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なぜ13歳未満の子供は、Oculus Riftを使用してはいけないのか?医学的な見地からの警鐘

※講演では13歳以下との言及がありましたが、Oculus社のガイドラインでは「13歳未満」との記載があるため表現を統一しております。(2016年3月22日)

11月7日(土)、東京・御茶ノ水にあるデジタルハリウッド大学にて「VRCカンファレンス2015」が行われました。Oculus RiftやPlayStation VRといったVRヘッドマウントディスプレイの製品版発売を来年上旬に控えている中、ゲーム、映像、広告などの多様な分野でVR取り組んでいるエキスパートがVRの知見を共有する場として開催されました。

今回は、大阪大学医学部付属病院で小児眼科、神経眼科を専門としており、3Dコンソーシアムでも3Dテレビなどのレギュレーションに関わってきた大阪大学・不二門尚氏による講演「小児の輻湊・調節、眼球運動の発達から見る年齢制限」をレポートします。

Oculus社は、Oculus Riftの使用制限として、ガイドラインで13歳未満の子供の使用を禁止しています。その理由はなぜなのか。「目の成長に悪影響」があるという位の認識しかない人がほとんどであり、実際にはどのようなメカニズムになっているか理解している人は多くないように思われます。

なお、ここでは例としてOculus Riftを挙げていますが、この記事の内容は立体視を使う二眼(レンズが2つある)VRデバイス全てに共通します。Oculus Riftだけでなく、PlayStation VR、HTC Vive、Gear VR、Google Cardboardなど二眼のデバイスを使う際は十分ご留意ください。

モノが立体的に見える仕組み

まず不二門氏は、何故モノが立体的に見えるのかを説明しました。人間の目は2つのカメラに例えられますが、これらの像を脳の立体視細胞で融合(融像)させる事によって立体感が生まれています。

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近くを見た時、水晶体が膨らむ事を「調節」、だんだんと寄り目になる事を「輻湊」と呼びます。眼球で、この2つの作用が共同して起こる事が、立体感が生みだす支えとなっています。

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しかし、「立体映像では不自然な状況が起こっている。」と指摘しました。本来、見ている対象との距離と比例関係にあるはずの調節と輻輳ですが、3Dではスクリーンまでの距離が一定であり、現実に立体のものを見ている状態とは異なるため、矛盾が生じます。個人差はかなりありますが、こういった矛盾が3Dテレビを見て疲れる原因になります。

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13歳未満の子供は、なぜOculus Riftを使ってはいけないのか

Oculus社はOculus Riftについて、「13歳未満の人は視覚の発達期にあるため、HMDを使用してはいけない。」というドキュメントを出しています。このガイドラインでは、「should not be use」と強いの英語表現で表現されている事を不二門氏は指摘しました。立体視細胞の形成と瞳孔間距離、2つの観点からこの「13歳未満」という条件につながっていると言います。

先ほど紹介した立体視細胞は成長と共に形成されるものであり、注意しなければなりません。「頭の中に立体視細胞が無いと、モノを立体的に見る事はできない。内斜視という目が内側に寄ってしまっている子供は、2歳までに手術をしないと一生立体感が出ない」とのこと。最終的に、立体視細胞の成長が完了するのは6歳ぐらいまでかかると解説しました。

不二門教授は、印象的な例を挙げています。それは、急性内斜視と呼ばれる事例です。赤と緑のセロハンで立体感を出すアナグリフを使って3D映画を視聴した4歳の子供が、3D映像を見てから目が内側に寄ってしまった事を取り上げました。

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この子供は、当時4歳11カ月だったとのことですが、手術をするまで3か月間斜視の状態が治りませんでした。大人だとこのような状態になっても2、3日すれば治りますが、「6歳までの子には要注意。発達期にある子供の場合、自然には元に戻らなくなってしまう。」とのことで、「6歳までの日常と異なる輻輳-調節関係系が異なる3D映像を使用するHMDの使用は慎重にした方がいい」、との注意を喚起しました。

裸眼で立体視を可能にするゲーム機NINTENDO 3DSでも、「6歳以下のお子様は、長時間3D映像を見続けると目の成長に悪い影響を与える可能性がありますので、2D表示に切り替えてご使用ください。」という注意書きが掲載されています。

もう一つの理由は、子供の瞳孔間距離です。瞳孔間距離とは、黒目と黒目の間の距離の事ですが、子供の方が頭蓋骨が小さいためこの距離が短く、大人になるにつれてだんだんと離れていきます。この発達は、10歳頃に完成すると言われており、「眼球を含めた空間認知の発達に影響を及ぼさないように、HMDは瞳孔間距離を考慮したものにすべき」だと語りました。

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2つの観点からの結論をまとめると、「6歳以降の子供は立体視の発達は終わっており、瞳孔間距離が調整できれば3D映像を使用するHMDの使用は可能だが、斜視や同一視など両眼の融像機能が弱い場合は慎重な対応が必要」との見解を示しました。13歳未満は使ってはならないとするOculusのガイドラインには、こういった根拠があったということなのでしょう。

イベント展示など、子供がVRデバイスを体験しやすい環境も多くあります。展示によっては、Oculus Riftなどを使った展示と同様の内容のコンテンツを、立体視を行わない一眼の「ハコスコ」用に提供している場合もあります。何か起きてからでは遅くなってしまいます。子供も大人も楽しめ夢が広がるVRですが、ガイドラインを守って体験するようにしましょう。

不二門氏の講演は以下の動画でもアーカイブされています。詳細を確認したい人はぜひ視聴してみてください。また、VRCカンファレンス2015の全講演はこちらのチャンネルで全て見ることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=8wtgCiJ2nKk

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    サヤメタクミ(@sayamecci

    イラストレーター。高校時代より講談社などで、電子文芸誌の挿絵や小説の装丁デザインの仕事をしている。VRなどの先端技術、CGやコンピューター自体の持つ面白さに魅せられ、VRコンテンツ開発にも将来関われるようになりたいと密かに思っている人。

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