パールハーバーを記憶に留める: 米国博物館における VR の活用

本記事は「Redshift 日本版」とのライセンス契約を結んだ転載記事であり、ロブ・マクマナミー氏の執 筆した原稿を翻訳したものを、オートデスク株式会社の許諾を得て Mogura VR に転載しています。

ゲティスバーグ国立軍事公園で 1939年にエレクトリック マップが公開されて以来、博物館の世界は最新のテクノロジーで未来の世代と絆を築こうとしてきた。

こうしたアプローチを中傷する人もいるが、博物館にとって、テクノロジーはますます不可欠なツールとなってきている。スミソニアン博物館やアメリカ自然史博物館は、バーチャル ツアーやインタラクティブで没入感のある展示による、実験的な試みを行っている。こうしたイノベーションは、より多くの人を引き寄せ、教育面での使命を達成して、展示を直接見る機会のない人にまでリーチを広げることが可能だ。

戦艦アリゾナの VR 体験の画面キャプチャ [提供: NPS/Autodesk]

アメリカ合衆国国立公園局 (NPS) で文化・自然資源長を務める、パールハーバーにある第二次世界大戦武勲記念史跡(WWII Valor in the Pacific Monument)の、「来館者は平均で毎年 180 万人にも上りますが、興味を持っていても生涯ハワイへ来る機会の無い方も無数に存在します」と述べている。

ポロウスキー氏は、現地に赴くビジターや遠隔地の人たちの体験を高められる、Pearl Harbor アプリの新たなVR機能を特に高く評価している。真珠湾攻撃から節目の 75周年となる 2016年12月7日(現地時間)、NPS が発表した「Pearl Harbor VR Tours」アプリ(iPhoneGoogle Play 向けにリリース)の 3 つの新機能は、太平洋艦隊への爆撃と、攻撃を受ける前の戦艦アリゾナの甲板ツアー、海底の記念碑に関する正確な説明となっている。このテクノロジーにより、マイアミやサンディエゴに住む年老いた退役軍人が、カンザス州トピカや東京の学童同様に、歴史的意義を持つ現場を体験する機会が提供される。

「私が 3年前にコンセプトを生み出したもので、まさに自分の子供のような存在です」と語るポロウスキー氏は、ホノルルの NPS の仕事を 2006年から行ってきた。「もちろん、ひとりでは実現できません。この VR 体験を作り出したパートナーたちが、素晴らしい仕事をしました」。

パートナーを務めたのは、NPO の Pacific Historic Parks(PHP)と、アプリの新機能のデザインとパッケージを行った、ネブラスカを拠点とする建築/エンジニアリング事務所 HDR。ラジ・プラサド氏(HDR の CTO)は、「このプロジェクトは、新たな角度から我々の応用技術の実践を考える、素晴らしい機会になりました」と述べている。「情報管理を 3D モデリングや VR と組み合わせることで、何が実現できるかが示されています」。

沈没した戦艦アリゾナの VR 体験の画面キャプチャ [提供: NPS/Autodesk]

将来の世代へのリーチ

HDR の元エンジニアで退役海軍大佐のニール・シーハン氏は現在、パールハーバーを含むハワイ諸島の史跡 5 箇所を支援する PHP の取締役会長を務めている。彼と役員会のメンバーは、近年は史跡を訪れる若本たちの多くが、彼らを取り巻く厳粛な歴史よりも iPhone に気を取られていることに気づいた。

「若い世代がどのように情報をやり取りし、どれほどテクノロジーに没入しているかを観察することが、我々の考え方にも影響を与えました」と解説するシーハン氏は、ハワイ・カイルアの環境コンサルティング会社 Sheehan Group-Pacific の CEO も務めている。「PHP は、教育や実験のポートフォリオにVRを導入した最初の公園のひとつであり、このプログラムはさらに進化させるつもりです」。

Pearl Harbor デジタルポータルは、さらなるポテンシャルを秘めている。PHP の情報、デジタルテクノロジー部門の取締役で、以前はハワイ州教育省で IT 部門の局長を務めていたトム・ゲリッシュ氏は 「現時点では教育的なものより、感銘を与えるような要素になっているので、10 点満点中 7 点といったところです」と認めている。「ただ VR 市場は変化し続けているので、我々の VR アプリが成功を収めるには、変更や追加を行えるような自由度を持つことが重要だということを学びました」。

またシーハン氏も、改善の余地があることを理解している。「VR 体験は楽しいものですが、我々のミッションである教育に結びつける必要があります。それ自体が教育的なツールであるだけでなく、教育プログラムに再投資できるような収入源となる必要があるのです」。

ハワイ・ホノルルのパールハーバーにあるアリゾナ記念館 [提供: NPS]

Pearl Harbor の新しい VR インターフェースは、2017年には毎日 20-30 人のビューワーを獲得するなど成功を示し始めている。ツアー参加者は、追加費用を支払えば戦艦のデッキを歩く 10 分間のツアーが可能で、その文化遺物をバーチャルに手にすることもできる。

この春には、さらに追加機能を搭載予定で、VR ツアーの作業も継続される。また HDR によると、多数のインタビューやインタラクティブなマップ、さらには倉庫に保管され非公開の遺物などにもアクセス可能になる予定だ。

保存のミッションが、さらに拡張

このデジタルポータルのプロジェクトが始まったのは 3年前。建造後 101年が経過した戦艦アリゾナの老朽化や甲板の酸素レベル、さらには水没した船体表面のサンゴの生育状態などのモニタリングなど、物理的な状態の確認や分析など、歴史保存を目的としたマスター・デジタルデータの作成が目的だった

2016年8月、オートデスクの戦略プロジェクト チームが遠隔操作型の無人潜水機(ROV)を使い、複数回の潜水により船から SONAR と LiDAR のデータを収集。データは Autodesk ReCap へフィードされ、NPS の科学者が情報の追加や研究のための変更を行えるよう、各ミッションから幾つかのモデルが作られた。そのデータは ReMake で、3D プリントの準備が行われている。

https://www.youtube.com/watch?v=6DnWZMrnfg8

その作業中にNPSは、このデータが大衆の感情面に訴える際にも有用であることを理解し、 3ds MaxStingray を使った、アニメーションの作成とインタラクティブな VR 体験の創造が行われた。「素晴らしい機会が生まれたのですが、その段階ではどう扱えばよいかわかりませんでした」と、ポロウスキー氏。「私のミッションには、常に大衆を引き込むことが含まれているので、これをぜひ洗練させようと思いました。VR こそが、いま目指すところです。そのポテンシャルを実現するため、さらに多くのパートナーが必要ですね」。

NPS とパートナーは現時点では、このバーチャルな形と、そこから推論できる結果について、まだ学んでいる最中だ。ポロウスキー氏は、面白がりながら「VR ヘッドセットをレンタルしてすぐに理解したことは、ユーザーのために椅子を提供する必要があるということです」と思い起こす。「壁や他の人にぶつかってしまうので、ビューエリアも別にする必要がありました」。

この記事を書いた人

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