言葉だけで説明するよりも、1枚の写真があればよりよく状況を理解することができます――では、ARやVRではどうでしょうか? 歴史的な出来事への理解をさらに深めるために、アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館は、ARを使った展示の提供を試みています。
犠牲者を個人として理解するには
使用するのは来館者のスマートフォンです。アプリをダウンロードし、展示された写真にカメラをかざすと、詳しい説明を読めるという仕様になっています。ホロコーストで犠牲となった人々や、惨劇から生還した人々について理解を深め、来館者がホロコーストの歴史についてより感情的に近づくことを促そうとしています。
プロジェクトを総括したMichael Haley Goldman氏は、「600万人もの人々が殺害されたことを、ただ人数ではなく個別の人々として理解してもらうためにはどう伝えれば良いでしょう?」と問題提起を行っています。「今回我々はスマートフォンとARアプリを使い、情報を伝えることにしました」
写真だけよりも理解が深まる
具体的には、ある展示ではリトアニアのEisiskesの住民の写真を展示しています。説明によると、この町に住む約3,000人のユダヤ人の大半は、1941年、わずか48時間の間に虐殺されました。ARアプリを写真にかざすと、個人の名前が出てきたり、その人々についての説明を読んだりすることが出来ます。
試験導入中の展示を体験した来館者の一人(14歳)は次のように感想を語りました。「ARを使うと格段に理解を深めることが出来ます。写真だけでも多くのことを教えてくれますが、文字の情報が一緒に提示されると、ただ写真を見るときよりも10倍も深い体験が可能です」
AR/VRを博物館や美術館の展示と組み合わせる取組は、来館者の理解を助けたり、より興味を持ってもらうために広く行われています。
(参考)Next Reality