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活用事例 2017.06.20

PSVRの相次ぐ新作タイトル発表、これからの展開は?SIE吉田修平氏に聞いた

日本では品切れの続く「PlayStation VR」(PSVR)ですが、先日開催されたE3では新作タイトルの発表が相次ぎました。今回はソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏に新作や今後のPSVRの動向について話を聴きました。

――今回PSVRの新作が発表されましたが、日本の開発チームのタイトルは多くはなかった印象を受けました。海外が先行しているのでしょうか?

吉田:
元々ゲーム制作にプロフェッショナルで取り組み、多くの投資を継続的に行っていくという点では欧米が先に進んでいました。そのため、タイトルは常にたくさん出てきています。一方で、日本でも今ではベンチャーサポートの仕組みは増えてきている感触があります。

――日本の市場も段々とできているのを感じてはいます。

吉田:
去年と比べると良くなっていますよね。

――今回、いわゆる大作ゲームに関係するものが『Skyrim』と『FF15』ということで、去年と比べても少ないと感じます。今後、PS VR向けに大作・AAAタイトルは発表されるのでしょうか

吉田:
私は去年のほうが多かったという印象はないですね。SIE自身が作ってるタイトルも規模を徐々に大きくしています。先月北米で発売した『Farpoint』というタイトルは、日本では6月22日発売ですけれど、非常に良い評判を頂いています。市場の普及と同じく、ゲーム体験であればその体験の深さですとか、開発の規模も徐々に大きくしています。

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――5月に行われたソニーの経営方針説明会では、平井社長から「VRにグループ一丸で取り組む」という話がありました。ゲーム以外ではどんなコンテンツを増やす予定でしょうか?

吉田:
ソニー・ピクチャーズエンタテインメントやソニー・ミュージックエンタテインメントの方々と協力してコンテンツ制作に取り組んでいまして、最近出たコンテンツとしては「The Chainsmokers」というアーティストのVRコンテンツがあります。単なるミュージックビデオではなく、インタラクティブなゲーム技術で作られていて楽しい体験ができます。
このように、ゲームクリエイターではないエンタテインメント分野の方々からも、「新しい体験を作りたい」と仰っていただいています。先日は米テレビシリーズのブレイキング・バッドのクリエイターの方もVRに取り組んでいるという発表もありました。
音楽のアーティストに関しても新しいメディアであるVRをどう使うか、積極的に取り組まれているので、ゲームユーザでなくても誰でも楽しめるコンテンツが増えていくと思います。

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『ブレイキング・バッド』PSVR向けにVRコンテンツ制作中

――ブレイキング・バッドは非常に好きなので、VR対応すると聞いた瞬間、すごく胸を躍らせました。

吉田:
日本でもアニメの『傷物語』をベースにしたVR作品がイベントで公開されていましたね。あれも2Dのコンテンツを生かしながらVR体験を作るという映像表現に取り組まれていて、凄く面白いですね。
現在はPS VRをユーザーさんに使っていただけている感触があり、いまコンテンツ制作に取り組まれている方も、元々がプロモーション向けや、アーケード向けであってもPS VR向けにも配信を検討いただく流れがきています。今後もPS VRで色々なコンテンツが楽しめるかと思いますね。

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――PSVRについて、今回、販売店を増やして品薄を解消されていくという発表がありました。日本国内での売れ行きは元々の予想に対して上向きなのでしょうか?

吉田:
グローバルで需要が供給を上回っていましたが、順次解消し現在は海外ではお店に行くと買える状況になってきています。日本でももう少ししたらそうなるかな、という感じですね。

――私の知り合いにも「欲しいけど買えない」という方が多いです。今後、欲しかった人に行き渡った後は、周辺を巻き込んでいくことが必要になると感じます。そこで体験会など開かれると思うのですが、そのほかにもPSVR普及の手段として何か考えていますか?

吉田:
体験していただくことが一番なので、体験会を継続して開くことと、お店のタッチポイントを増やすということ。それからコンテンツをつくられている方へのサポートも全面的に実施します。
去年から行っているコンサルティングサービスは、PS VR向けにコンテンツを作られている方に我々のノウハウを提供する試みで、非常に評判がよいので続けていこうと考えています。

――開発者向けの開発キット入手が難しいという話もあると思います。そこに対して策はあるのでしょうか?先日、作品を募集してコンテストもやっていましたけれども。

吉田:
そうですね。コンテストはUnityさんと一緒にやりまして、そのときには企画段階のものが多い感触で受賞作は出なかったのですが、そういった早い段階から取り組んだ開発者さんに対して開発キットを貸し出していまして、多くのチームがもうすぐコンテンツを展示できるところまで来ていると聞いています。ですので、柔軟にやっていきたいと思います。

――今後もコンテストなどは開催する予定ですか?

吉田:
そうですね。機会があればやりたいなと思います。

アーケードにシューティングコントローラーに。今後の展開

――アーケードへのPSVR導入という話もありましたがそちらの進行はいかがでしょう。

吉田:
良い感じで進んでいますね。先日コニカミノルタさんが発表されていた集団体験型VR施設「VirtuaLink」も、PS VRを使いたいというお話をいただいて、一人のオペレーターで複数のPS VRとPS4 Proを同時に稼働できるシステムを開発して導入させていただきました。
PS VRを使ってロケーションベースで展開したいという会社さんは他にもいらっしゃいます。基本的に我々は黒子といいますか、機材とシステムの構築とそのサポートをやっていきますので、それぞれの企業さんの発表を待っていただければと思います。

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――アーケードでの展開は国内先行になっていくのでしょうか?

吉田:
そうですね。システム開発のフィードバックも得ながらということなのでまずは国内を先にと。

――Microsoftが年末に299ドルでPC向けのVRヘッドマウントディスプレイを出したり、別売りでコントローラーも発売予定と思うのですけど、同じようにソニーさんでも手を動かすタイプのコントローラーとか、カメラのリニューアルや、性能を上げていく予定はあるのでしょうか?

吉田:
我々はPCやモバイルベースと違って、次々とハードを変えていくことはしません。家庭用ゲーム機をベースに、安定して高品質なものをより多くの人に届けていきます。もちろんファームウェアのアップデートなどはありますが、ユーザーの方々が快適にずっと楽しめるという信頼関係の元に展開するということです。
家庭用ゲーム機では、コンテンツ開発者の方向けにも今作っているコンテンツを作り直したりしなくて済むようなビジネスモデルでやっています。そこはPSVRも同じですね。ただ、体験を向上させるオプションに関しては、今回の『Farpoint』と同時に導入するシューティングコントローラーといったものはVRに対して非常に効果的ということがわかっていますので、今後もそういったアイディアが出てきたら、自社ソフトあるいは他社さんのソフトに合わせて展開を考えていきたいと思っています。

――PS VRの廉価版や次世代機を出す予定などはいかがでしょう

吉田:
廉価版の予定はありませんが、家庭用ゲーム機の歴史を見ていただくと、ハードのコストが下がってきたら常にユーザーさんに還元してきましたので、そのチャンスがあれば当然検討することになると思います。
次世代機については、PSVRはPS4をベースにした体験ということで、そこに最適化して1080Pのコンテンツをもっと美しく見せるシステムを作りました。なので、PS4がある限り使っていける息の長いものができたと思います。

――『Farpoint』のコントローラーの話もありましたが、日本ではすでに品切れの状態になっています。今後、増産の見込みはありますか?

吉田:
PS VRそのものは日本以外では需要に追いつきつつあり、今年の一押しの『Farpoint』と同時にシューティングコントローラーも発売しますが、こちらも需要が供給を上回りそうな状況は非常にうれしい悲鳴といいますか、もっと多くの方に手にとっていただくため、PS VR本体と同様に供給面は強化していきます。全く新しい商品群なので、ビジネスとして需要の読みが非常に難しいことはありました。PlayStation®Move モーションコントローラー(PS Move)も量産を進めており、潤沢に市場にだせるように動いています。

――シューティングコントローラーの対応コンテンツも何種類か発表がありましたが、他にも増えていく見込みはあるのでしょうか?

吉田:
そうですね。デベロッパーさんにも大変喜んでいただいています。シューター系にはなりますけども、昨日我々が発表した『Bravo Team』という作品もシューティングコントローラーで遊ぶタイトルになっています。二人で協力するシチュエーションもあります。すでにサードパーティさんで出ているタイトルからも、パッチで対応いただく作品が複数ありますね。

https://www.youtube.com/watch?v=0nDdbO7X4Jk
https://www.youtube.com/watch?v=cV0Cwa7zqD8

――他にもコントローラーなど周辺機器は増えていく予定なのでしょうか?

吉田:
そういったお話がきたら積極的に対応しようとは思っています。

――たとえば今回発表された『FF15』だと釣りコントローラーなどあれば面白そうですね

吉田:
釣りはVRと相性がいいと思いますね。動き回る必要もないですし。あとはレーシングコントローラーなんてぴったりですよね。いつも『グランツーリスモSPORT』などのVRモードを展示するときには専用の筐体でプレイしていただいてるんですけど、ゲームの中で両腕が見えて現実とまったくシンクロするので、より楽しさを高めることができると思いますね。

――今回はお話をありがとうございました。PSVRの今後の展開に期待したいと思います。


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