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話題 2023.08.18

CAPSULE初のVR音楽ライブは“リアル以上のリアル” 中田ヤスタカ&VRライブ演出陣インタビュー

8月5日(土)に開催された音楽ユニット・CAPSULEのバーチャルライブ「CAPSULE Live in VRChat “メトロパルス”」。CAPSULEにとっては初めてのVRChatでのライブだったことから、事前に大きな話題を呼び、公演後もクオリティの高さを絶賛する声が上がっている。

今回は、出演者の中田ヤスタカ氏、ライブ制作監督のReeeznD氏、演出監修のキヌ氏にライブ後の手応えについて話を聞いた。

中田ヤスタカ インタビュー

――CAPSULEとして今回のようなVRChatでのスタイルのライブは初になりますが、このライブを実施するに至ったきっかけや経緯をお聞かせください

中田ヤスタカ:
CAPSULEの最新アルバム『メトロパルス』収録楽曲はMVではメンバー含めバーチャルな映像表現となっていましたが、それをそのままVRChatに移植してみよう、という所から始まったと思います。

――今回VRChatでのライブを終えた感想を教えてください。

中田ヤスタカ:
こういった形のライブは、実際に空間の中に入って体験しないと伝わらない部分も多いですが、その部分こそが魅力でもあると感じています。ある意味リアルライブと共通する感覚だとも思いますし、それはすごいことなのかもしれませんね。

――準備からライブまでの過程で、個人的に驚いたことや強い関心を持った事柄があれば、お聞かせください。

中田ヤスタカ:
3DCG作品の制作とは違い、ライブ制作打ち合わせ段階からVR内に入り、身振り手振りで「ここをこうして」のように空間上でやりとりできることは素晴らしいと感じました。また、実際に空間に入ることにより感じた聴こえ方を元に音の空間処理などを大幅に変更したり、アレンジも変えるなど新しいアイデアも生まれました。

――CAPSULEは1997年から長く活動しておられますが、バーチャルな表現に興味を持ったのはいつごろからですか?

中田ヤスタカ:
もうずいぶん前からになりまして、CAPSULE以前からの。映画でも仮想現実がモチーフの作品が好きなんですよね、趣味のガジェットとしてVR機器もずっと追いかけています。ちなみにバーチャルボーイは発売当時のリアルタイムから好きで、スタンド使わずに仰向けになって顔の上に乗せて毎晩そのまま寝落ちするまで遊んでいました(笑)。

――「CAPSULE HOUSE」のローポリゴン、レトロフューチャースタイルの表現が魅力的でした。これはどのような発想で作られましたか?

中田ヤスタカ:
ある時代を感じさせるサウンドモチーフと、現代でのみ可能な演算による表現の組み合わせはCAPSULEの音楽サイドの基本となっている部分もあります。かつてサンプリングを活用した音楽ジャンルが世に生まれた時もそうでしたが、再現ではなく、空気感含め違う時代性をひとつに閉じ込める、ある意味違和感みたいなものも音楽の魅力のひとつだと思っています。そういった価値観をCAPSULEの映像サイドとしてローポリゴンのモデルにリッチな表現をするというところに繋がっています。

――バーチャル空間でのライブとの相性について、どのように感じておられますか?

中田ヤスタカ:
現実の物理法則を超えた表現ができるのはもちろん魅力ですし、CAPSULE楽曲は僕が全パート演奏して作っているのですが、それを実際にステージ上で視覚化することができるなど、ある意味ではリアル以上のリアルになっているかと思います。また、バーチャルと言っても通常のライブ映像のように平面で観るもの、360°動画など色々あると思いますが、やはり立体空間を各自が同時に自由に歩き回れる中でのものは、それらとは別ものというくらいの体験だと思います。

ライブ制作監督:ReeeznD インタビュー

――今回、VRChatでのライブを終えて、感想はいかがでしたか?

ReeeznD:
期待の高いライブだったので、とても良い反応をいただけて、まずは安心しています。

――準備からライブまでの過程で、個人的に驚いたことや強い関心を持った事柄があれば、お聞かせください。

ReeeznD:
「メトロパルス」の楽曲を初めてVR内で聴いた時、部屋でイヤフォンで聴いていたものと違った新しい質感で、あまりにも聴こえ方が良くて驚きました。

それと、中田さんのVRChatの理解度の高さです。CAPSULE HOUSEにiwaSync3 メディアプレイヤーを置こうとか、鏡を置こうなどの提案は中田さんからのものです。

――ライブ演出で特に注力したのはどのような部分ですか?

ReeeznD:
音楽とバーチャルを最大限肯定するためにストーリーラインから空間の使い方までこだわりました。

――ReeeznDさん個人は、VRChatに触れたのはいつ頃でしたか? またVRChatをどのようなものとして捉えているのかもお聞かせください。

ReeeznD:
初めてJoinしたのは2018年3月28日です。

今のように入りびたるようになったのは2022年の5月に『VRMV ? ELV? Hall 000 – ゆめのなか (illequal Remix)-』というVRMVのワールドを公開して以降です。VRChatは、今いちばんおもしろく、領域の広いコミュニケーションツールです。

――企画時点で、CAPSULEとVRChatという組み合わせによって、どのような化学反応が生まれると期待していましたか? また個人的に考える、CAPSULEというユニットの魅力についても、お聞かせください。

ReeeznD:
どのような化学反応を起こし、どう期待に応えるか?というのがディレクターの役割なので、ボクは期待をする立場にありません。ですが、初めて企画を聞いた時、とてもおもしろい話が来たと興奮しました。

すでに『メトロパルス』のアー写にアバターの姿で登場していたCAPSULEは、とてもVRChatにフィットしていると思いました。そして良いものが生まれるだろうとも。
もし、最新のアーティスト写真が実写だったら大きく違ったものになっていたでしょう。

ボクは、たまたまCDで視聴して買った「CUTIE CINEMA REPLAY」からのリスナーですが、CAPSULEは、その時代で、いつも質感の違う音が出てくるのがすごく魅力的だと思います。ライブ発表後に話を聞いても、みな心に残っているアルバムがバラバラで、すごく広く刺激を与えているユニットだと感じます。

――ReeeznDさんは実写もXRライブも両方経験されていますが、今回のVRライブで初めて挑戦、経験したことなどはありましたか?

ReeeznD:
今回はキヌさんに演出監修をお願いしていますが、自分以外に演出監修を入れるということ自体が初めての経験です。

ボクは、演出から監督まで1人でやるスタイルなのですが「VR内で展開するライブ」という形のものは初めてでした。

規模の大きなライブになることはわかっていたため、いつも最高のVRライブをしているキヌさんに監修で入ってもらえるようお願いしました。キヌさんと制作チームの意見で、演出がかなり良いものにアップデートされました。

――今回演出監修にキヌさんが起用されていますが、キヌさんの演出に対しての感想をお聞かせください。

ReeeznD:
キヌさんは楽曲から自分で作成するアーティストで、演出力、楽曲を理解する解像度の高さが凄まじい。「CAPSULE LIVE in VRChat メトロパルス」は、基本的にはボクが演出を行っています。キヌさんには定期的にそれを見ていただき、監修の立場で引き上げてもらうような体制で進めました。

キヌさんは、ボクが見つけられていない楽曲の良い部分を見つけ、そこに具体的な演出を交えて意見を出してくれるのでとてもたのもしい存在でした。特に「ライブ開始時の演出は非常に重要」と、かなり具体的に演出をつけてくれました。

――今後挑戦してみたいVRを活用したコンテンツ(ライブを含む)の構想などがありましたら、お聞かせください。

ReeeznD:
すでに、いくつも作りたいVRのMVの構想がありますが、具体的な内容は秘密です。
またApple VisionProなどパワフルなMRデバイスに向けて、VR演出を現実世界に持ち出す事も試してみたい領域です。

演出監修:キヌ インタビュー

ーー今回VRChatでのライブを終えた感想を教えてください。

キヌ:
とても素敵なライブにできたと思います! CAPSULEさんの初VRChatライブなので、これまでと違う方やこれまでどおりの方、様々な方に来てもらえたのではと思うので、とにかくみなさんの感想を検索してます。
 
ーー準備からライブまでの過程で、個人的に驚いたことや強い関心を持った事柄があれば、お聞かせください。

キヌ:
音が空間に寄り添ったものになったのがとてもよかったです。こういった制作ではワークフロー的な難しさもあり音までしっかり演出するのが難しい場合もあると思うんですが、今回はそもそも中田さんがVRやVRChatへの造詣が深かったのと、中田さんが実際に空間に入った上で音の処理やアレンジまで作り込んでいただいていたので、とても良いものになったと思います。アーティスト自身がVR空間を感じて制作すると良くなることに確信を深められました。
 
ーー今回のライブ演出で特に注力したのはどのような部分ですか?

キヌ:
今回の制作ではReeeznDさんの演出を最大限活かすことに注力しました。初稿の時点で素敵なものが見えているようだったので、ReeeznDさんが思い描いているところまでどうやって近づけばいいかを考えて、特に曲と演出、演出と演出の間をつないでいこうとしていたように思います。
 
ーー中田ヤスタカさん、ReeeznDさんと一緒に制作をされていた際のご感想をお聞かせください。企画を相談した際の印象的なエピソードなどもあればお聞かせください。

キヌ:
中田さんがVRChatで色々と楽しんでいるのを窺い知れたのがよかったです。ライブをやるというだけでなく、それをきっかけにVRChatの文化や楽しさに触れてもらえているのが嬉しいです。
 
――キヌさんの中では、CAPSULEというユニットの魅力はどのようなものだとお考えでしたでしょうか? またCAPSULEがVRChatでライブをすることで、どういった力が発揮されるとお考えでしたか?

キヌ:
キラキラしてたりしっかり踊れたりおしゃれだったりな曲たちの中で不意にトゲが刺さるところ。たまたま「world fabrication」を知ったのがきっかけだったのでその印象が強いのかもしれません。
メトロパルスの曲やMVの空気感は、VRととても噛み合いそうで、きっと良いものにできると思ったので、ライブを見るためにVRChatに初めて来た方々など多くの方にもこの世界を好きになってもらう機会にできるんじゃないかと思っていました。
 
――これまで多くのバーチャルライブを披露されていますが、演出や制作をする上で大事にしていることはどういったことでしょうか?

キヌ:
アーティストがステージに立って音を発した瞬間に全てが呑み込まれていく感覚が大好きなので、それに通じる感覚が生み出せたらいいなと思っています。もう少し具体的なところでは、曲や音がもっている感情や質感を大事にすることを意識しています。例えば、ライブの冒頭でふわっとした音から強い音で一気に曲が始まるので強い演出があってほしい、とかです。今回の場合は、バーチャルな世界にCAPSULEが現れる瞬間にはすごいことが起きて欲しい気持ちもあったので、必ずしも音だけではないですが、あの音でなければあの演出にはならなかったと思います。
 
――今後挑戦してみたいVRを活用したコンテンツ(ライブを含む)の構想などがありましたら、お聞かせください。

キヌ:
今まさにつくってるので内緒です!

「CAPSULE Live in VRChat “メトロパルス”」再演情報

2023年8月12日(土) 20:00 開場19:00、開演20:00開演
2023年8月19日(土) 20:00 開場19:00、開演20:00開演
アクセス方法などの詳細はこちら。


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