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VTuber 2021.05.27

VTuber活用事例まとめ ビジネス上の注意点や具体例を紹介

2017年末に起こった大ブーム以降、エンタメ業界で今なお大きな話題を呼び続けているVTuber。業界の発展に伴い、企業が自社のプロモーションにVTuberを起用する事例も増えています。

本記事ではそのようなビジネスにおけるVTuber活用に着目し、具体的な事例や運用上の注意点について解説を行います。

1.VTuberとは?

そもそもVTuberとは「バーチャルYouTuber」という言葉の略称です。2Dや3Dのアバターを用いて動画投稿や配信を行っています。2016年末のキズナアイのデビューに始まり、現在までに1万人を超える個性豊かなVTuberがデビューしています。

ゲーム配信等のイメージが強いVTuberですが、実際にはその活躍の仕方は広汎です。専門学校で講師として登壇したり、VRサービス内で参加者とコミュニケーションをとったり、地方自治体のPR大使を担当したりと、各々のスキルや趣向を活かした活動が多く見られます。

2.VTuberを活用するメリット/デメリット

VTuberの起用は、リアルのインフルエンサーを使う場合と比較してどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか?

メリットの1つはビジュアルが親しみやすく目を引くこと。タレントでありながら「生身の人間」ではなく「キャラクターIP」に近いという性質により、多くの人が親しみやすい印象を与えられます。例えば、千葉大学教育学部附属小学校の公開授業(2021年3月)にVTuberが登場したことで、生徒の関心度が高くなり、授業がスムーズに進んだというケースがありました。

また、動画等の様々なコンテンツ制作との相性の良さから幅の広い運用も期待できます。VRChatclusterなど、バーチャル空間を提供する様々なサービスを用いれば、遠隔でもファンとの壁のない交流が可能です。

ファン層についても、インフルエンサーとなっているVTuberは熱心なファンが多い傾向にあります。単純な費用対効果は勿論、地域に遠方からのファンが訪れるなどの効果が現れることも。例として、宮城県名取市の献血推進協議会が名取さなを起用したキャンペーンでは、地域を超えて日本各地から多くの献血者が集まったことが話題となりました。(朝日新聞:「俺の血全部抜いてくれ」若者が献血に宮城へ 目的は…

デメリットとしては、VTuber特有の技術的な準備が必要となることが挙げられます。ノウハウと専門的なスタッフの調達ないし依頼が必要で、本格的なものほど運用上の負担がやや高めです。また、2017年頃から本格始動した分野の活動であるため、費用感やスケジュール感がやや掴みにくいということも考えられます。ただし、コストは技術の発展により、今後下がる可能性もあります。

一般的なメリットとして「スキャンダルが無い」ということが挙げられる場合があるものの、実際には人の手が関わっている以上、炎上のリスクが無くなる訳ではありません。リアルのインフルエンサーと比べると、タレントのプライベート情報漏洩がキャラクターIPのブランドに直接影響してしまうため、小さなトラブルでも大きなリスクを負ってしまう場合があります。そのため、企業運営側には高いレベルのネットリテラシーと危機管理能力が求められると言えます。

さらに複数のタレントを所属させる場合は、そのマネジメントコストも考慮する必要があります。タレントの振る舞いによっては”音楽が得意なVTuberとしてデビューしたが、途中でゲーム実況が伸びたため活動内容が変化した”など、長期的な事業計画が揺らぐ可能性もあるため、不確定性によるリスクも十分に考慮することが求められると言えるでしょう。

3.VTuberの具体的なビジネス活用事例紹介

まずは既存VTuberをインフルエンサーとしてタイアップする事例をピックアップしていきます。

2021年2月、「e-maのど飴」などを販売する味覚糖は、キャンペーン「e-ma e-ma project」においてアイドルとともに多数VTuberを起用、プレゼントキャンペーンや様々なコラボ動画投稿を行いました。中でも参加VTuberがそれぞれ投稿したテーマソング「e-ma e-ma」の”踊ってみた動画”は好評で、キャンペーンに参加していないVTuberもチャレンジ動画を投稿するといった波及効果が見られました。

https://www.youtube.com/watch?v=MOHpvRyC_ag

大手コンビニエンスストアの「LAWSON(ローソン)」や「FamilyMart(ファミリーマート)」も、VTuber事務所とのコラボ賞品やキャンペーンを展開しています。「ローソン」では、所属VTuberの店内放送やコラボデザイングッズが登場。2021年3月には「ファミリーマート」で、バーチャルライバーグループ「にじさんじ」ライバーのデザインされた飲料なども販売されています。

日清食品はVTuberの事業活用に積極的で、2019年6月には、VTuber輝夜月を「日清焼そば U.F.O.」に搭乗させて宇宙へと打ち上げるというプロジェクトを実施。2020年10月には「日清カレーメシ」とホロライブ所属VTuberのコラボキャンペーンが展開。限定ユニットによるMVが発表されています。

https://www.youtube.com/watch?v=aphqCBRrUNg

また2020年11月に配信型ライブハウスをオープン。VTuberのオンラインライブ会場としても活用されています。

大塚製薬はポカリスエットのアンバサダーとして3名のVOCALOIDと3名のVTuberを起用。文化プログラム「beyond2020」の一環として発表された企画であり、水分補給や熱中症対策に関する動画等での発信を行っています。

お酒の通販サイト「KURAND(クランド)」は、2021年4月VTuberの配信イベント「#Vノ酒花見宴会」を実施。イベントに合わせて、VTuberとコラボしたオリジナルラベルのお酒を販売するなどの動きを見せました。また酒蔵支援企画「VTuber酒蔵応援プロジェクト」や「VTuberコラボ酒ガチャ」などを積極的に行っています。

担当者によれば、「販売数も予想を上回り、VTuberと日本酒の親和性の高さを感じました」とのことです。

グッズでのコラボ例としては、eStreamがこれまで2度にわたり販売したカード付きチップス「VTuberチップス」が有名です。ランダム性と動画投稿文化の相性が良く、発売時には多くのVTuberによる開封動画が公開されました。

アニメイト渋谷店はバーチャルライブ配信アプリ「IRIAM」とのコラボとして6名のバーチャルライバーを採用し、2日間にわたり店頭での店員業務を実施しました。こうした”バーチャル接客”の試みはその話題性のみならず、遠隔地からの接客が可能であるというVTuberの利点も活かせる施策であると言えます。

スマホゲームアプリを幅広く展開している株式会社Yostarは、自社開発のゲーム内にVTuberをキャラクターとして実装するといった企画を行い、大きな注目を集めました。

担当者は、この盛り上がりを受けて「コラボシナリオやゲーム内の演出含め、弊社内のVTuberが大好きなスタッフが、どういった内容であればファンやプレイヤーの皆さんが納得して喜んでくれるコラボになるのか、という点を真剣に考えてコンテンツの制作を行っていたため、その結果をご評価頂けたのではないかと考えています」とコメントしています。

同社は、JR東日本の社内で放映されている番組「CREATIVE TRAIN」も制作。自社キャラクターをモーションキャプチャでVTuber風に動かし、番組アナウンサーとして起用しています。

また、これまで紹介した事例には、会社や事務所に所属しているいわゆる企業所属のVTuberだけでなく、所属団体を持たない、個人VTuberも盛んに起用されていることも付記しておきます。

既存のVTuberだけでなく、企業が独自にVTuberをデビューさせる事例も存在します。有名な例はサントリーからデビューした燦鳥ノム。プロモーションを交えた動画投稿から音楽活動・ライブ出演に至るまで幅広く活動し、業界の他のVTuberとの交流も積極的に行っています。

企業とはやや異なりますが、地域自治体がご当地PRとしてVTuberを制作する試みもいくつか行われています。茨城県からは日本初の「自治体公認VTuber」として茨ひよりが2018年に活動を開始。地域に密着した活動を行い、2019年の会見では広告換算で約2億4,000万円相当の活動実績を生み出したと報告されています。また茨城県産の商品をプロモーションする企画なども配信しています。

また中京テレビのVTuberアナウンサー大蔦エルが、名古屋青年会議所主催の「名古屋市長選挙 討論会」で司会を務めたことも話題となりました。各都道府県のPRだけでなく、公共でも活動の範囲が広がっていくと予想できます。

企業のキャラクターや有名人が”VTuber化”を行うという手法も考えられます。ゲームキャラクターがVTuberとして動画投稿を行い、ゲームのリリース時にも改めて話題となった「ウマ娘」の「ぱかチューブっ!」などがその一例と言えるでしょう。

こうしたVTuber化の試みは企業のIPだけでなく、配信者のガッチマンやイラストレーターのしぐれうい等、プロモーションに関わらず活発に行われていることでもあります。

VR業界方面では、VR機器メーカーのHTC NIPPON株式会社が、これまでに「VIVEアンバサダー」を4期にわたって募集し、多数のVTuberおよびインフルエンサーを採用。製品の情報やVRの楽しみ方を発信する役割を担い、VRとVTuberという親和性の高い2分野を結びつける試みを行っています。

PR分野によっては、バーチャルヒューマンの起用が効果的である場合も。大手家具メーカーの「IKEA」は、株式会社Awwがプロデュースするバーチャルヒューマン「imma」を利用した「IKEA原宿」のインスタレーションを展開しました。

バーチャルヒューマンはCG等で精巧に作られた架空のタレントで、他の活用方法としては、現実に存在する衣服やアイテムを持って、InstagramやTwitterなどで宣伝するといったインフルエンサー的なケースが多く見られます。

ただしこれらのタレントはVTuberと比べて技術的な構成要素も関心を寄せる層も大きく異なるため、独自にフォーカスした施策が必要となります。

4.VTuberのやり方は?

運用にあたっては、「そもそもVTuberはどのような技術を用いて動いているのか」という予備知識も必要。この項では簡単に説明を行います。

一般的に、VTuberを動かすために必要となるのは「モデル」と「トラッキングシステム」。モデルはVTuberの”見た目”といえる部分で、2Dモデルと3Dモデルに大別されます。
簡易3Dモデルの制作ソフト等もありますが、基本的にはイラストレーターや3Dモデラー等のクリエイターによって制作されます。

さらにこのモデルを動かすために必要なのが、演者の動き等の情報をモデルに反映させる「トラッキング」と呼ばれる技術。2Dならばスマホやwebカメラ等、3DならばVR機器や専用のモーショントラッキング機材を用いることが一般的です。

特に3Dはより専門的な機材・知識が要求され、運用のために継続的に技術スタッフを動員しなければならない場合もあります。

このような準備と並んで、実際にVTuber活動を行う演者も必要です。採用方法としてはオーディションや公募、スカウトを行うパターンが見られます。オーディションについては「キャラ設定を公開した後にオーディションを行う」という場合と「先に演者を決定してからそのイメージや特技に合わせたキャラを制作する」というパターンが存在します。

もちろん、これらを考える前準備として必要となるのが大元の企画です。「VTuberとしての大きな目標は何か(歌姫になる、アイドルになるなど)」、「具体的な活動形態はどうするか」、「どのようなコンテンツを提供するか」「途中目標をどのように設定するか(登録者〇〇万人突破で3D化)」など、詳細な企画をあらかじめ決定し、その方針に合わせて諸々の選択を行っていくことが肝要です。

5.VTuberを案件に起用する選定基準

実際にインフルエンサーとしてVTuberを起用する場合、どのような点が選定基準として考えられるでしょうか?

まず挙がるであろう基準の一つに使用プラットフォームでの「登録者数」がありますが、これは必ずしも絶対的な参考にはならないことに留意が必要です。直近数ヶ月の動画再生数や配信の同時接続数など、参考に出来る数字は様々です。

また数値以外に、個々人の性質への着目も重要なポイント。「自社の取り扱うジャンルのファンであるVTuberを起用する」など、PRしたいジャンル・ターゲット層とVTuberの相性も一つの指針になります。例として、お酒のオンラインストア「KURAND」の企画「VTuber酒蔵支援プロジェクト」においては”お酒が好きなVTuber”という共通点を基にして様々なVTuberを起用し、効果が見られたとのこと。VTuber業界においてはこのように個人の活動内容にフォーカスしたプロモーション企画が多くあります。

また基礎的な点として、「明確な窓口(連絡先)が存在するか」「運営情報がはっきり明示されているか」といった点も判断材料となります。案件として行う以上、普段の言動やイメージが自社のPRに相応しいかどうかの吟味も必要です。

VTuberのビジネス活用は、Moguraにご相談を

今回の記事で紹介したようなVTuberのビジネス活用を考える際、「VTuberを自社で運営したいが、どのように企画・運営すればよいのか」「VTuberに自社製品を紹介してもらい広告効果を得たいが、数多く存在するVTuberから誰をどうアサインすればよいか」などの疑問点が出てくるかと思います。

株式会社Moguraが運営する開発・コンサルティングサービス「MoguraNEXT」では、そういったお悩みに回答するため、VTuberの専門家によるコンサルティング・ご相談も承っております。下記よりご連絡ください。

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