VRで重要な「一人称と三人称の間」とは?最前線のプレイヤーが議論

11月11日、一般社団法人VRコンソーシアム(以下、VRC)は「VRCカンファレンス2017  ファイナル」を行いました。イベント名の通り、本イベントは3年目の開催で今回が最終回となりました。「VRCカンファレンス」は終了となりますが、「VRクリエイティブアワード」は、今後も続けていくことが、VRC代表理事の藤井直敬氏から説明されました。

本記事では、「VRCカンファレンス2017 ファイナル」で行われたセッション「ゲーム・エンタメのこれから」の中から、VRにおけるルール設計やストーリーテリングなどについて語られた内容をレポートします。

まずは「ゲーム・エンタメのこれから」の登壇者4名について。ファシリテーターは、VR作品『Rez Infinite』で数々のアワードを獲得したことでも知られる、著名なゲームクリエイターの水口哲也氏です。

『Rez Infinite』プロモーションムービー

https://www.youtube.com/watch?v=c7zjVA6KsmY

他の登壇者は、人気VR施設の『VR ZONE』を展開する株式会社バンダイナムコエンターテインメントのコヤ所長(小山順一朗氏)とタミヤ室長(田宮幸春氏)、大手ソーシャルゲーム会社でいち早くVR分野に進出した株式会社gumiの國光宏尚代表取締役社長の3名です。

VR ZONEプロモーションムービー

https://www.youtube.com/watch?v=vUzSYzg8llY

VRに“クリア”と“攻略”は必要か

ゲームクリエーターである水口氏がファシリテーターのためか、セッションはVRにおけるストーリーテリングや従来のゲームとの違いなど、クリエイティブの話題が中心となりました。

コヤ所長は、90年代からゲーム開発を行なってきた豊富な経験から「(ゲームの)消費者がゲームに何を期待しているかというと“攻略”と“クリア”」「ゲームは“攻略”と“クリア”の世界」と持論を展開。そして開発者もゲームを作ろうとすると“攻略”と“クリア”のロジックに陥ってしまいやすいことを説明し、VR開発においてはその指向性が邪魔になる可能性を指摘しました。

コヤ所長は「VRは“現実の代替”」として、従来のゲームとは違う新しいエンターティンメントという前提にVR開発を進めたとのこと。この“現実の代替”ということを考えた時、従来のゲームのルールを、VRにも使ってしまうのは「もったいない」と語ったのは、タミヤ室長です。

タミヤ室長は「(従来のゲームには)インプットとアウトプットの手段に制限がかけられている。そのための“お約束”がある」と説明。さらに「面白い状態を作るためにゲームの“ルール”があり、“クリア”するという目標が立てられている。その“ルール”と“クリア”で(ゲームは)楽しさを生み出していることが多いと感じている」と話しました。

タミヤ室長はVRの大きな特徴を「自由に行動できるインターフェイス」と指摘。VRの持つ自由さを活かそうと考えた時に、従来のゲームのルールを適用するのではなく、現実と同じように物理法則的なルールを使ったり、キャラクターのいる環境がプレイ行動に影響を与えるようにすることで「ゲームではない新しいエンターティンメントが見つかると思った」と述べました。

一人称でもなく、三人称でもないVRのストーリーテリング

VRについて水口氏は、「フレームから解放されたという大きいジャンプ」とVRの制約の無さ・自由さに魅力を感じたと話し、従来のゲームでは不可能だった物語表現の可能性を見出していることを挙げました。

向かって左から水口氏、國光氏、コヤ所長、タミヤ室長。

ゲームは、一人称の体験の再設計」であり「映画は、誰だか分からない三人称の視点。(視聴者は)演出家や監督の視点で物語を見ている」と水口氏。「最初の頃のゲームは、生理的には気持ち良いけど、泣くことはできない。解像度が上がったことにより、イメージをモーフィングすることで、(ゲームでも)ストーリーテリングをできるようになった」と解像度の進化により映画的な物語をゲームでも演出できるようになったことを説明しました。そしてVRには、ゲームにも映画にもない「一人称と三人称の間がある」として、ストーリーテリングにおける未開の領域がある可能性を示しました。この「一人称と三人称の間」の例として『Rez Infinite』を挙げました。

『Rez Infinite』は、一人称視点で進めることも可能な体験が設計されていますが、開発課程で検証を重ねた結果「キャラクターがいないと(プレーヤーは)不安な気持ちになる」ことが判明し、プレイするキャラクターを画面に表示する三人称視点の設計にしたことを明かしました。

水口氏が指摘したVRにおける“一人称と三人称の間”についてタミヤ室長も「根本的に発明していかなければいけない領域がVRにはある」と同意を示しました。そして従来のストーリーテリングを「誰かの感情やお話を伝えるという文脈の中で行われる」と説明した上で、「VRは自分が体験するので“伝える”とは違う状態が発生する」と指摘し、VRでは新しいストーリーテリングの形に挑戦していく必要性があることを示しました。

一般家庭用でVRが普及するには

國光氏も「(大作ではない)小さい作品でも良いので、開発者の意図を反映した作品を世に出し、フィードバックを繰り返していくことが大切」と新しい挑戦が必要なことを強調しました。この國光氏の発言に対して、創業者のいるスタートアップならではの姿勢だ、と登壇者からは羨望の声が漏れる事態に。

新しい挑戦という意味では、アメリカのサンダンス映画祭のようにVR作品を積極的に出展・評価する場を作ることで、ストーリーテリングの可能性を広げることの重要性も挙げられました。コヤ所長は「(VRには)感情や感動を激しく揺さぶる力があると感じている。(プレーヤーに)ストーリーに感情移入をさせて、感動させるための時間を圧縮できる可能性がある」「例えば5分で泣ける」と、映画に比べて短い時間での物語の形を示しました。

また、國光氏は家庭用としてVRが普及するためには、セットアップの手軽さと価格がキーになると指摘。コヤ所長は、ソーシャルネットワーキングのような形のVRは家庭用のヘッドマウントディスプレイでも可能性があるとしながらも、ヘッドマウントディスプレイからの映像出力だけでは“現実の代替”としてのエンターティンメントを創るのは難しいとしました。さらにコヤ所長は、例えば振動や触覚、匂い、音、熱、風などの様々な情報をヘッドマウントディスプレイの映像と統合することで“現実の代替”が成立するのでは、と考えを示しました。そして『VR ZONE』は「“実験”をしている最中」と明かし、VRで新しいエンターティンメントを創るという『VR ZONE』のミッションを語りました。

VRCのYouTubeチャンネルで講演・セッションがアーカイブ公開中

本セッションを含めた全てのセッション、講演、挨拶などはVRCのYouTubeチャンネルに動画が公開されています。VRを含めたテクノロジーと未来の社会の在り方について、示唆に富む内容となっています。

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この記事を書いた人

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