VR/ARを進化させる技術が続々 DCEXPO注目展示ピックアップ(後編)

2017年10月27日から29日の3日間にかけて、東京・お台場の日本科学未来館にて、「デジタルコンテンツEXPO 2017」が開催されました。前編に続いて、後編のレポートとなります。

HangerON:ハンガー反射を用いたベルト型歩行操作コントローラ

出展:電気通信大学 情報理工学研究科 情報学専攻 梶本研究室

https://www.youtube.com/watch?v=7_LpCgLUu0Y

ハンガー反射を用いて、歩いている体の向きを変えてしまうベルト型デバイスの展示です。ハンガー反射とは、針金ハンガーを頭に被ると不随意に頭が回転してしまう現象のこと。これは頭部だけでなく、手首や腰、足首でも発生することが報告されています。

今回の展示では、腰に巻いたベルト型デバイスのバルーンが、タブレットの操作によって膨らむことで体験者の腰に圧力を呈示し、歩いていると右や左に勝手に体が曲がってしまうデモを体験できました。地図アプリと連携することで、スマホを見なくても良い新しいナビゲーションに応用ができるとのこと。

(参考論文)
今 悠気,中村 拓人,梶本 裕之. 2017,“腰ハンガー反射を用いた歩行ナビゲーションにおける教示の影響”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌. Vol. 22 (2017) No. 3 p. 335-344

Membrane AR:変形可能な膜状ミラーを用いた可変焦点型広視野ARディスプレイ

出展:ノースカロライナ大学チャペルヒル校他

https://www.youtube.com/watch?v=dyRdT7AWY8k

空気圧によって膜状ミラーの形状を変えることで、焦点距離を調節することを可能にしたARディスプレイの展示です。表示されるCGオブジェクトの位置に合わせて空気圧を調節することで、オブジェクトがどの距離に表示されても焦点が合った状態にすることが可能です。

(参考論文)
DOI:http://doi.acm.org/10.1145/3084822.3084846

TWINCAM:全天球リアルタイム立体視テレプレゼンスシステム

出展:首都大学東京 大学院システムデザイン研究科 / NTTコミュニケーション科学基礎研究所 / 電気通信大学 / 豊橋技術科学大学

https://www.youtube.com/watch?v=-uD097Okfrs

THETAを2台用いた全天球動画ストリーミングにおいて、モーションブラーと遅延を低減することに成功したデモ。

体験者はOculus Riftを被るとTHETAからの映像を見ることができますが、体験者が頭を回転させると、THETAは常に正面を向いたまま、その位置だけを回転するようにモーター制御をしています。単純にカメラが乗っている台を回転させるだけの制御に比べ、モーションブラーを抑えることが可能です。

(参考論文)
DOI:http://doi.acm.org/10.1145/3084822.3084831

GoThro

出展:東京大学 苗村研究室 / 電気通信大学 小泉研究室

https://www.youtube.com/watch?v=f2rDX7x7C8Y

https://www.youtube.com/watch?v=bFdmeDenJ40

一般的なカメラにレンズや光学系を組み合わせることで、カメラのレンズの位置をバーチャルに(物理的な本体の位置とは異なる位置に)移動させることができる技術です。たとえば金網の向こうにいる動物を接写する場合、本技術を使えば動物にカメラを意識させることなく、さらに金網をすり抜けて撮影することも可能、とのこと。

VR内で自然な音響設計が可能に


『SYMMETRY×立体音響による空間シミュレーション』は音響機器メーカーのゼンハイザージャパン株式会社とVRソフトウェアの開発を行うDVERSE Inc.により制作された、VR空間内で立体音響を再現したデモです。

春夏秋冬移り変わりの中、縁側に座って目の前の庭と背後の部屋から聞こえる音を体感できます。

付属された「VIVE デラックス オーディオストラップ」ではないヘッドホンを装着しての体験は、騒々しい展示会の中でもどこかの静かな庭にいるようです。風鈴の音も秋の虫の声も実際に現実で体験した記憶と比べても違和感が少なく自然に感じるため、返って驚きは少ない体験です。

イベントやコンサートなど実際に設営する前に、音響面の舞台設計をVR内で検証できるようになるとのことです。

VR内でキャラクターと自然に対話

VRコンテンツ制作を手がける株式会社エクシヴィは、ヤマハの自然応答技術「HEARTalk」とコラボし、VR内でキャラクターと自然に対話できるデモ『【VR✕HEARTalk】 ユニティちゃんのHEARTを掴んじゃえ!』を展示していました。

体験者は学校の教室で先輩の女の子の隣で、ゲームエンジンのUnityの使い方を教えてもらう、という体験内容でした。ヤマハの自然応答技術により、挨拶や会話をこれまでより自然に実現しています。音声認識は非常に自然です。応答内容は事前に録音したさまざまなパターンの台詞を当てているとのこと。

音声認識に基づくVRでのキャラクターとの自然な会話は、「会話のVR」とも言える分野です。キャラクターを使ったVR体験の究極的なゴールではないでしょうか。海外の開発スタジオが作った『Gary the Gull』というコンテンツでも、プレイヤーの返信を音声認識し、自然言語処理して回答するという試みが行われています。

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この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

  • 東京大学工学部,UT-virtual所属.趣味は音楽(作詞作曲編曲)や物語の創作.ストーリーテリングや人間の振る舞いを変化させるための強力なツールとしてVRに強く惹かれています.境界が曖昧なものと予測不可能なもの,そしてvirtualという概念が好きです。

    Twitter:@yunoLv3