MoguLiveでは、VTuberデビューを目指す方に向けたオーディション情報やアバターツール紹介などを日々発信しています。読者の中には、そういった記事をきっかけにVTuber活動に興味を持ってくださる方も少なくないようです。
本記事では、現役でVTuberとして活動している筆者(佐藤ホームズ)の視点から、「そもそもどんな仕事があるのか」「どうやって収益を獲得しているのか」について解説します。
VTuberの仕事とは?
VTuberの活動内容は千差万別ですが、活動の主軸に据える方が最も多いのは、YouTubeでの配信・動画投稿です。ゲーム実況、雑談、歌ってみた、ASMR、解説、エンタメ企画などジャンルは様々です。
音楽活動を主眼とするVTuberであれば、オリジナル楽曲や「歌ってみた」の発表、ライブイベントへの出演を中心に行います。また、イラスト・3Dモデル・Live2Dモデルなどの制作を行うVTuberも存在します。
ゲーム実況を中心としたVTuberがオリジナル楽曲をリリースする、バーチャルシンガーとして活動する方が配信を行うといったように、多角的に活動するVTuberは珍しくありません。特定のジャンルに縛られず、柔軟な考え方で活動や表現を行えることもVTuberのメリットの1つでしょう。
VTuber活動で収益を出すには?
VTuber活動を通して収益を出す方法について、主なものを紹介していきます。
1.YouTube
YouTubeで収益を得る場合、「YouTubeパートナープログラム」に参加し、利用資格を満たす必要があります。条件は以下の通りです。
①すべてのYouTubeのチャンネル収益化ポリシーを遵守している。
②YouTubeパートナープログラムを利用可能な国や地域に居住している。
③チャンネルに有効なコミュニティガイドラインの違反警告がない。
④有効な公開動画の総再生時間が直近の12か月間で4,000時間以上である。
⑤チャンネル登録者数が1,000人以上である。
⑥リンクされているAdSenseアカウントを持っている。
これらを満たした上で審査を受け、参加が承認されると、晴れて収益化が有効となります。特に積極的に達成する必要があるのは④と⑤で、YouTubeによる収益獲得を目指すのであれば「直近12か月間の総再生時間4,000時間以上」と「チャンネル登録者数1,000人以上」は、1つの分かりやすい目標となります。
①のチャンネル収益化ポリシーには著作権やYouTubeの利用規約なども含まれており、YouTubeで活動するにあたって1度は目を通しておきたい所です。
③のコミュニティガイドラインに関しても、自身が違反警告を受けないか、常に客観視しながら配信・動画投稿を行っていく必要があります。
また、6月上旬にはYouTubeの「子どもの安全に関するポリシー」が改訂され、ASMRに関する文章が明記されました。YouTubeのガイドライン・規約の変更・改訂についての情報収集を日頃から行っておくと、自身のコンテンツをより安全に視聴者に届けやすくなるでしょう。
YouTubeでは大きく分けて「広告収益」、「YouTube Premiumユーザーのコンテンツ視聴」、「スーパーチャット・スーパーサンクス機能」、「メンバーシップ機能」、「YouTubeショートファンド」の5つから収益を獲得できます。
配信・動画に設定を行うことで、広告収益が得られます。通常の動画は冒頭と最後にのみ広告が表示されますが、8分以上の動画には途中(ミッドロール)にも表示できます。
YouTube Premiumユーザーには動画広告が表示されませんが、その視聴時間に基づいてクリエイターに収益が分配される仕組みとなっています。
スーパーチャットは配信のチャットメッセージを金額に応じて目立たせる機能で、VTuberへの応援やお祝いの意味でよく購入されます。スーパーステッカーは動く絵文字を表示するもので、主な使われ方としてはスーパーチャットとほぼ同様です。
スーパーサンクスは動画へのコメントを目立たせる「動画版スーパーチャット」とも言える機能です。2022年に多くのユーザーに実装され、動画投稿を中心に活動するVTuberも、スーパーチャットのように応援・お祝いを受けやすくなりました。
メンバーシップは、ユーザーがチャンネルに月額料金を支払うことで様々な特典を受けられる機能です。特典は主にユーザー名に付くチャンネルバッジやチャットに使用できるカスタム絵文字、メンバーシップ限定の配信・動画・コミュニティ投稿などが用意されています。
特典を何にするかはチャンネルによって様々で、月額料金は90円~6,000円の間で自由に設定できます。
YouTubeショートファンドは、ショート動画を投稿しているクリエイターを対象とした基金です。ショート動画では広告収益を得られませんが、過去180日間に対象となるショート動画を1本以上はアップロードしているクリエイター数千名に、毎月報奨金が分配されます。報奨金の分配基準や報奨金の目安は明かされていませんが、YouTubeパートナープログラムに参加していなくてもショートファンドから報奨金を受け取れる場合があるそうです。
2.YouTube以外のプラットフォーム
YouTube以外にも、収益を得られるプラットフォームが多数あります。
ニコニコ動画では「クリエイター奨励プログラム」により、niconicoに投稿された動画、生放送、ゲーム、静止画などを登録してスコアを獲得できます。スコアは現金、Amazonギフト券、ニコニコポイントの3種類に交換可能です。注意点としては、交換されたスコアは雑所得に該当する点です。1年間の雑所得の合計金額が20万円を超える場合は、確定申告が必要となります。
Twitchの収益化手段はYouTubeに近く、月額料金を支払ってストリーマーをサポートする「サブスク」、視聴者がストリーマーへのサポートをチャットで示す際に購入される「ビッツ」、配信に挿入される広告から収益を得られます。
「サブスク」ではチャットバッジ、限定スタンプなどのストリーマーが設定した特典が受けられます。また、Amazon Primeに加入している視聴者は、1か月に1人まで無料でサブスクを行えます。
SHOWROOMでは視聴者のギフティング・コメントによって配信者にポイントが付与され、ポイントの一部が配信者に収益として還元されます。コメントによるポイント付与には配信ごとに上限が決まっており、ポイント獲得はギフティングが基本となります。
他にもbilibiliやIRIAM、17LIVE、ツイキャス、REALITYなどのプラットフォームで活動し、収益を得ているVTuberも存在します。
3.ファンコミュニティサービス
pixivFANBOXやCi-en、faniconといった定額のファンコミュニティサービスを活用し、ファンからの支援という形で収益を得られます。YouTubeのメンバーシップやTwitchのサブスクはそれぞれの利用資格を満たす必要がありますが、ファンコミュニティサービスは開設のハードルが低いことが大きな利点です。
支援者への特典は限定記事、ボイス、漫画、イラスト、壁紙など、VTuberによって様々です。
メンバーシップやサブスクと同様、毎月安定して見込める収入は単純な金額以上の意味を持ちます。活動ペースや提供できるコンテンツを考えた上で提供すると良いでしょう。
4.グッズ販売・楽曲配信
自身のグッズを販売することで収益を得ます。アクリルスタンド・缶バッジ・Tシャツといったアイテムからシチュエーションボイス・ASMRといった音声まで、さまざまなバリエーションがあります。ショップ作成サービスはBOOTHがよく利用されており、画像1枚からアクリルフィギュアなどのグッズを制作できるサービス「pixivFACTORY」も活用されています。
音楽活動を中心としたVTuberであれば、各種音楽配信サービスでのオリジナル楽曲の配信、CDの販売なども収入源の1つとなります。
5.企業案件
企業案件とは、企業からの依頼で商品やサービスをPRする仕事を指します。VTuberとしての影響力を買われて商品を宣伝し、その対価として報酬をもらうのが大まかな流れです。
企業案件で何を宣伝してほしいと頼まれるかは様々ですが、新作スマホゲームの紹介や新しいエナジードリンクのタイアップなど、新商品を打ち出す際によく依頼される傾向にあります。
「企業案件」という響きに憧れを持つVTuberも多いかと思いますが、企業案件を受ける際に注意したい点は多くあります。
企業案件の依頼が来たら、まず依頼元の企業が信頼できるかどうかを調べます。できる範囲で社名を検索し、どんなことをしている会社なのか、公式サイトに怪しい点はないか、そもそも実在しているのかあたりは最低限把握しておきたいところです。依頼内容からこれらの情報にすぐ辿り着けなかった場合、警戒が必要と言えます。
次に、報酬が妥当か確認します。「活動の実績になるから」「箔がつくから」と、無報酬、あるいは労力に対して少額の報酬を提示されている場合も少なくありません。
また報酬について明確に提示されていない場合は返事を急がず、報酬や依頼の詳細についての連絡を求めましょう。報酬が少ないから断るべきというわけではなく、自分が納得できる報酬であるかどうかが重要です。
PRを依頼された商品やサービスが、自身の活動イメージに合うかどうかも大事なポイントです。せっかく受けた企業案件が普段の視聴者のニーズと合致せず、VTuberとしてのブランディングを考えると長期的にはデメリットになることも大いにあり得ます。
報酬のみならず、自分がやりたいと思うかどうか、視聴者にPRできる依頼内容であるかなども考慮すると、より納得のいく結果を出しやすいでしょう。
6.自らのスキルを活かす
これまで紹介してきた方法だけでなく、自主制作ゲームの販売、楽曲の制作・MIXや動画編集の依頼、イラスト、3Dモデル、Live2Dモデルの制作依頼、TRPGシナリオの販売など、自身のスキルを活かして収益を得る方法は多数あります。
イラストであれば直接依頼を受けたり、Skebといったサービスで依頼を受ける形があります。3Dモデル・Live2Dモデルの制作は需要が高く、企業からの依頼を受けるケースも存在します。YouTubeでイラスト講座を行ったり、制作過程を紹介したりと、配信や動画投稿と同時並行で展開すると、より効果的です。
VTuber活動を継続するために
これまでVTuber活動で収益を得る方法について解説してきましたが、仕事としてのVTuberに決まった収益形態はありません。何を主軸にするか、どのような活動を行うかで収益を得るポイントは変わってきます。
継続して活動するという点で見れば、YouTubeを中心とした配信プラットフォームでの活動とファンコミュニティサービスで安定した収益源を作りつつ、定期的にグッズ販売や企業案件、イベント出演を行う形が考えられます。しかしこれも一例に過ぎず、VTuberによって最適解は異なります。
収益形態と同様、VTuber活動には未だ決まったノウハウが存在せず、VTuber自身が常に試行錯誤し、より良い形を模索し続けることが求められます。VTuberやYouTuberを研究する、ファンが喜ぶコンテンツを分析する、配信サムネイルや配信画面の質を向上させる、SNSを活用するなど、試行錯誤には明確な終わりがありません。
VTuber活動を続けるにあたって、特に大切なのはメンタル面です。活動を模索する中で疲弊し、体調を崩す方は残念ながら少なくありません。体調管理も活動の一環と考えることが大切です。
メンタル面を健康に保つ上で大切なのは、VTuber活動における目標の設定です。まず、活動における大目標を決定します。できれば「東京ドームでライブをする」「好きなゲーム企業とタイアップする」といった、数字以外の明確な目標が望ましいです。チャンネル登録者数やフォロワー数といった数字を目標にすると、自分がどこに向かっているのか曖昧になりやすく、無用な焦りを招きます。
大目標を設定した後は、これに辿り着くためには何が必要かを考え、複数の中目標・小目標を設定します。チャンネル登録者数などの数字は、この中目標・小目標で使用するとより有効です。
時には、自分より後に活動を開始したVTuberが自分より早くチャンネル登録者数を伸ばす様を目撃するかもしれません。なぜそのVTuberが伸びているのか、自身の活動の参考になる部分はないかを研究すると、自分にとってプラスの形で認識しやすくなります。ショックを受けるのは自然な反応ですので、無理に目を逸らす必要も意識しすぎる必要もありません。
また、たとえ自身のファンであっても多くの人間と接するとストレスを受けやすく、仕事になったことで好きな活動への感じ方が変化することもあります。VTuber活動以外の趣味で息抜きをしたり、信頼できるVTuberの仲間を作ったりして、メンタル面のケアを意識的に行うと良いでしょう。趣味はVTuber活動への良い刺激になりますし、信頼できる仲間は活動のモチベーション向上にも繋がります。
個人的に、VTuberを仕事にするために必要な資質は「自ら試行錯誤する力」だと考えています。収益形態、活動内容、メンタル面、そして自分自身の楽しさのバランスをうまく取り、自分にとって一番良い活動の形を試行錯誤することで、より有意義にVTuber活動を続けられるのではないかと思います。
VTuber活動は頻度を調節すれば、学業や他の仕事と兼業することも十分可能です。自分の望ましい形で、楽しく続けることが何よりも大切です。この記事が、楽しく続けられるVTuber活動の一助になれば幸いです。