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VRChat 2024.03.25

VRから生まれた才能が世間に“バレる” TBS主催のVRChat音楽フェス「META=KNOT 2024」【先行体験レポ】

TBSが、3月30日から4週間にわたって毎週土曜日に計4回、VRChat上で音楽ライブイベント「META=KNOT(メタノット)」を開催します。出演者はVTuberやVRアーティストの中でも実力派ぞろい! 4回にわたる大がかりなイベントですが、誰でも無料で参加できます。

テレビ局が開催するということでリアルで活動するアーティストが出演するのかと思いきや、主にVRで活躍するバーチャルシンガー達が出演するライブイベントであることは少し意外かもしれません。著者もその点が気になっていましたが、今回、メディア向けの事前体験会に参加したので、その様子を一足お先にご紹介します!

ライブ会場はVRChat上に再現された「赤坂BLITZ」

「META=KNOT」の会場は、VRChat上に再現された「赤坂BLITZ」。2020年9月に惜しくもライブハウスとしての営業を終え、(建物の外観は残っていますが)この「BLITZ」の看板はもうありません。近くで見たら、懐かしいと思う方もいるのではないでしょうか。

赤坂BLITZといえば、収容人数1000人を超える大型の箱であり、1996年からはじまった歴史あるライブハウスとして知られています。XJAPANやフィッシュマンズといった日本を代表するバンドのライブや、ケミカル・ブラザーズやグリーン・デイなどの来日公演も行われていました。2000年代あたりのバンドファンからすると、インディーズから見ていたバンドが「赤坂BLITZでライブ決定!」と告知すれば、かなりのニュースでした。

ライブのワールドに入ると赤坂駅の階段から始まり、現在の赤坂サカス一帯と似た場所が広がります。

あたりを見回すと、建物や景色がワイヤーフレームで表現され、現実の赤坂とは違うことは一目瞭然。それでいて、しっかり赤坂サカスであることが一目でわかるので、現実ではないのに“訪れたことのある場所”として感じられます。

Week1からWeek3までライブが行われるのは「広場」のステージ。床面に設置されたライトが演奏の音と連動するという仕掛けもあり、これは実際にぜひ体感してみてほしいところです。

ライブ会場に入ってみます。当時の赤坂BLITZの雰囲気をそのままに再現している印象です。ステージライトなどの演出は現実のライブに近く、VRに慣れていない方にも馴染みやすいと思います。

この観客席からの眺め(上記画像)を懐かしく思う人もいるのではないでしょうか? 後方からでも見やすい構造はVRでも健在でした。もちろん、現実をそのままに再現しただけでなく、バーチャルならではの演出も用意されており、楽しみなポイントです

広場とBLITZで異なるステージ演出に注目!

ここからは、事前体験会で観られたパフォーマンスの一部を紹介します! 今回は実際に行われるパフォーマンスのうち、それぞれのWeekごとに1アーティストを抜粋する形で体験できました。

Week1に出演する「潮成実」

R&Bやソウルなどのバックグラウンドを感じさせるリズム感は唯一無二の存在感を放っています。META=KNOTのトップバッターとしてこれ以上ないパフォーマンスを見せていました。

Week2に出演する音楽ユニット「浮遊信号」

あとり依和とesora umaからなる浮遊信号は、正統派の邦ロックサウンドに乗せた男女のツインボーカルがさわやかなユニットです。VRChatでも2人の息の合ったパフォーマンスを見せてくれるのでお楽しみに。

Week3に出演する「長瀬有花」

音楽に特化した事務所RIOT MUSIC所属のシンガーで、脱力感と透明感が織りなすイノセントな魅力を放っています。このステージでもその独特のかわいい空気感をたっぷり味わえます。

このほかPHAZEやsomuniaなど、人気のVRアーティスト、バーチャルシンガーがラインナップされています。彼らは皆、TBSが「世間にバレて欲しい」とブッキングしたアーティスト。楽曲もパフォーマンスも良い意味で尖っており、「今演奏したアーティストは誰だろう?」と、つい気になってしまう人たちが選出されている印象です。特に新しい音楽に出会いたいという方は、毎週土曜日の夜の時間はぜひ毎回予定を空けて参加して欲しいと思います。

ウィーク4はすべてパーティクルライブ! VRならではの演出を体感

ここからは最後の週、赤坂BLITZ内部でライブが行われるWeek4を紹介します。さきほどの広場でのライブとは異なり、全てパーティクルライブ(※特にVRChatユーザーの界隈では、バーチャル空間上に仕掛けをして、光を飛ばしたり物体を出現させたりといった演出を見せるライブを指す)の形式が取られるとのこと。

注目すべきは、Week4に出演する名取さなさんのライブです。会場をところせましと埋め尽くすパーティクルと、名取さなさんのパフォーマンスが織りなすライブの様子は、かわいさとおもしろさが同居する、彼女らしい魅力にあふれていました!

名取さなといえば、2018年3月という早い時期から活動する個人勢のVTuberで、テレビやラジオに出演するほか今年9月には六本木EXシアターでのライブイベントも行います。そんな彼女は今回のイベントの大トリ。しかも、VRChat上でのライブは今回が初めてとあって、要チェックです!

今回のイベントを実施するのは、VTuberキヌのパフォーマンスを見せたいから

そして、今回何よりも注目しなければならないのは、キヌさんのライブでしょう。

Week4でパーティクルライブを楽しめるのは前述の通りですが、TBSの担当者の方によれば、本イベントをVRChatで開催しているのはまさにパーティクルライブ、さらに言うとVTuberキヌさんのパフォーマンスを行うためだったと言います。

サンリオVfesでの圧巻のパフォーマンスで、それまでVR音楽シーンに触れてこなかったファンの間にも「パーティクルライブ」という表現を浸透させました。しかし、VRのカルチャーに馴染みがない人にとっては未知の世界。だからこそ、「キヌさんの実力を世間に知らしめたい!」という情熱が、今回のイベントに込められていると言います。はたして本番で、どのようなパフォーマンスを体験できるのか、今から楽しみでなりません。


(クリエイティブディレクター:Takaomi)

一方、制作チーム側は「打倒キヌさん」という言葉を意識しているとのこと。もちろんポジティブな意味で、キヌさんの自由自在な演出に負けないような「かっこいいライブ演出を作りたい!」という熱い情熱があるといいます。その情熱が本番でどのように発揮されるのかも楽しみにしたいところです。


(制作スタッフ(左から):ちゅーたな、Ayano)

VR音楽カルチャーが世間にバレるきっかけとなるか?

VRChat上で開催される音楽ライブイベントは2019年ごろから活発化しており、「くらげビート」や「アルテマ音楽祭」など、VRのカルチャーから自然と生まれた音楽ライブがイベントというくくりで開催されてきました。

2021年に初開催して以来3回イベントが開催されているサンリオVfesでは、そんなVR×音楽ライブのイベントを企業が主催し、大きな話題に。毎年規模を大きくしながら多くのVRファンに愛される一大イベントとなっています。

そんな流れをふまえると、アーティストの登竜門的音楽番組「COUNT DOWN TV」を放送してきたTBSが、VRChat上でバーチャルシンガーが出演する音楽ライブイベントを開催することには意義を感じます。

メジャーデビューを果たしたバンドが「COUNT DOWN TVをご覧のみなさん」と視聴者に語り掛けてその存在が知られたように、VR音楽というカルチャーがマスメディアによって世間にバレる日がやってくるとも言えるのではないでしょうか。

ユーザーが制作した動画作品を投稿するニコニコ動画の中で生まれたカルチャーから時代を代表するヒットメーカー米津玄師が生まれたように、ユーザーがVRという自由な場でワールドやアバター、パーティクルライブ等の形で表現し、切磋琢磨することがVRのカルチャー全体のレベルを底上げしていき、そこからVR発の新たなスターが世間に見つかっていく。そんな流れがこのイベントから生まれるのかもしれません。

これだけ熱い想いがこめられた「META=KNOT」は参加無料となっているため、気軽に参加できるのはファンとしては嬉しいポイントです。また、どのインスタンスでも同様のライブを見られるため、友達同士で集まって見るのも、1人でじっくり見るのも自由。

Meta Quest対応はされていないため、VRで参加するにはPCVRで参加する必要があります。特にWeek4はもし参加可能な環境があるのならぜひ参加して欲しいところですが、もちろんVRで参加するハードルはまだまだ高いのが実情なので、YouTube配信も用意されています。

また、サイドイベントとして3月24日(終了済)、31日、4月7日、14日の計4回、音楽系コミュニティEMN Records、V-Kitazawa AWAKE、OpenMicBar SpotLightTalksそれぞれのイベントが開催されます。VRChat上の音楽カルチャー全体としての盛り上がりを体験することで、よりディープなイベント体験となることでしょう。

開催期間・参加概要

製作チーム (主催)株式会社TBSテレビ(クリエイティブ制作)Eallin Japan・Takaomi (MIGIRI)
開催日程 3月30日、4月6日、4月13日、4月20日
各19:00OPEN / 20:00START
配信先 ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」[無料]
YouTubeにてリアルタイム配信(イベント終了後もアーカイブ配信予定)[無料]
参加方法 公式HPを確認。
公式HP https://meta-knot.com/
公式X(旧 Twitter) https://twitter.com/META_KNOT
(ハッシュタグ:#METAKNOT)
備考 ※本イベントをメガネ型VRデバイスで楽しむ場合、ゲーミングPCなどへの接続が必要。ゲーミングPCなどを持っていない方は、YouTubeにてお楽しみくださいとのこと。

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