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【1万字インタビュー】史上最大のARスタートアップMagic Leapが目指す未来への道筋

2020年1月中旬に開催されたDOCOMO Open House 2020。5Gの展開を推し進めるNTTドコモは、各パートナー企業とともに様々なテック分野の未来を展示していた。その一つが「AR/MR」分野だ。

ドコモは2019年4月、MRデバイス開発を手がけるMagic Leap社へ2.8億ドル(約300億円)の投資を発表している。Mogura VR NewsではたびたびMagic Leapへの投資やデバイス発表を報道し、ドコモからの投資発表の直後にも特集を行ったが、Magic Leapへの直接取材の機会は訪れなかった――これまでは。

今回、Mogura VR NewsではDOCOMO Open House 2020に合わせて来日した、Magic Leap CEOロニー・アボビッツ氏(以下、ロニー)にインタビューを決行。Magic LeapのCEOが語る、未来への道筋を余すことなくお届けしよう。


(Magic Leap CEOのロニー・アボビッツ氏。DOCOMO Open House 2020「ウルトラマン MR Show」のコーナーにて)

次世代モデルMagic Leap 2は2021年に登場

Magic Leapは、「Spatial Computing(スペーシャル・コンピューティング、空間コンピューティング)」の実現を目標に掲げている。この考え方は、AR/MRによって、私たちが接するインターフェースが、これまでの平面ディスプレイから三次元の空間そのものになる、ことを意味する。いま、私たちはスマートフォンやテレビ、モニターなどインターフェースが平面によって構成される世界に生きている。平面の枠がなくなり、目の前の空間(現実)に様々な情報や3Dモデルが現れる。

Magic Leapはこの空間コンピューティングを実現するためにあらゆる側面から取り組む、としており、人間と空間コンピューティングの接点としてウェアラブルなMRデバイス(Magic Leapは“空間コンピュータ”と呼称)を開発中だ。2018年に初のデバイスMagic Leap One Creator Editionを開発者向けに発売した(日本では2019年秋から展開)。そして空間コンピューティングを共有するために「magicverse」というプラットフォームを準備中だ。

ロニーはDOCOMO Open House 2020での講演の中で「リアリティはまだ始まったばかり(Reality is just beginning)」という表現を用いた。ちょうど2016年、フェイスブック傘下となったVR企業Oculusもほぼ同じことを語っていた――“普及にはまだ遠いが、われわれは第一歩を踏み出した。ここから一緒に未来を作っていこう”。そんな意味が込められた言葉だ。

確かに現在提供されているMagic Leap Oneは、スマートフォンで体験するARに比べると性能も高く、ハンドトラッキングやアイトラッキングなど機能も豊富だが、“空間コンピューティング”にはまだ遠く、先はかなり長い。同氏の考えるロードマップはどのようなものなのか。

――空間コンピューティングの到来はいつ頃だと考えていますか? また、実現した世の中はどのようになるのでしょうか。そして、私たちはどれくらいの地点まで来たと思いますか。

ロニー・アボビッツ氏(以下、ロニー):

これから多くの改善が起きるでしょう。今年(2020年)、私たちはMagicverseのツールを公開します。これはほんの初期(very very beginning)にすぎません。Magicverseは“全ての街の、全ての家の、全ての場所に関係のあるもの”になるからです。電気のように、そこにあるとは思えないくらいの自然なものになるでしょう。例えば電話も3~5年くらいでは実感はありませんでしたが、10数年のうちにユビキタスなものになりました。

Magicverseは、「ハリー・ポッター」の映画を見たとき、子どもたちが触れるものに似ています。どんなときも、どんな場所でも「魔法が起きてほしい」と願えば、言葉にして唱える前にシステムがそれを理解し、実現します。

どうすればすごい力を得ることができるか、人が何を望んでいるか。同時に複数の属性をセンシングして、人が何を考えているかを理解するのです。まさに誰もがスーパーヒーローに――あるいは映画の登場人物になったかような感覚を得られるでしょう。その実現に向けて私たちも取り組んでいますが、公表できることはまだありません。

2020年は“孵化”の年であり、世界にアピールをする年になります。2021年に私たちはMagic Leap 2(ML2)を発売します。ML2は、視野角、パフォーマンスなど、あらゆるレベルでML1よりもっと強力なデバイスになります。そして、Magicverseに接続するためのデバイスになります。人々はMagicverseを技術として意識することなく、シームレスに接続できるようになるでしょう。ML1で私たちが感じたほぼすべての限界が、ML2ではなくなっています。

――先ほど“魔法”という言葉がありましたが、これが”Magic”Leapという社名の由来なのでしょうか。

ロニー:

まずは”Leap”のほうから説明しましょう。大いなる飛躍(=Leap)はどのようにしたらなし得るのでしょうか? 小さいステップで前に進むことではなく、実現しえないことを一気に実現する、という意味です。まるで60年代のトップエンジニアたちが月に行くということに魅了されたように。40~50年代の最初のコンピューターが、そして60~80年代のインターネットがそうであったように。私たちは世界で最も難しい問題に取り組むことを示し、最高のエンジニアを集めたいと思ったのです。

続いて”Magic”について話しましょうか。私は(PCとスマートフォンを指差しながら)コンピューティングは“こう”あるべきものではないと思っています。どこにでもあるべきものです。シンプルに欲しい物を呼び出せる(=summon)、例えば魔法のように。声かジェスチャか、もしかしたら思う、考えるだけでそれが実現するようになるかもしれません。

提携先、投資先をフル活用し、現実世界のマッピングを統合していく

Magic Leapは、現実世界とデジタルな世界を繋ぐ統合的なプラットフォーム「magicverse」を実現すると語る。SDKの提供も数ヶ月以内に開始予定だ。この、magicverseを実現する、という言葉は一言だが非常に重い。なぜなら、AR/MRデバイスと同じくらい、現実世界とデジタルな世界を繋ぐ統合的なプラットフォームは、世界中で各社が構築しようとしているホットな領域だからだ。特に、現実空間を常にマッピングし、複数人がデジタルな情報を現実空間に同期させることのできる“ARクラウド”は、スタートアップの買収も盛んだ。アップルやマイクロソフト、グーグル、フェイスブックも概念や片鱗こそ見せているものの、まだ技術開発が進行中の領域である。

――Magicverseについて聞かせてください。今年2, 3ヶ月のうちにSDKが公開されると発表されましたね。

ロニー:

そうですね。この春(2020年春)に公開予定です。我々のチームが現在一生懸命取り組んでいます。なお、Magicverseのツールセットは一度に全てが公開されるわけではありません。今春公開されるものもあれば、今年の後半に公開されるものも、ML2の発売される2021年になるものもあります。

――Magicverseの最も重要な機能は、マルチユーザーで同期を行う「ARクラウド」だと思われます。そのベースとなる現実世界の3Dデータの収集など、どのようにその仕組みを構築していくのでしょうか。

ロニー:

私たちはMagicverseのOSにあたるものを作っています。そこで重要になるのは、どのようにデータを取り込み、動的な(dynamic)デジタルツインを作り続けるか、ということです。我々のシステムはデータを、つまり現実をマッピングし続けます。シンプルなマップ、複雑なトポロジマップ、衛星を使ったマッピング、Lidarスキャン、ドローン……あらゆる方法を使って我々のマップは継続的に進化していくでしょう。

米国に関して言えば、我々の役員の一人Jennifer Fitzpatrick(※1)はGoogleでVPとして、Google EarthとGoogle Mapを統括しています。それが何を意味するかは明らかでしょう。私たちはすでに存在しているデータを最善の方法で集めて、Magicverseにユニークな特長をもたせることを考えています。すでにあるマップを再度作り上げるつもりはありません。より具体的なローカライズされた部分にフォーカスして取り組んでいます。

そういう意味では、我々の提携先や投資家との連携が重要になってきます。AT&Tはマッシブマッピングやローカリゼーションのケイパビリティがあります。GoogleとAT&Tは非常に強力な2つのパートナーです。中国では、アリババがパートナーです。日本ではNTTドコモが、自身の5Gのインフラだけでなく全てのパートナーを通じて、データを集めることができるでしょう。(※2)

(※1……Jennifer Fitzpatrick氏は2019年、Google CEOのSandar Pichai氏に代わりMagic Leapの社外取締役に就任している。なお、欧米メディアはこれをネガティブに報じていた)

(※2……NTTドコモによれば、グループ内、パートナー企業等も含め、現在どのようにマッピングをしていくか議論をしているところとのこと)

ロニー:

(DOCOMO Open Houseの会場となった東京ビックサイトの青海展示棟を例に挙げながら)マップのサービスでは、すでにこの建物の情報が存在しています。私たちは改めてGPSの機能を開発する必要はありません。LiDARスキャナーを使い、建物の内外の高精度な3Dデータを集めることができれば、ミリメートル・センチメートル単位の特定が可能になります。一つの繋がった空間コンピューティングにおける体験は素晴らしいものになるでしょう。

この会場にとっては、マッピングされたデータを蓄積することで、他のイベントで使うこともできます。一方、人々によって動きが生まれます。それがシステムの動的な側面になります。

「第1世代のデバイスは、Apple Ⅰのようなもの」

――空間コンピューティングが普及するためには時間がかかると考えられますが、いかがですか。

ロニー:

毎年新しく、空間コンピューティングを体験する人達が増えていきます。もちろんまだ知らない人達もいますが、10年も待つことはなく、来年にはその世界に住む人達が現れるでしょう。再来年にはもっと多く。何十億もの人が空間コンピューティングを利用するようになるには10年の年月がかかると思っています。2020年から2030年の10年間で私たちは最初の数百万人がそれを体験し、数千万人に広がり、数億人になって10億人に到達するでしょう。

まだ多くの人がアクセスできず、受け入れられる状況でない、と思うかもしれません。しかしそれは技術力の問題、というわけではありません。人々のもとに届けられていないだけなのです。

――個々人のレベルで見れば、徐々に適応していくということですね。

ロニー:

私は空間コンピューティングの広がりは携帯電話よりも早いと思います。すでに数十億人が携帯電話を所持し、モバイル文化がすでにあります。第2世代(ML2)から第3世代(ML3)にかけては、“友達が使っているのを見て自分も使いたくなる”流れが起きるかもしれません。人々が追い求めるようになるのです。

これは第1世代(ML1)では起こりません。ML1は、熱狂的な素晴らしいアーリーアダプターにのみ届く、テスラ・ロードスター(※3)、Apple Ⅰ(※4)くらいの位置づけです。第2世代、第3世代では様々なコンピューティングの歴史にあるような展開が起き始めることでしょう。

(※3……テスラ・ロードスター:2008年に電気自動車メーカーのテスラが発売した同社最初の生産車両。デザインはオリジナルではなく、イギリスのロータス・カーズのモデルを採用していた。テスラはその後、セダン型のモデルS、低価格帯のモデル3、SUVタイプのモデルXと、ラインナップを拡充している)

(※4……Apple Ⅰ:1976年、アップル社が最初期に製作したマイクロコンピュータ。共同創業者のスティーブ・ウォズニアックが自作した。Apple Ⅰの成功を受けて開発されたパーソナルコンピュータApple Ⅱは大ヒットとなりPCの文化を築くきっかけとなるとともに、アップルの礎となった)

――空間コンピューティングが広まっていくには何が最も重要(Missing Link)だと考えていますか? あなたは、エリアやアクセシビリティといった考え方を紹介していましたね。

ロニー:

ひとつの要因だけではないと思っています。デバイスに関しては、私たちは次の10年間の見通しをかなり良く理解できています。ML1のシステムでは衛星や自動運転向けに作られたNVIDIAのチップを採用して使っています。とてもパワフルなチップです。ML2では、私たちはそれを空間コンピューティング向けにカスタマイズします。ML3ではさらに大きく性能を飛躍させたSoC(CPU、GPUが1つのチップに統合されたもの)を作ることになります。より小さく、よりパワフルなチップをカスタムすることになるだろうと。このCPUとGPUのロードマップに基づいて、ML1を設計しました。

そして私たちは、5Gのネットワークの広がりを注意深く見ています。5Gのネットワークが行き届いてこそ、空間コンピューティングの考え方はようやく実現する。二人三脚だと思っています。

フロントではインフラ構築が必要です。高速データ通信、そしてローカルエッジコンピューティングは私たちに大きな飛躍をもたらすでしょう。日本で5Gがどの程度普及していくかが、我々がどの程度それに伴って伸びていくかを示すことになります。私たちだけが急激に広げていこうとするのではなく、5Gの普及についていくと言ったほうが正しいと考えています。

――すぐさま、あるいは一気に普及をさせようとは考えていないわけですね。

ロニー:

アーリーアダプターや開発者はすでにデバイスを持っています。そして持っている人たちはそれを他の人達に紹介していくでしょう。その輪が広がっていき、2年、5年、10年と大きな動きになります。2021、22年は素晴らしいことに、そして5年というスパンで考えたときには凄まじいことになるでしょう。10年後にはみんなが体験している、という未来を目指しています。

「誰もが、毎日、1日中、どこでも」使えるデバイスを目指して

――MRデバイスが複数のメーカーから登場しています。今後も増えていくことでしょう。Magic Leapはどのようなハードウェア設計思想を持っているのでしょうか。

ロニー:

まずは私たちがどのようなデバイスを目指しているかという点から説明します。私たちが目指しているのは、生理学的に正しい光学系の実現です。人の目は近距離、中距離、遠距離の各レンジに対応するように進化してきました。近くにあるものを見るとき、毛様体筋は焦点を合わせるために収縮します。遠くにあるものを見るときは緩まります。さらに遠くを見るときはさらに。

そのため、近くにあるディスプレイをずっと見ていると眼に疲労が溜まり、脳に負担が生じて頭痛が起きます。私たちは数理学的にこれを解決するシステム・エンジニアリングモデルを作り上げ、脳のシステムにどう作用するかを試そうとしています。このアプローチは医療機器メーカーが取り組んでいるものに非常に近いと思います。

ML1では、脳への負担に対する私たちのモデルが正しかったのかどうかテストをしました。14.6インチまでの距離であれば生理学的な負担がかからずに見ることができます。他のデバイスでは、頭痛など多くの問題が生じるでしょう。それは眼と脳のシステムを考慮していないからです。

私たちは脳科学の知見を学び続けています。社内にも脳科学のPhDを持っているメンバーが多く在籍しています。私たちのモデルはより洗練され、ML2に反映されるでしょう。さらに洗練させたものがML3に私たちは改善を続けていきます。

――なぜ生理学的に正しいデバイスを目指しているのでしょうか。

ロニー:

それは、私たちが作っているデバイスが、1日中使うものになると思っているからです。頭痛やストレスを感じたら使わなくなるでしょう。

そして非常に小型で軽いデバイスである必要があります。一方で、私たちは処理能力で妥協するわけにはいきません。スーパーコンピューターの演算能力に近い性能を何か小型のデバイスで実現し、AIでサポートされた素晴らしいセンシングが必要です。これらを実現するためには、シリコンやセンサーから自分たちで開発しなければいけません。私たちが工場を所有しているのはそういう理由です。性能を妥協することなく形状を実現するためなのです。

形状を優先する企業もあるでしょう。処理能力とセンシングと光学系を妥協してしまうと、最終的に到達したいところとはずれてしまうと思っています。私たちが目指しているのは、全ての人が毎日一日中つけて素晴らしいビジュアルクオリティの体験ができるデバイスです。

そしてもう一つ。頭は非常に高価な“不動産”です。そして首は重さに耐えることができません。首にできるだけ負担をかけないように、重心も気にしています。

――最終的にグラス型のウェアラブルデバイスになっていくのだとしたら、そのデバイスは非常にパーソナルなものになります。ML1は、眼鏡の必要なユーザー向けにオプションのレンズを提供していますね。今後はデバイスをパーソナライズして使うようになるのでしょうか?

ロニー:

私たちはまさにその問題にも取り組んでいます。デバイスは個々人のものになり、靴や靴下のように1日中身につけるものになります。個人にフィットしなければならないですし、現実の体のスケールに合わせるものです。「今日はあなたの眼鏡を借りるね」とは言えないですよね(笑)労働者間で共通して使えるデザインにする、というビジネスで展開しているメーカーもありますが、最終的に誰もが使うようになるものですからね。

社内には、各人の視覚的な問題にどう取り組むのか考えるチームがいますす。視覚というのは興味深いものです――矯正視力だけでなく、夜でも見れるようにしたり、鷹が数マイル先を見れるような、完璧な視覚や赤外線まで見れるようにしてしまうことも。アプリのようなものです。

どんな視覚的な問題を抱えていたとしても、超人的な視覚を提供することができるようになるかもしれません。通常の視力の人が超人的な視覚を手にするという可能性もありますね。実装されるようになるのはおそらく第3世代以降になると思いますが。

「報じられている数字は全く正しくない」

――2018年8月の発売以来、どのように広がっているのでしょうか。6,000台と海外メディアでは報じられているが、少なすぎるように思われます。

ロニー:

どのメディアかという話はさておき、私企業が情報を公開していない以上、正確かどうかはともかくメディアが何を書くかは彼らの自由です。それがたとえ根拠のない話であっても、です。

私たちは数字をお伝えすることはできませんが、報じられている数字は全く正しくありません。

ヒントとなるデータをお伝えしましょう。私たちのシステムに登録されている開発者の数は10万人以上です。そしてアプリを公開できるパブリッシャーの単位では数千います。開発者はディズニーなどの大企業のスタジオにいる場合も個人のインディ開発者の場合もあるでしょう。パブリッシャーは開発者自身がなっていることもあれば、企業そのものの場合もあります。

ML1が発売されてから最初の1年が経ち、ストアには200のアプリが公開されています。かつてスマートフォンが出てきたとき、Appleのストアには3つのアプリしかありませんでした。そこからアプリの大爆発が起きました。アプリの数以上に、多くの開発者がデバイスに触れて理解を進めていることでしょう。

最初の1年で、数百の高校や大学がパイロット事業でPoCを作っています。例えば、私たちは学校が集まっている地域と提携しており、そこには数百、数千人の生徒たちがいます。教室で使うために50~100台のML1を送りました。その地区のポテンシャルは2,300台だと思っています。

産業向けには、主要な自動車企業とも提携し、工場で新しい乗り物を作る部門と協力関係にあります。他にも小売店ではカードで在庫を表示するのではなくML1で在庫を表示するsystemが作られています。ML2、ML3と進むことでさらにバーチャル在庫を見る取組は増えるでしょう。この小売企業での導入ポテンシャルは15,000台です。

エンタープライズではすでに数千の企業がこの非常にアーリーな段階で関心を持ち、関わろうとしています。それぞれのプロジェクトは、50-100台のパイロット導入から始まり、今後デバイスが進化するにつれて育っていく、いわば“種”のようなものだと思っています。

ただの名称変更ではない。Magic Leap“1”へのアップデート

Magic Leapは2019年12月にデバイスの名前を「Magic Leap 1」に統一し、同時に法人向けのサポートやソフトウェア・アップデートを開始した。

ロニーは講演でも、企業向けには空間コンピューティングには、「コミュニケーション」「3Dビジュアライゼーション」「学習とアシスト」「ロケーションベースの体験」の4種類の用途があると説明した。コンシューマー向けを狙っていると考えられたMagic Leapが、エンタープライズ向けに展開するのはなぜなのだろうか。

――直近リリースされたMagic Leap 1について聞かせてください。当初のMagic Leap Oneとはどういった違いがあるのでしょうか。

ロニー:

最初のモデルは“Magic Leap One Creator Edition”という名前でした。開発者やクリエイターに向けの、まだコンシューマー向けではない本当に非常に早期の段階のモデルです。コンシューマー向けにはもっとクオリティの高いものを作りたいですし、信頼性やソフトウェアの問題といった観点からも、開発者にこそ提供できるものでした。

ML2を世に出す前に、私たちはわずかに前進することができました。新たなコンピュータビジョン用のセンサーと膨大なソフトウェアの改善です。驚くべきことに、Magic Leap Oneを毎日使うユーザーも現れたのです。私たちはそういった用途をML2までは想定していませんでした。

そこで、Magic Leap 1というバージョンを作ることにしました。もはやCreator Editionではない、50~100台導入してすぐに使えるデバイスです。このモデルを出すことができたことは、私たちにとってはとてもエキサイティングなことでした。

私たちのプラットフォームでは、メジャーなハードウェアの進化を行おうとしています。シリコンから作り直していくわけなので、大きな進化が起きます。こうしたメジャーアップデートには24~30ヶ月を要すると考えています。

そういう意味では、Magic Leap 1はメジャーなハードウェアの進化の間にあるマイナーな改善を行った、中間的な位置づけのモデルとも言えるでしょう。12ヶ月のサイクルでできるものです。ML2にはML2 Plusができるかもしれません(笑)

――Magic Leap 1でのハードウェアの違いはコンピュータービジョン用のセンサーですね。

ロニー:

まさに、そこが唯一の違いになります。センサーがより強力なものになりました。よりMagicverseに対応したものです。ソフトウェアもより頑健で、複数人のユーザーが使用することを想定しています。パイロット事業をよりスケールさせようとする企業ユーザーに向けたものですね。例えば10人程度の開発者がいる企業で、パイロットで数百のデバイスが必要となった企業向けと言えるでしょう。ML2では数千台にさらにスケールすると考えられます。私たちは顧客のみなさんが徐々に育っている(growing)と感じています。

――このタイミングでMagic Leap 1をエンタープライズ向けとしてリリースしたのは、そういう意図だったんですね。

ロニー:

Magic Leap One Creator Editionを出して、我々はこのデバイスがどういうものに使われるのか――皆さんの「Wants(要求)」に耳を傾けてきました。企業のWants、政府のWants、消費者のWants。私たちのプラットフォームは、あらゆるものに関係する、まるで幹細胞のようなものです。

そして、私たちは開発者からの大量のフィードバックも受け取ってきました。導入を検討していえる数千の企業からも、そして毎日このデバイスを使い始めた超初期のコンシューマーからもです。中には18時間もつけて生活している人がいることも分かりました。

私たちの考えでは、米国では思っていたよりも早く企業が動き、この領域により早く多くの資金を投じようとしています。コンシューマーに対してはより大きな開発者のエコシステムを作らねばならないですし、いまよりもずっと小型な形状が求められていて、ML2やML3をそこに合わせて設計していかねばなりません。

逆にビジネス用途では形状の重要性はそれほど高くありません。特定用途で使用する特定のアプリケーションこそが重要になります。

ビジネスは常にコンピューティングの進化においてアーリーアダプターでした。政府、ビジネス、コンシューマーと。コンシューマー向けの発売より早くから、エンタープライズ向けに取り組むこと自体は驚くべきことではないでしょう。

エンタープライズ版を出すことは世界にとってはシフトかもしれませんが、私たちにとっては違います。私たちのゴールは「All day、Everyday、Everyone(1日中、毎日、誰でも)」です。起きたら装着してニュースを見て、電車の中でゲームをして、職場についたらそのままそれで仕事して……自分がいる場所と役割に応じて、同じシステムで異なるアプリケーションを起動するだけになるでしょう。

――これまでのコンピューティングシステムも同じでしたね。

ロニー:

人間をサポートすることに考えを巡らすと、人が遊んだり、仕事をしたり、朝から夜まであらゆる活動をサポートすることになります。私たちは日曜の朝から土曜の深夜まで、人が何をするのかを書き出しました。どこにいるどんな人たちなのか、部屋ごとの違いや仕事のワークフローを「空間」と「時間」という軸で整理したのです。とても興味深いものでした。どういう部分が空間コンピューティングの初期から相性がよく、どういう部分に後から取り組めばいいかが分かってきたのです。

最終的に目指すハードウェアの形

――MLは最終的にどのようなデバイスになることを目指しているのでしょうか?たとえば、Oculusは形状やできること、スペックなどVRデバイスの未来を示しています。

ロニー:

全てが変わるでしょう。(眼鏡を指しながら)これはプラスチックでできていて、演算能力は一切含まれていません。ML2とML3はこれに非常に近いものを目指します。そこにスーパーコンピューティングを内蔵させなければいけません。自動運転車や衛星、ドローンレベルが行うコンピュータービジョンを、ユーザーを待たせることなく行わなければならないからです。小型でパワフルなデバイスであることが求められますし、屋内でも屋外でも使えなければなりません。シリコン、センサー、光学系全てを変えていかねばならず、そのために世界中から優秀なエンジニアを集めています。

コンピューティングにセンシング、そして熱力学も重要です。パワフルな処理を行うためには、熱を逃さなければなりません。ゲーミングPCを考えてみてください。ゲーミングPCはパワフルでそして素晴らしい熱設計がされています。私たちはあの巨大なコンピューティングパワーを小さなデバイスに詰め込むことを考えています。小型化のためにはマテリアル工学も熱力学も、シリコンの開発も。ユーザーをハッピーにするために、私たちは毎日物理学と戦っています。

――高い処理能力と小型化を両立させるために、クラウド側で描画処理を行うクラウドレンダリングは解決策になると思いますか?

ロニー:

NTTドコモとの提携によって期待していることにも繋がるのですが、5Gの高速通信のネットワークが普及したときには、ネットワークにより依存できるようになり、処理をそちらに頼るようになるかもしませんね。ネットワークはエンドレスなコンピューティングをもたらします。どこにいても享受することができ、可能な限りの小型化が実現できるでしょう。

ネットワークがまだ不均一な状態では、ある程度のローカルコンピューターにネットワーク経由のコンピューティングが結びついた状態になると思います。私たちはML2でそのテストをしています。ML3ではさらに多くのことができるようになるでしょう。

――優秀なエンジニアを集めているとのことですが、現在、社員の数はどの程度いるのでしょうか。特に重点的に人が増えている部門はありますか。

ロニー:

今は2,000人以下のサイズです。ML1からML2の間で私たちは成長していますし、ML2からML3の間でさらに成長するでしょう。セールスやマーケティングなど、さらに成長するためのセクションで人員を補充していくことになります。

デバイスのエンジニアリングチームもさらに大きくなる予定です。ML2を出荷しながらML3の開発も進めていく、そしてML4も……というように同時に複数のデバイスに取り組むことにもなるからです。日本でも米国でも、採用し続けることになります。

エンタープライズ向けで売上を立て、コンシューマー向けに備える

――日本はXRと親和性の高い国です。「電脳コイル」、「攻殻機動隊」など多くのフィクションがあります。

ロニー:

「電脳コイル」はまだ見たことがないですが、「攻殻機動隊」の制作に関わったメンバーがMagic Leapの役員にはいます。私達のDNAはSFであり、ファンタジーです。日本のメディアカルチャーが、あの世界を実現させようと私たちの多くのメンバーに影響を与えていることは間違いありません。

――そして、日本の開発者コミュニティは新しい技術に対して非常に積極的です。Oculus RiftやHoloLensなど、未来に繋がる技術が登場するとすぐに適応していきます。Magic Leap Oneも同じで、日本で展開される1年近く前からミートアップが開催されていました。

ロニー:

日本では、Magic Leap Oneが来るよりも早い時期からシステムが使われていたようでした。その理由を私たちは知らないですし、知ろうとは思わないですが(笑)日本はこの分野で世界で最も適した市場かもしれませんね。世界の他の人々に「何ができるのか」を示す手本になる可能性があります。

――空間コンピューティングが広がっていくにはかなり時間がかかります。AR/MRの開発者はその期間をどのように生き延びたらいいのでしょうか。

ロニー:

もし私がスタートアップの開発者だったら、2つのことに取り組みます。

1つ目に、私たちがMagicverseを届けようとしている人たちのことを考えます。開発者が作るアプリは、iOSやAndroidの端末でも視聴し、体験することができるようになります。iOSやAndroidはMagic Leapのデバイスに比べて非常に大きなインストールベースの端末数があります。いずれMagic Leapのデバイスのほうが数が多くなると思いますが、スマートフォンやタブレットがしばらくは優位でしょう。

もう1つ、即座にビジネスになるのは、エンタープライズです。空間コンピューティングを導入してみたいと思っている企業は今よりもはるかに多くありますし、実際に数千の企業が関心を持っています。彼らは、Magic Leapで何ができるのかを見せるために、開発できる人々を探しています。スキルを持った人材が社内にいないですからね。数百万ドル、数千万ドルのビジネスになっていくでしょう。これが即座に売上を立てる方法です。

エンタープライズ向けの仕事とコンシューマー向けの仕事のバランスをとることができれば、きっと上手くやっていけるでしょう。

――ありがとうございました。


(Magic Leap CEO ロニー・アボビッツ氏(左)とインタビューに同席していたコンシューマビジネス推進部 XRビジネス推進担当部長 岩本 和久氏(右))


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