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業界動向 2019.10.09

【独占取材】ユーザー20億人超のフェイスブックが挑むソーシャルVR「Horizon」体験レポ

2019年9月末に開催されたOculus Connect 6(OC6)にて、フェイスブックはソーシャルVRサービス「Horizon」を発表した。Horizonは、VRヘッドセットを使用し、VR空間でアバターの姿で人々が交流することのできる、いわゆる「ソーシャルVR」サービス。2020年上旬のベータ版公開を目指している。

発表時に公開された動画には、離れたところにいるプレイヤー同士がミニゲームのようなものを遊ぶ様子が映し出されていた。

https://www.youtube.com/watch?v=Is8eXZco46Q

ソーシャルVRは「VRChat」や「Rec Room」など先行するサービスも多い。フェイスブックは後発となるものの、全世界23億人以上のユーザーを抱える企業がどのようなサービスを目指すのか、注目が集まっている。

筆者はOC6に参加した日本のメディアで唯一Horizonを体験、フェイスブックへの直接取材を行うことができた。その様子をお伝えしよう。前編では「Horizon」の体験レポートをお届けする。

Skywayと呼ばれる空間から各ワールドへ

「Horizon」のデモ体験には一体型VRヘッドセットOculus Questを使用。AR/VR エクスペリエンス部門でプロダクトマネジメントのディレクターを務めるエリック・ロモ氏によれば、Horizonは「Questファーストの設計を行っている」とのこと。QuestとPC向けであるOculus Rift Sの両方に対応しつつも、よりスペックの低いQuestで十分な体験ができるようにしているという。

さて、デモは数種類用意されていたアバターから、好きなものを選ぶところからスタート。Skywayと呼ばれる広場では、Oculusの案内役がプレイヤーを待っていた。

まずは案内役からジェスチャーについての説明を受ける。「Horizon」ではプレイヤーの声に基づいてアバターの表情が豊かに変わる。一方、明示的に表情を示すため、親指を立てると笑顔になり、逆に親指を下に向けると悲しそうな顔になる仕組みも。「このボタンを押すと表情が変わります」などの複雑な操作説明はない。

流れるように説明を受け、いよいよ各“ワールド”へ出発。「Horizon」では、各ワールドを移動してコンテンツを楽しんでいく仕組みになっている。ちょうどSkywayの左、真ん中、右にそれぞれワールドへの入り口が配置されており、テレポートして向かう。入り口に向かう途中で立ち話をしているOculus社員の横を通り過ぎ、挨拶をした。サービスが始まったらこのSkywayに人が溢れるのだろうか、とふと思った。

まずは左の入り口から。エレベーターのような乗り物に乗りテレポート。読み込み時間は10~15秒程度と比較的速い。近未来的な建物が並び、巨大なロボットが鎮座するワールドに到着した。

このワールドの制作者のプレイヤーが筆者たちを待っていて、説明を受ける。どうやら「ロボットでの対戦を楽しむ」という趣旨のワールドで、実際にロボットの後方まで行き、操作用のグローブのような装置に腕を突っ込むと、自分の腕の動きと目の前にいるロボットの腕の動きが連動するようになる。さながらパシフィック・リムのイェーガーを動かしているような気分だ。

移動はなく、向かい合っているロボット同士が殴り合ってHPを減らしたほうが勝ち、というシンプルなミニゲームだった。トロフィーを手に取り、ガイドと一緒に記念撮影をして次のワールドへ移動する。

次のワールドは島。海に浮かぶ島をデザインされたものだった。ゲームのような仕組みはこのワールドにはなく、キャラクターと一緒に戯れながら、のんびりとした時間を過ごした。

そして最後のワールドは動画にもあった、飛行機で戦うミニゲームのワールド。操縦席に乗り込むのではなく、目の前にあるミニチュアの飛行機を手で掴むと、飛行機が手の動きに合わせて飛ぶようになるというもの。「eスポーツのように盛り上がれるミニゲーム」とガイドが話してくれたように、2対2のチーム戦だ。円形のリングにある光る物体を掴み、反対側の敵陣にあるゴールに入れる。フィールドの複雑な構造物をくぐりぬけながら敵機を撃ち落とすというゲームプレイは、童心に帰って遊べるものだった。

印象的だった2つのポイント

今回のデモ体験を通して「Horizon」をで特に気になった2つのポイントを紹介しよう。

VRのワールドをVRで作る

1つ目は、フェイスブックが「Horizon」の機能として最も強調しているワールドの作成システム「ワールドビルダー」。筆者が今回体験したロボットのワールドと島のワールドは、いずれも「VRの中だけで作られたワールド」とのこと。ビジュアルスクリプティングを採用し、コードを使わずにミニゲームなどインタラクティブな機能を持ったワールドを作成できるという。

使える素材の追加やインポートの可能性について質問を投げかけたところ、「インポート機能はない」とのこと。造形も、円筒や球体、三角形や円錐体をVR内で作成して組み合わせるところから始まるようだ。

ロボットのミニゲームはシンプルなものの、独特な操作方法があり、こうした動きがVR内で直感的に作れてしまうことには純粋に驚く。ロモ氏は「β版を通してクリエイターがどのようなものを作るか楽しみ」と話しており、その多様性に期待している印象を受けた。

なお、VRで作ったワールドだけでなく、何らかの形で組み込みもできるようだ。現に筆者が3番目に行った飛行機のミニゲームを遊べるワールドは、Unityで制作したものを組み込んでいるとのこと。

アバターは人型

2つ目はアバターだ。フェイスブックはこれまで「人らしさ」を表現するため、アバターの表現に注力してきた。とくに「Spaces」でもこだわりがあった“表情”は、「Horizon」にも引き継がれている。音声認識によるものとは思えない非常に自然な表情が再現されていた。

フェイスブックは「Spaces」で、Facebookで自分が写っている写真からアバターを自動生成する技術などを採用している。一方、先行するソーシャルVRサービス「VRChat」のように好きなアバターを自分で制作し使用するサービスも人気を集めているのが現状だ。

Head of Product Marketing AR/VR Contentを務めるミーガン・フィッツジェラルド氏によると、「アバターは基本的には人型。性別や髪色、目の色など外見に関する部分で、多様なカスタムは可能にする」とのこと。現実の自分を表現するのと同じようにVRでも自身を表現できるにするとのことで、バリエーションはかなり増やしていく意向が示されたが、アップロードすればどんな外見にもなれる……という考え方ではないようだ。

後編では、「Horizon」を通してフェイスブックが何を実現しようとしているのか、その狙いと今後に迫る。


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