【体験レビュー】Oculusの一体型VRヘッドセット次世代機「Santa Cruz」の完成度

Oculusは、10月11,12日に開催されているOculus Connect 4(OC4)にて、Oculus Go
とSanta Cruzという2種類の一体型VRヘッドセットを披露しました。

199ドルと手頃な価格のOculus Goは2017年11月に開発者向けに出荷を開始し、2018年前半には一般発売されます。

一方、Santa CruzはOculus Goに比べてロードマップが遅く、2018年中の開発者版出荷という予定のみ発表されました。両機種の最大の違いは、「自由に動き回れるかどうか」、「手を動かせるかどうか」です。この違いは同社が提供するPC向けのOculus RiftとモバイルVRのGear VRの関係と同様になります。

Gear VR

Oculus Go

Santa Cruz

Oculus Rift

形式

スマホ装着型

一体型

一体型

PC接続型

位置トラッキング

なし

なし

あり

あり

外部センサー

なし

なし

なし

あり

ハンドコントローラー

3DoF(方向のみ)

3DoF(方向のみ)

6DoF(自由に動かせる)

6DoF(自由に動かせる)

「Oculus Riftの体験からケーブルやPCを廃し自由にする」という目的でスタートしたSanta Cruzプロジェクト。本記事では、メディア向けに行われた体験デモの体験レポートと開発チームのプロダクト・マネージャー、ショーン・リュー氏との質疑応答、OC4で行われたSanta Cruzの開発に関する講演等の内容をまとめて紹介します。

そもそも一体型VRヘッドセットSanta Cruzとは何か

Santa Cruzは、PCやスマートフォンを使用せず、ケーブルも必要としない単体動作する「一体型VRヘッドセット」です。Oculusはこの一体型VRヘッドセットを「VR普及の鍵」として非常に重視しています。

PC向けのOculus Riftは高品質なVR体験が可能ですが、動作させるためにハイパフォーマンスなVR対応PCが必要で、体験するためには15万円以上かかります。また、PCとヘッドセットをつなぐケーブルが煩わしいものとなります。

一方スマートフォンを使うGear VRのようなVRヘッドセットは通常使ってるスマートフォンと組み合わせることで上質なVR体験ができますが、頭を動かすだけで動き回ることができず、現実と同じようなVR体験とはいえません。

Santa Cruzは一体型かつセンサー不要で単体で動き回ることができるVRデバイスです。

ちょうど1年前の2016年のOculus Connect 3で発表されました。プロトタイプの状態が続いており、名称も開発中の機種につけられるコードネームで呼ばれています(Santa Cruzはカリフォルニアにある海岸の名称。Cristal Cove、Crescent BayなどOculusはカリフォルニアの海岸名をコードネームに使用する)。

初登場時の紹介動画

https://www.youtube.com/watch?v=LIUYDUlGJzM

2017年は依然としてプロトタイプながら、その最も特徴的なヘッドセットで位置を特定するトラッキングシステム(インサイドアウトトラッキング)に改良を加え、さらに自由に動かすことのできるハンドコントローラーを発表しました。これにより、Touchコントローラーを動かすことのできるOculus Riftと同様の体験が一体型VRヘッドセットでもできることになります。

OC4で公開された紹介画

https://www.youtube.com/watch?v=7RlPZ_EGIv4

なお、筆者は2016年のOC3にて、Santa Cruzを一度体験しています。当時のモデルをSanta Cruz P1、OC4での改良版をSanta Cruz P2とします。また、昨年に引き続き今回も写真撮影は不可となっていたため、文章及び公開されている動画・講演資料を使っての説明となります。

快適なハイエンドVRの体験を一体型で

Santa Cruzの体験は特別に設けられた2つの部屋でそれぞれ別のコンテンツをプレイしました。部屋の移動範囲はそれぞれ3m×4mほど、HTC Viveのルームスケールの範囲と同じ程度でした。

装着はしやすい印象です。ゴム状のバンドになっており頭にフィットするほか、しっかりと締めれば重量バランスがとれて重さもあまり感じませんでした。

体験できたコンテンツの1つはRiftやGear VR向けにも配信されているガンシューティング『Dead & Buried』のデモバージョン(オリジナル)です。腰にぶら下がっているホルスターから銃を抜き、周囲から襲ってくるゾンビを倒していきます。普通に走って迫ってくるゾンビもいれば、上から撃ってくるゾンビもいます。最後にダイナマイトを投げてくる敵が出てきますが、拠点のそばにある爆弾のレバーを引き起爆させることで倒せます。

もう1つはペットのようなキャラクター・ボゴと交流するコンテンツです。自由に歩き回り、木の実をもぎ取って食べさせたり、枝を投げて取ってこさせたり、光の玉を集めたり、といった遊びができます。

体験していて感じたのは「Oculus RiftとTouchで体験している感覚と変わらない」ということ。Riftのゲームはその場で立ったまますることが多く歩き回ることがでなかったため、歩き回れるという意味では、「HTC ViveをコードレスにTouchで体験している」と言ったほうがいいかもしれません。

以下に詳述するように、細かい点ではOculus RiftとTouchにと及ばない点が多くありますが、コントローラーがあることにより、非常に自然な体験ができました。

各要素についての重点レポートと比較

ポジショントラッキング

Santa Cruzは、ヘッドセットの前面についた4つのカメラにより位置を推定するインサイドアウト・トラッキングを採用しています。その精度などが気になる所ですが、全く違和感を感じませんでした。自由に歩き回ったり、しゃがんだりすることができます。この点は、2016年に体験した際もすでに実現していました。さらにカメラのデザインや配置を洗練させた印象です。

インサイドアウト・トラッキングでは、現実の様子をカメラにより認識し、ヘッドセットの位置を推定しています。基本的には、屋外での使用は想定しておらず、室内での使用を前提としているとのこと。プロダクトマネージャーのリュー氏によると、室内では「オフィスの端から端まで認識できた」とのこと。その広さは教えてもらえませんでしたが、今回体験した3m×4mよりは広そうです。

なお、プレイのためには事前にプレイエリアを片付け、Riftと同じGuardianシステムによってプレイエリアを手動で設定する必要があります。設定したエリアの縁に近づくと青い柵が現れます。また、手を近づけても柵が出現するため手が壁などに激突することはありません。

ハンドトラッキング

新たに発表されたSanta CruzコントローラーはTouchコントローラーに比べ軽く、また細身でした。軽量で操作系としてもタッチパッドと裏側にボタンが2つついているシンプルなデザインです。Touchのデザインを行ったチームが手がけています。乾電池か充電式か詳細は不明です。

https://www.youtube.com/watch?v=7RlPZ_EGIv4

ヘッドセットのカメラを通してコントローラーから発せられる赤外線をキャッチしてその位置を特定します。そのため、カメラの画角の範囲しかトラッキングすることはできません。Oculusはこのトラッキング範囲を広げるためにカメラを4つ配置したり、各カメラをヘッドセットの縁に配置するなど、工夫を重ねてきました。

カメラ位置が2mm違うだけでトラッキング範囲が1フィート(約30cm)ほど変わります。

ヘッドセットを落としてもカメラが割れないデザイン

その結果、視界で見える範囲よりもトラッキング範囲が広くなっている印象がありました。頭上や身体の横に持っていっても問題なくプレイができました。物を振りかぶって投げるなどの動作も可能です。なお、同様にインサイドアウト・トラッキングを行い、形状も似ているWindows Mixed Realityコントローラーと比べると精度が高く、ボタンも少ないため直感的に体験することができました。合計10分程度の体験中、トラッキングがはずれてしまい、銃を持っている手と銃の位置がずれたことが一度ありました。

またたとえば銃を構えた状態で身体だけひねり、真後ろを向いた状態でも操作は可能ですが、位置はとっておらず方向のみ反映されています。

TouchとSanta Cruzのボタンの関係。Santa Cruzではボタンが減少する

Santa Cruzコントローラーもさまざまなプロトタイプを設計

装着感

Oculus Riftの後頭部にバッテリーとプロセッサーを固定してむき出しになっていたSanta Cruz P1から大幅に向上しました。バッテリーやプロセッサーはヘッドセットのディスプレイ部分に組み込まれ、頭部に装着するストラップはゴム状の柔らかい素材に変わりました。頭部へのフィット感が向上しています。側面の固定方法はOculus Riftと同じ、マジックテープで固定します。

様々な形状をテスト

また、重量バランスが大幅に改善されており、重い印象だったP1と比べると軽量になった印象です。筆者は最初頭部のバンドが緩かったのですが、その状態だと前部が非常に重く感じました。しっかりと締めた後は気にならない重さになったことから、快適に体験するには、Oculus Rift以上に、側面のバンドと頭部のストラップをしっかりと締めることが重要です。

グラフィッククオリティ

ディスプレイのスペック数値などは一切公表されていません。グラフィックのクオリティはOculus Riftと同程度かそれ以上(米メディアRoad to VRは2,560 × 1,440と予想)といった印象でした。発色から液晶ではなくOLED(有機EL)を使用していることが分かります。スクリーンドア効果もなく、フレームレートはOculus Riftほど滑らかではなかったことから60Hzから90Hz程度(米メディアRoad to VRは75Hzと予想)と考えられます。

また、ヘッドセット自体は比較的コンパクトな外見ですが視野角もOculus Riftと同程度で問題なく感じられました。

また、Oculus Riftと同じくヘッドセット下部にダイヤルがついており、個人差の大きいIPD(瞳孔間距離)が調整できました。

オーディオ

Santa Cruzにはヘッドホンが付属していませんが、体験もヘッドホンなしで行いました。しかし不思議なことにサウンドが聞こえます。マイクロソフトのHoloLensのように、側面にスピーカーが内蔵されている模様です。

システム

今回のデモはいずれも、同じシーンを繰り返し体験する形になっており、ホーム画面や遷移のユーザーインターフェースを見ることはできませんでした。

OSなどベースとなっているシステムについてリュー氏に質問をしたところ、具体的には教えられない、という回答ながらも「PCOSよりはモバイルOS寄り」とのこと。「(Oculus Goが、Gear VRのバイナリ互換なように)Santa CruzでRiftのコンテンツをそのまま動かすことはできない。TouchのコンテンツをSanta Cruzへ実装するのためにはダウングレードが必要となる。モバイルVR向けのパフォーマンス最適化などを行う必要がある。」と述べています。

体験できた2つのコンテンツはフォトリアルな描画というよりもデフォルメされたCGの世界で体験するコンテンツでした。軽快に動作していたのはそのグラフィッククオリティゆえとも考えられます。

バッテリー

一体型VRヘッドセットは単体駆動のため、バッテリーが必要となります。どの程度の容量で何時間(何分)程度駆動するのかは今回明かされませんでした。

1年での進化と今後の見通し

1年前のSanta Cruz P1は、一言で言ってしまうと「Oculus Riftにカメラとバッテリーとプロセッサをつけたもの」。テープでパーツが固定されているなど初期のプロトタイプ感満点のものでした。

リュー氏によると、さらに初期のプロトタイプはカメラをとりつけることを重視したものだった、とのこと。「Santa Cruz Monarch」という名称の初期プロトタイプは金属板にカメラを付けたデザインでした。初期からインサイドアウトの実現がまず掲げられていた、と言います。

Santa Cruz Monarch

Santa Cruz (2016)

インサイドアウトトラッキングに加え、コントローラーの技術を組み合わせたSanta Cruz P2は、開発者版ならそのまま発売してもいいのではないか、と思ってしまう出来だと感じられるものでした。実際は2018年中の開発者版出荷、一般発売は不明、となっています。

懸念点は、Oculus Goのように既存のVRデバイスからの互換性がないことでコンテンツ開発者が新たに移植作業などをしなければいけないことです。また、発売日と金額が明らかになっていないことで、最終的にどのような道筋なのかが明らかになっていません。また、グーグルのDaydreamのように他社からも歩ける一体型VRヘッドセットが登場しつつあります。

リュー氏は「(Santa Cruz P2には)改善すべきところは山のようにある」と語ります。Snata Cruzは1年で大幅な改善を見せています。ディスプレイやバッテリーの持ち、さらなる軽量化など今後1年以上の時をかけて、どこまで性能を高めていくのか、注目したいところです。

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この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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