次世代通信5Gは2020年春に各キャリアから運用開始が予定しています。大容量、低遅延、多数接続といったその特長はVRやARとも相性がいいとされており、用途として注目を集めています。
ソフトバンクは8月22日から8月25日まで、さいたまスーパーアリーナで行われているバスケットボール日本代表国際試合を舞台に5Gを使った展示を展開しています。顔認証ゲートやドルビーアトモスを使った臨場感戦などと並んで大々的に展示されていたのは、VRとAR。
コンコースの特設会場では来場者がVR/ARと5Gを使った観戦を体験できたほか、試合が行われているアリーナ内の観客席でも抽選で選ばれた観客がVRとARを使ったリアルタイムの観戦を楽しみました。
VRとAR、家での観戦をさらに面白いものにするためには?
コンコースの特別コーナーでは、ソフトバンクが提供するスポーツ観戦プラットフォーム「LiVR」の今後の方向性が示されていました。
LiVRはスマートフォン向けに展開されています。しかし、会場に置かれていたのは一体型VRヘッドセットのOculus Quest(オキュラス クエスト)でした。
試合の様子をコートに最も近い3箇所の場所から選んで見ることができる点は従来版と同じですが、周りを見るとアバターが見え、声が聴こえます。Oculus Questは手を動かすことができるため、VRで話すだけでなく手を振ることもできました。同じさいたまスーパーアリーナだけでなく、六本木にあるサテライト会場からアクセスしている人もいて、「隣に並んで一緒に試合を見ている感覚」は強いものになります。
一方、ARは国内未発売のMRデバイス「nreal light」を使った2つのデモを展示。担当者が手に持っていたデバイスでは、先ほどのVRと同じアバターで同じ部屋にいる状態での観戦ができました。nreal lightは輝度が高く、ARでありながらアバターが見えるので、まるでVRのような体験ができます。「お客様にはVRでは周りが見えないことで不安に感じている方も多い」ことから、試しに開発をしてみたようです。
もう1つ、机の上にバスケットボールコートをARで表示し、ミニチュアサイズの選手たちが駆け回る様子を見るものも展示されていました。
VR/AR以外にも、自分の好きな視点から見ることのできる自由視点映像や見たい選手の動きだけを追う映像、スタッツがリアルタイムに表示されていく映像などが展示されていました。
今回はVR/ARも含めて全て独立した展示でしたが、全てが統合されて自由に切り替えたり、見たいものを画面の横に出したりできるようになると家での観戦はさらに面白くなっていくでしょう。
なお、nreal lightは2020年春の発売を目指して開発が進められているMRデバイスです。日本国内ではKDDIが提携を発表していますが、ソフトバンクからは発表されていません。「現時点では何もお答えできない」とのことですが、ソフトバンクとの提携も近いうちに明かされるのかもしれません。
観客席でVR/AR、本命はARか?
試合が始まると、抽選で選ばれた観客がARとVRでのリアルタイム観戦を体験。これまでにない体験に歓声が上がっていました。
選手紹介で一人ひとりの名前が読み上げられるたびに、そして点が入るたびに大歓声があがる、そんな会場の雰囲気をそのままに体験するのであれば、まさに拡張体験ができるARには期待が寄せられています。
(ARグラスnreal lightを使った観戦体験。観客の目には上方に動画が見えている)
(VRデバイスOculus Questを使った観戦体験。コートのそばにある複数の視点を選んで、間近で試合を見ることができる)
ソフトバンクは今回の5Gの展示を通して「ワクワクしていただきたい」とのこと。先日フジロックフェスで5Gを使った中継などを展示したことと併せて、音楽とスポーツという2つのライブエンターテイメントの楽しみ方を提示。「5Gにより臨場感のある楽しみ方がある、という期待感を醸成していきたい」と語っていました。
VRやARはデバイスもメーカー各社がしのぎを削る過渡期です。5Gの利用との組み合わせによる普及の後押しにも期待したいところです。