で購入しやすい
・ヘッドセットやコントローラーは自由な移動に対応していないため、全身を使ったVR体験はできない
・外部センサーが不要
といったところでしょうか。これに対し、Oculus Riftは、
・ゲーミングPCなどのハイスペックなPCが必要なので費用がかかる
・リフレッシュレートは3種の中で随一、利用することで部屋サイズでのトラッキングが可能。全身を動かすVR体験も可能
・外部センサーが必要
となっています。それぞれ「簡単で手軽だができることが限られるGo」と「コストや手間はかかるが、高品質で自由な体験ができるRift」という立ち位置です。
Oculus Questはちょうどその中間として位置づけられており、
・価格はそこそこ、
・解像度は3種の中で最高、全身を動かすVR体験が可能
・PCなどの外部機器やセンサー不要
となっています。ただしOculus Questはあくまで「一体型VRヘッドセット」。計算処理を行うCPUはヘッドセットに内蔵されています。Oculus Questではモバイル向けCPUを使用しているため、PCを使用したVR体験よりは多少クオリティは落ちるものと思われます。一方で、手軽かつ高品質な6DoFでの全身を動かすVR体験ができる、という点においては随一であると言えるでしょう。
(QuestはGoとRiftの間に位置づけられている)
他の一体型VRヘッドセットと比較
また、Oculus製品以外にも一体型VRヘッドセットは複数販売されています。VRヘッドセット「HTC VIVE」を開発・販売するHTCの「VIVE Focus」や、PCメーカーとして知られるLenovoの「Mirage Solo」と比較してみましょう。
Oculus Quest |
VIVE Focus |
Mirage Solo |
|
国内価格(税込) |
不明 |
不明 |
56,268円 |
ディスプレイ |
1440×1600 2枚 |
1440×1600 2枚 |
2560×1440 1枚 |
視野角 |
不明 |
110度 |
110度 |
リフレッシュレート |
72Hz |
75Hz |
75Hz |
トラッキング(ヘッドセット) |
6DoF(移動も可) |
6DoF(移動も可) |
6DoF(移動も可) |
トラッキング(コントローラー) |
6DoF(移動も可) |
3DoF |
3DoF |
対応プラットフォーム |
Oculus Store(Quest向け) |
VivePort(HTC) |
Daydream(Google) |
VIVE FocusやMirage Soloもコントローラーを6DoF化する計画(VIVE Focus、Mirage Solo)が存在しており、各社が開発を進めていますが、2018年9月時点でOculus Questのみがコントローラーの6DoFに対応しています。また精度面でも、Mogura VRの記者は2017年から2018年にかけて体験した限りではOculus Questが最も高いとしています。
また、価格についてはOculus QuestやVIVE Focusは国内向け価格は未定となっています。
Oculus Questの今後
Oculus Questは2019年春の発売後、コンテンツを拡充してゆくものと思われます。それ以外にも、Oculus Questが発表された講演では「MRモード」と「アリーナスケール」の機能が紹介されました。
Oculus Questで実現するMR環境。現実がVRの中でも見える、VR空間に没入していったりきたりすることも #OC5 #OC5JP #OC5mogu pic.twitter.com/DTsH2BWZ5Y
— Mogura VR (@MoguraVR) 2018年9月26日
「MRモード」は現実空間の様子をVR内でも見えるようにする機能で、ヘッドセットを装着しながら現実の様子を見ることができます。この機能を利用して、例えば現実世界をモノクロの見た目で表示、ゲームの開始とともに周囲を現実をベースにしたVRの世界に切り替えるなどの演出が可能です。
ただし、この機能はOculus公式の担当者いわく、「現在はまだ実験的な段階。QuestのMRモードは発売時には実装されない」とのこと。講演の動画やデモ会場でも、Questの実機で動作はしていましたが、「未来に向けたプロジェクト」と断言しており、数年越しでの取り組みとなるようです。
ルームスケール以上のアリーナ規模の体験が可能に、例は1000平方フィートとも #OC5 #OC5JP #OC5mogu pic.twitter.com/mQCrOywxQl
— Mogura VR (@MoguraVR) 2018年9月26日
また、これまでハイエンドなVR体験で実現してきた「ルームスケール(部屋サイズ)」のトラッキング機能をよりパワーアップさせた、「アリーナスケール」での体験についても言及されています。
Oculus Questは、「Oculus Insight」と名付けられたシステムで現実世界の物体や部屋の構造をスキャンしています。このOculus Insightにより、外部センサー不要で位置のトラッキングが可能となっています。ここで広大な空間を設定することで、Oculusは将来的により広大な「アリーナスケール」の体験ができるとしています。こちらにも期待がかかります。
Oculus Questの詳細な体験レポートはこちらです。