Home » 地方自治体・観光団体がメタバースとして関心を寄せる「フォートナイト」 これまでの活用事例まとめ


Fortnite 2024.05.02

地方自治体・観光団体がメタバースとして関心を寄せる「フォートナイト」 これまでの活用事例まとめ

大人数のマルチプレイヤー対戦で知られる人気TPS「フォートナイト」ですが、近年は、ユーザーがワールド(マップ)を作成できる“クリエイティブモード”が盛況となっており、メタバース的な活用が広がっています。

開発元のEpic Gamesも、このモードを一種の“メタバース”として位置付けており、観光やホラーゲームが楽しめるマップからバーチャルライブが体験できるワールドまで、多種多様なコンテンツが日々公開されています。

4月現在、クリエイティブモードには様々なクリエイターが参入しており、その中には日本の地方自治体や観光団体も含まれます。本記事では、そういった地方による「フォートナイト」の活用例をピックアップ。各自治体や団体などが公開しているマップと、“公開目的”を紹介します。

熊本県:県の名所や“くまモン”をPR!


九州の熊本県は、同県の営業部長兼しあわせ部長「くまモン」をモチーフにした「くまモン島」を公開。経営シミュレーションゲームとなっており、くまモンと一緒にフィールドを巡りながら、熊本城の再建を目指します。トマトやイチゴ、スイカなど、熊本県の名産品がマップ上に散りばめられており、遊びながら熊本の魅力に触れられるのがポイント。黒川温泉に浸かったり、球磨川で川下りを体験したりできます。フォートナイトのゲーム性に慣れていなくても遊びやすいように制作されているのも特徴です。

【島コード: 0507-8727-1071】

兵庫県神戸市:温泉地へのインバウンド誘致

神戸市経済観光局は、monoAI technology株式会社と兵庫県eスポーツ連合のプロジェクト「有馬温泉・金の湯」マップの制作に協力しています。本プロジェクトは、神戸市にインバウンドの誘客を進めるため、グローバルに対して情報発信の強化と、知名度向上を目的としているとのこと。

「有馬温泉・金の湯」は、兵庫県の名湯“有馬温泉”をテーマにしたワールド。建物横には、現実世界同様に足湯が併設されており、実際に入ることもできます。金の湯の入り口には、明治維新で廃寺になった瑞宝寺の住職が建てた歴史ある石碑があります。周囲の景観含め、忠実に再現しているところが大きなポイントです。

【島コード:4244-1385-8459】

茨城県:デジタル産業活性化の一環として“イオン”を公開

茨城県は、「イオンモール水戸内原」をモチーフにしたマップを、株式会社GamingVに委託する形で公開しました。茨城県は、eスポーツ・ゲームメタバースを活用したデジタル人材育成や地域産業活性化に取り組んでおり、本マップはその一環として公開された形です。

なお同県は、マップの公開のほか「フォートナイト」のクリエイティブモードで制作されたマップコンテスト「FORTNITEいばらきコンテスト」といった取り組みも進めています。このコンテストは若年層のデジタルスキルの向上や、茨城県の魅力について知ってもらうことが目的で、最優秀マップは、茨城県が主催するFORTNITE親子大会にて使用されました。

【島コード:2218-2873-9358】

群馬県伊香保温泉:地元団体が独自の温泉ワールドを公開

群馬県の伊香保温泉街は、「METAIKAHO BATTLE ROYALE : 伊香保温泉の闘い」と呼ばれるマップを公開しています。同マップは、地元経営者が携わる伊香保デジタル化実行委員会が主導するプロジェクトで、渋川伊香保温泉観光協会も協力。伊香保温泉の有名な石段街やその近隣の観光名所が再現されています。マップを通じて、委員会と地域の事業者をつなぐことを目標としています。マップ全体はマルチでの対戦ワールドとなっており、フレンドと一緒に遊びながら観光できるものになっています。

伊香保温泉のメタバース構想が始まったのは2022年。同年9月から10月にかけて、開発のためのクラウドファンディングも実施されました。

【島コード: 1010-3155-8790】

和歌山県:「メタバース和歌山」の複数マップがプレイ可能

和歌山県では2024年3月より、「メタバース和歌山」プロジェクトが行われています。同プロジェクトは、「フォートナイト」上に和歌山県に関連したマップを3つ公開するという内容です。公開されたマップの詳細は以下の通りです。

・和歌山城 BATTLE:日本三大忍術ゆかりの場所「和歌山城」を再現したマップ。天守閣の外観・内観などを細部まで再現しています。

【島コード:8343-1088-9153】

・和歌山駅前 BATTLE:JR和歌山駅前の商店街やビル群を再現。遠景には和歌山城や那智の滝などの観光名所や名物を配置しています。また「おもてなし忍者」がフォートナイト内の和歌山駅前に登場します。

【島コード:0088-4634-2360】

・AROCHI BATTLE:和歌山市の繁華街「あろち(新内)」エリアを再現したマップ。 夜の煌びやかなネオン街を表現しています。

【島コード:8399-1654-8263】

メタバース和歌山は、株式会社モンドリアンと和歌山県のユタカ交通株式会社などが連携して実施しているプロジェクト。和歌山市の企画整備課も協力しています。

同プロジェクトは、和歌山の地方創生事業の一環として位置付けられており、観光需要喚起と新たな収益の獲得が目的。地元企業によるサポートも行われています。支援企業の名称は、マップ内の建物の外壁や沿道の看板といった場所に掲載されています。

なお本マップは、吉本興業所属の人気芸人である小籔千豊さんが主催するeスポーツ親子大会「第4回 親子大会 featuring Fortnite」のエキシビション、および、メタバース和歌山実行委員会主催の「和歌山城下町eスポーツ大会」でも採用されています。

まとめ:ユーザー数やクリエイティブの自由度が参入に影響か

4月現在、力の入れ具合やアプローチに差がありつつも、複数の自治体や企業が「フォートナイト」を使った地方創生に取り組む姿勢を見せています。現時点では、本格的に参画している印象があるのは、熊本県や茨城県で、今後この“前例”が成功を収めた場合、他の自治体による「フォートナイト」関連プロジェクトが始動する可能性もあります。

そもそも、「フォートナイト」は国内外を問わず非常に多くのユーザー層を抱えており、クリエイティブモードの自由度も高いのが特徴です。サバイバルゲーム用途以外のマップにも徐々に注目が集まっており、若年層を中心に遊ばれています。「フォートナイト」を使ったプロモーションが世界各地で行われている昨今。国内では今後、どのようなムーブメントが生まれていくのか。官民双方の動きに注目しておく必要がありそうです。

執筆:井文


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード