ディズニー・アニメーションの表現力と最新のVRテクノロジーの融合
この作品は、ディズニー・アニメーションが長編映画の1つをインスパイアした初のVR映画です。ディズニーのVR映画「Cycles」を制作したJeff Gipson氏が監督を務め「アナと雪の女王2」の世界を舞台にしています。
アニメーションの表現力と最新のVRテクノロジーを融合した、ディズニーならではの作品に仕上がっています。また声優に「アナと雪の女王2」のエルサとアナの母親役であり、アルデール王国の王妃役を務めたEvan Rachel Woodを起用しているのですが、今回のVR映画の中でも、2人の子供を持つ優しい母親なのが、なかなかニクい配役です。
ストーリーはアレンデール王国のある山小屋の中から始まります。母親が子供たちを寝かせしつけるために国にまつわる神話を話していると、突然山小屋から”魔法の森”に引き込まれてしまうことに。魔法の森では風の精霊ゲイル、火の精霊ブルーニー、水の精霊ノック、地の精霊アースジャイアントが現れます。この4つの精霊によって保たれていた世界のバランスが、人間が誕生することで崩れてしまい……というお話です。
オススメのポイント
1. 美しい映像世界
「観客を中心にした視覚的な詩」とJeff Gipson監督が言う通り、映像で「アナと雪の女王2」の世界観を存分に物語っています。まるで360度全体に描かれた影絵の世界に入っているような感覚の映像体験です。
それぞれの精霊が現れるたびに空間全体の色が変わっていき、4つの精霊によって調和が取れると、様々な色が混ざり合って美しい世界が空間全体に広がります。まるでミッシェル・オスロ監督の「夜のとばりの物語 -醒めない夢-」をVR化したような世界が表現されています。
また独自の視点誘導の方法も興味深いです。精霊や生き物の動きによって、視点を動かすのですが、その動きと別の方向を見ようとすると空間全体が薄ら暗くなります。そうすることで、観客に見て欲しい方向を優しく示してくれています。
人間が誕生し世界のバランスが崩れてしまうシーンでは、カラフルな世界から一変して、色の無い世界になってしまいます。少しショッキングなシーンですが、色の無い世界まで美しいと感じさせてしまうJeff Gipson監督の持っている美意識が垣間見られました。
2. 音楽で描くストーリー
今回の作品では映像と同じくらい音楽も重要な要素になっています。映像と音楽だけで物語を描くと言う意味では、ディズニー作品の中でも有名な「ファンタジア」を思い起こさせます。「ファンタジア」のように精霊ごとに音楽にも世界観があり、シーンによって音楽全体の雰囲気が変わります。
キャラクター、空間全体の視覚や色が変わるのと同時に音楽も変化していくため、どっぷりと作品の世界観に没入できます。
3. さすがディズニーブランドの実力
映画が始まる前にVR空間内のスクリーンにお馴染みの「蒸気船ウィリー」のミッキーの口笛が流れると一気に期待感は高まります。
ディズニー・アニメーションの高い表現力や音響技術、そして新しいテクノロジーへの技術力がよく分かる作品になっていたと思います。「さすがディズニー! 」と言いたくなるハイレベルなVR映画作品です。
VRの出現によって多くの人が憧れるディズニー映画の世界に没入できることは本当に素晴らしいことです。最後にプロデューサーのNick Russell氏の言葉で締めましょう。「この体験はVRでのストーリーテリングにとって非常に明るい未来があることを示しています」
作品データ
タイトル |
Myth: A Frozen Tale VR |
ジャンル |
VRアニメーション |
Production |
Walt Disney Animation Studios |
公開 |
2020年 |
本編尺 |
8分10秒 |
製作国 |
アメリカ |
体験可能な場所 |
オンライン:Oculus Store |
Trailer
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