高所恐怖症、先端恐怖症などさまざまなものに対する恐怖を克服するために、VRが使えるかもしれません。今回はアメリカのVRメディアUploadVRに掲載されたコラムを参考に、VRによる恐怖症克服についての諸見解を紹介します。
他にも高所恐怖症への大作なども考えられます。ロッククライミングを疑似体験させてくれるOculus Rift向けのゲーム『The Climb』をプレイした後は、はしごに登ったり現実世界で高いところに登る恐怖が少し薄れるかもしれません。
VR上で体験を重ねると、現実世界での恐怖症や不安を徐々に和らげていけるのではないかと考えているVRコンテンツの開発者がいます。
IgnisVRのHTC Vive向けソフト『Arachnophobia』やMimerseのGear VR向けソフト『ITSY』などは、このようなコンセプトのもとに開発されたものです。心身の健康や心理学に焦点を当てて開発されたこれらのアプリケーションは、たとえば蜘蛛など、ユーザーが恐怖を抱いている対象物がユーザーと同じ空間にあるように錯覚させ、慣れ、恐怖の克服を促す”行動治療”というセラピー方法を参考にしています。
『Arachnophobia』はユーザーの、蜘蛛への恐怖を打ち消すことを目的としているアプリケーションです。コンテンツ内でユーザーはテーブルの前に座らされ、ユーザーのストレス度に合わせてテーブル上に現れる蜘蛛の数が変化します。
IgnisVRの共同開発者で、心理学を専攻する大学生でもあるマルチン・セガー氏は「行動療法の原理を一般向けに説明し、また心理学の分野でもVRが活用できることを証明するために『Arachnophobia』を開発した」と話しています。また「恐怖症に対するセラピーはセラピストの指導のもとに行われねばなりません。しかしVRコンテンツの開発者たちはもちろんセラピストでもなければ、治療に関する専門知識も持ち合わせていません。だからといって、VRの持つ可能性を見過ごすわけにはいかないのです。高品質で、科学的にも有効と証明されるようなVRコンテンツを製作する必要があると考えています」とも話しています。
臨床心理学者のウェレネッタ・クローフォード・マン氏も、セガー氏の意見に同意しています。
「行動療法は、特定のものに対する恐怖症の克服に効果的な方法です。心理学者の手を借りて、恐怖症克服に有効と思われるシナリオをいくつかVRで再現することができるのならば『Arachnophobia』は心理学的に見ても効果のあるアプリケーションと言えるでしょう」
とは言えこのように”恐怖を意図的に与える”VRコンテンツに関しては健康や法律、モラルの問題などさまざまな分野からまだまだ議論の余地がありそうです。
恐怖症の克服を促すVRコンテンツを健康面から見てマン氏は、恐怖症を抱えるひとたちがセラピー中に興奮状態に陥ってしまうケースを想定しておく必要があると述べています。また専門家による適切な指導があれば、法律的にも問題はないだろうとの見解も示しています。
是非も議論を呼びつつ、効果には未知の部分も多いですが、今後もこうした「恐怖症や不安を克服する」ことを目的と謳ったVRコンテンツは増えていくと思われます。
(参考)
http://uploadvr.com/virtual-reality-helping-people-overcome-fears-phobias/
Virtual reality could help people overcome their fears and phobias – UPLOAD
※米UploadVRはMogura VRとパートナーシップを結んでいます