3月24日、360度カメラ「Insta360 ONE」のカメラファームウェアとiOSアプリが大幅アップデートされました。バージョン2.0となったカメラファームウェアでは、事前の予告通りInsta360の独自ソフトウェアスタビライゼーション技術「FlowState」が実装され、これまでのInsta360 ONEの動画と比べて一目で分かるほどの“揺れの少ない”動画を撮影できるようになりました。
Insta360は、この「FlowState」を同社のブログ上で「Gimbal Killer」(ジンバルキラー)と称しています。アップデートの直前には、Insta360 ONEをスキーや犬の背中に取り付けて撮影した、下の水平を保ち揺れの少ないプロモーション動画を公開していました。
アップデートというよりも後継機モデルへの進化に近い
カメラファームウェアをアップデートしたInsta360 ONEを使用してみて、同社が「ジンバルキラー」と呼称するのも納得できるほどの強力なスタビライゼーションが効いていました。筆者がアップデートしたIntsa360 ONEを試した直後の感想は「アップデートというよりもモデルチェンジに近い」というものでした。それ程に大きな変化があり、別の後継機カメラと言っても良いような進化を遂げています。
今回のInsta360 ONEのアップデートで強く感じたのが、2018年の360度カメラのトレンドです。CES 2018でGoProが提示した「360度カメラは、カメラが向かうべき方向だと思っている。VRのためのものではない。消費者は撮りたいものを綺麗に撮れる“魔法のようなカメラ”を求めている」(GoPro, Inc. CEOニック・ウッドマン氏)という流れを強く意識しているように思われました。
・参考記事
GoProの360度カメラ「GoPro Fusion」やGarmin製「VIRB 360」、また日本未発売ですが米国の360度カメラスタートアップであるRylo社の「Rylo」などは、どれも強力なスタビライゼーションによる360度動画の補正と、360度動画からカメラアングルを自由に変えて固定の画角の通常の動画に切り出しする編集機能をセールスポイントにしています。
・GoPro Fusion
・VIRB 360
・Rylo
https://www.youtube.com/watch?v=hmhOsYGRMJI
360度動画から固定の画角の通常の動画に切り出しがデフォルト化か?
Insta360 ONEも上のカメラと同じように、これまでもスタビライゼーションによる補正と通常の動画に切り出しする編集機能(「フリーキャプチャ」機能)はありました。
しかし、これまでのInsta360 ONEのスタビライゼーションでは、たとえばバイクやスノーボードなどのエキストリームスポーツのような場面では、どうしても“揺れ”というノイズの大きい動画になってしまいました。特に360度動画の場合はVR酔いという問題もありますが、たとえ切り出し動画にしたとしても“揺れ”が気になる動画になってしまい、360度カメラで撮影できるシーンが限定的になっていました。
また、切り出し動画に編集する時にもスマートフォン自体を動かす必要がありました。これでは編集作業というよりも撮影のリテイクという感覚の方が近いと言える作業でした。それはそれで新しい体験で楽しいものなのですが、例えば移動中やテーブルの前のちょっとした隙間時間や周囲の目がある場所では、作業しにくいというのが筆者の感じていたところでした。
今回のアップデートで、上の筆者(ユーザー)の不満に応えたのかどうかは定かではないですが、スマートフォンの画面をスワイプ・タップするだけで自由にカメラアングルを変更して編集できるようになりました。また指定した方向・対象にカメラワークの設定もできるようになるなど、通常動画への切り出し編集の利便性が大きく向上しました。
※下の動画は、Insta360 ONEで撮影した動画。左はカメラワークやリトルプラネット
2倍速などに編集し、右は編集無しで正面のレンズが撮影したもの。自転車は揺れていますが動画自体は水平を保っているのが見れるかと思います。
また、これまでは通常動画への切り出し編集する機能には「フリーキャプチャ(自由編集)」と名前が付けられていましたが、今回のアップデートでそのネーミングが廃止されてただの編集の1つに、さらに360度動画を編集する際の1番目の選択肢に、つまり360度動画よりも切り出した動画が上にきています。
360度カメラのユーザーは360度動画よりも切り出した動画にするケースの方が多い、もしくは今後多くなってくるとInsta360は考えているのではないでしょうか。
さらにタイムラプス動画も切り出し編集ができるようになったり、通常の360度動画でも最大64倍速まで早回しの動画に編集できるようになったりと、編集の自由度も上がりました。スタビライゼーションの効いた60fpsの360度動画から切り出すことも可能で、60fpsで水平が保たれていると非現実的なくらいにヌルヌルした面白い動画を作れます。
・60fpsモードで撮影した動画
また、カメラを回転させて高速撮影を行うバレットタイム動画もこれまで通り撮影できます。フィルター処理するとよりマトリックスのような動画に。
今では海外を中心に多くの企業が360度カメラに参入しています。各社による激しい競争から、360度カメラの性能の向上はもちろんのこと、新しいカメラとしての使い方・撮影機能も登場してきました。Insta360は新しいカメラのあり方としての提案をしていくと公言しており、今後も360度カメラのさらなる進化に期待したいところです。