2021年10月にMetaが発表したVRフィットネス「Supernatural」開発元Withinの買収に、ストップがかかりました。米国連邦取引委員会(FTC)が、「買収はVRフィットネスアプリにおける健全な競争を阻害する」として提訴したためです。
「Supernatural」は、一体型VRヘッドセットMeta Quest向けに、2020年4月から配信されているVRフィットネスアプリです。「楽しく続けられるフィットネスアプリ」として、コーチの指導を受けながら家でワークアウトができるというもの。フィットネスジムのように、月額サブスクリプション制を採用しています。
Metaは2021年10月末の社名変更に伴い、日常を過ごすことになるメタバース構築を宣言。日常的なアクティビティのひとつとしてフィットネスも挙げられていました。直後にWithin買収を発表しましたが、2021年末、FTCが調査中のため買収が未完である旨が報じられていました。
Metaが「メタバースの全てを掌握」とFTCが危惧
FTCは買収の中止を求める理由として、買収により「MetaのBeat Saber、WithinのSupernaturalという主要なVRフィットネスアプリの提供元が統合され、健全な競争を阻害する」と主張しています。また、Withinの買収をせずともMetaにはVRフィットネスアプリの開発が可能だとし、FTCは「買収を許せば“メタバース”の全てを掌握するという究極のゴールに一歩近づく」と論じています。
これに対して、Metaは真っ向から反対する声明を公式に発表しました。VRリズムゲーム「Beat Saber」と「Supernatural」が全く異なる内容・ユーザー層のアプリであることや、自らがVRのエコシステム育成に多くの時間と金額を投資してきたことを説明。ダイナミックに成長中で多くのプレイヤーが存在するVR業界にあって、「Metaがフィットネスアプリ1つ買収することが、競争を妨げるのか?」と反論しています。FTCの主張は事実と法いずれに照らしても誤っており、業界のイノベーションや競争を促すうえで全く利益にならない、というのがMetaの主張です。
FTCはこれまでにも、SNS市場にかかる反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでMetaを提訴しています。今回の訴訟はVRフィットネスに限らず、メタバース市場にもFTCが目を光らせるようになった、と考えられるかもしれません。