ヘルスケア分野におけるVRで受け入れる医療の現実

本記事は「Redshift 日本版」とのライセンス契約を結んだ転載記事であり、コーリー・モック氏の執筆した原稿を翻訳したものを、オートデスク株式会社の許諾を得てMogura VRに転載しています。

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医者や病院に行くことを楽しいと感じる人は少なく、介護施設で過ごすかもしれない晩年を待ち望む人は、それ以上に少ないだろう。だが、ヘルスケア分野における次世代テクノロジーがそうした体験を改善するのであれば、あの病院の消毒剤のような匂いも、そう悪いものではないと感じられるかもしれない。

ヘルスケアの分野で 3D テクノロジーや AR、VR を研究している企業各社は、そうなることを期待している。ヘルスケアのテクノロジーと発展には、医者/介護者と患者という、2組の重要な当事者が存在する。これは 3D テクノロジーや AR、VR でも同様だ。こうしたテクノロジーは医者やその他の介護者にとって、研修と教育における大幅な進歩の駆動力になっている。患者にとっては、それがより強固な絆と、より優れた治療やリハビリ、癒しにつながるのだ。

新たなテクノロジーによる介護者の指導

redshiftBioDigital Human の脳画像 [提供: BioDigital]

医用画像のパイオニアでHoloeyes株式会社の取締役兼 COO である杉本真樹医師らが見出してきたのと同様、ヘルスケア分野の専門職従事者にも、3D イメージを活用した訓練の提供が極めて効果的だ。3D モデルには、教科書に掲載された写真以上の価値がある。学生はモデルを動かし、臓器を細部まで確認可能。献体同様の効果を、ずっと手軽に得られるのだ。

3D 診断を実現している企業、BioDigital は「人体の Google Earth」だと称されてきた。BioDigital のクラウドベース 3D 人体モデルには 5,000点以上の人体の部分が収められており、2,500以上の教育機関が、このプラットフォームを学生の指導と訓練のために使用している。BioDigital CEO のフランク・スクーリ氏は「医者と患者には大量の情報が寄せられます」と、指摘する。「3D を使用することで、それを見る人の興味をさらに引くものにでき、理解と記憶力の向上につながります」。

Open Simulation も、3D テクノロジーを使用することでヘルスケア教育と介護の民主化を行っている企業のひとつ。この企業は、低価格の腹腔鏡手術訓練シミュレーターを開発した。220万人の手術スタッフを養成することで、適切な外科治療を受けられていない 50億人を救うことをミッションとしている。Open Simulation の医用画像部門責任者、ヤシュワント・プリヤラ氏は「弊社のソリューションで最も歓迎されているのは、手の届く価格であることとリアルタイムな操作性、そして 3D ビジュアライゼーション機能です」と述べる。

Medical Augmented Intelligence が提供するインタラクティブな人体 3D モデルは、針治療の施術者を訓練するためのものだ。学生は VR を使用してデジタル化された人体上で自分の手を動かし、筋肉や神経の画像にアクセスして針を刺す位置を確認できる。Medical Augmented Intelligence 設立者兼 CEO のサム・ジャン氏は「学生にとって、概念のハードルを超えて完全な理解へと到達することは非常に困難です」と話す。「鍼のツボは、鍼を刺す角度と深さにより、さまざまな症状に効果をもたらします。例えば ST36 というツボには 3 種類のアプローチ方法があり、それぞれが異なる症状に効果を発揮します。また、アプローチによって刺すべき角度と深さも異なります」。

redshift3D モデル上に示されたツボ [提供: Medical Augmented Intelligence]

3D テクノロジーは、個人の理解の向上だけでなく、よりコラボレーティブな体験も提供する。「我々のプラットフォームでは学生や指導者が、実際に訓練施設に集まらなくても、バーチャルな空間で一堂に会して交流できます」と、ジャン氏。

患者を画期的な体験に参加させる

3D や VR、AR が医療行為の新たな訓練を可能にするのと同様に、この種のテクノロジーを使用することで、患者が痛みや老化、不安感などに対処できるような教育や、リハビリ、治療への積極性を高めようとしている企業もある。

Floreo は、自閉症の子供たちのスキル開発を支援し、彼らの自立を後押しする協働システムを提供している。子供たちは Google Cardboard などスマートフォンを利用する VR システムを使用し、指導を行う大人はレッスンに Apple iPad を使う。Floreo 共同設立者兼 CEO のヴィージェイ・ラヴィンドラン氏は「学習能力障害を持つ子供とその家族からの、VR 体験へ対する反応は極めて好意的です」と、話す。「VR ベースの治療には、大きなメリットがあると考えています。VR 環境は、個人に合わせて管理、調整できますからね」。

Floreo の VR プラットフォームは自閉症の子供たちを支援している [提供: Floreo]

RendeverBuildVR といった企業は、VR の対象が若年層だけではないことを示しており、認知刺激や新たなエクスペリエンス、身体面や介護施設など、制約を超越して何かを行う機会を通じて年配者の福利向上に役立つツールを作成している。BuildVR の共同設立者マーク・パスカル氏は、ある年配のイタリア人男性と経験した感動的な体験を、今でも明瞭に覚えている。この男性は SolisVR ゴーグルを外した際に、涙ぐんでいたという。「彼は、ヴェネツィアに戻ることを遠い昔に諦めていたのですが、VR により、ゴンドラに乗っているような感覚を得ることができました。そして、今度この体験ができるのはいつかと尋ねたのです」。

軽量で操作が簡単な SolisVR デバイスは、最初は気乗りのしない患者にとっても快適なものだ。「数名は拒んでいましたが、他の方が楽しみ、気に入ったのを見て、考えを変えたようです」と語るパスカル氏は、高齢者向け VR のより大きな課題は、そのコンテンツにあると指摘する。「関連性があり、クオリティやデザインに優れ、視覚的に面白く、簡単に操作できる必要があります。そうした特性を組み合わせることが、とても重要なのです」。

Rendever の共同設立者兼 CEO デニス・ラリー氏は「高齢者向けの VR デザインは、ソフトウェアとコンテンツの両方において、かなり独特なものです」と話す。「VR には孤独を感じさせるものもありますが、弊社のソフトウェアを使用すれば、それが人々と共有できるソーシャルな体験となります。以前、認知症に悩み、会話に苦労している男性を担当したことがあります。この男性を、過去に訪れたことのある幾つかの場所に VR で連れて行ってみると、さまざまなエピソードを細部まで詳しく語ってくれました」。

https://www.youtube.com/watch?v=RKM7A5cjguY

研究を通じて応用を拡張

VR などのテクノロジーへの注目は高まっているが、ヘルスケア分野における大規模な応用には、文書化された豊富な研究が必要だ。臨床 VR コンテンツ プロバイダー AppliedVR のプレジデント、ジョッシュ・サックマン氏は「VR の理論上の価値は高いのですが、大規模な応用を生み出すには、ヘルスケア提供者に臨床面、経済面の両方の価値を示せる治験が必要です」と話す。「VR は多くの人にとって新たなテクノロジーですが、20年以上の学術研究が行われ、患者と医療従事者に役立つと示唆されています。その受け入れを促進するには、科学と研究の継続的な進歩に加えて、教育と認知の大幅な向上が必要です」。

AppliedVR は、使い勝手と有用性に関する VR の研究を行っており、術前不安からうつ病まで、さまざまなケース スタディやホワイトペーパーを公開している。また VR テック企業 Firsthand Technology による疼痛管理や理学療法、リハビリ用 VR の研究プロジェクト DeepStream VR により、中毒性があり時間の経過に伴って効果が減少するモルヒネなどの麻酔剤を使用しなくても、VR が脳内のオピオイドを変化させ、鎮痛効果をもたらすことが分かっている。

VR などのテクノロジーは、より多くの研究が表面化するにつれて、医療と患者ケアのあらゆる分野で急速に増加するだろう。医療関係者の教育から、患者との絆の強化まで。ヘルスケアは革命のときを心待ちにしている。

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