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【XR Kaigi 2023】「STYLY」が見据える「空間を身にまとう時代」とは? 新体験を生み出すディレクターが実践内容を語る

XR/メタバースをテーマとした国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi」が今年度も開催されました。今年の「XR Kaigi 2023」は、「さらに未来に近づく10年へ」をテーマとし、オンライン/オフライン(ポートシティ竹芝内)で計60以上のセッションが行われました。

今回はその中から、12月22日実施のセッション「空間コンピューティング時代のクリエイティブディレクターの役割とは」をレポート。登壇者は、株式会社STYLY松岡 湧紀氏です。

「空間を身にまとう時代を作る」を掲げるSTYLY

セッション開始前に、STYLYの広報担当の森逸崎 海氏より概要の説明が行われました。2023年を「大手各社からMRデバイスが相次いで発表されており、XR業界では大いに盛り上がった」と振り返り、「業界外でも注目も高まっている。デバイス普及に伴うサービス、文化や経済活動が一層加速するのではないか」と述べました。

STYLYでは、タイトルに題した「空間コンピューティング時代」を「空間を身にまとう時代」と解釈しているとのこと。ライフスタイルの一環として「空間を身にまといながら過ごす」時代に、クリエイティブディレクターがどういう役割を担うのか……というテーマです。

STYLYでは、創業当時から「空間を身にまとう時代を作る」をバリューに掲げてきました。提供しているサービス「STYLY」は、デジタルとフィジカルをつなぐ空間レイヤープラットフォームで、メタバース業界の中でもファッション・アート・カルチャーの分野で成長してきました。「リアルメタバース」という、現実の世界に紐づいたかたちでコンテンツを配信しています。

例えば、STYLY上には都市空間のテンプレートが用意されており、WEBブラウザで公開ボタンを押せば、誰でも都市空間にオブジェクトを配信できます。

このSTYLYを軸にして、「NEWVIEW」と「都市型XRエンターテインメント」という事業が推進されてきました。NEWVIEWではPARCO・ロフトワークと共同で、XRクリエイターの育成・発掘を実施。都市型XRエンターテイメントでは、実空間の都市の価値を高めていく事業を展開してきました。

なお、これらの取り組みを経て、STYLYのアーティストは約8万人、作られた空間数は約11万件、アプリのダウンロード数は500万件以上を達成しています。

現実に無数のレイヤーを広げていく取り組み

ここからは、STYLYのクリエイティブディレクター松岡 湧紀氏に広報から質問を投げかける形でセッションを実施。松岡氏は、以前広告会社で活動していましたが、NEWVIEWプロジェクトと出会い、XRやSTYLYの面白さを知って旧Psychic VR Lab(現STYLY)に参画。現在はXRコンテンツの企画から制作まで担当しています。

松岡氏は「空間を身にまとう時代」を、「誰もが自由自在に、物理的制限のない空間の情報レイヤーを操ることができる時代」と定義しています。

松岡氏は、空間の情報レイヤーを「都市や施設など公共空間のパブリックなレイヤーと、自分の半径1mのような身の回りのパーソナルなレイヤーが、ライフスタイルの中にある」と考えているとのこと。その中でSTYLYは、すべての空間の情報レイヤーを包括するプラットフォームを目指しているそうです。

例えば、現実の渋谷は世界に1つしかありませんが、空間の情報レイヤーを操れるようになると、その上にUGC(User Generated Contents)のレイヤーや、STYLY公式が提供するレイヤー、企業が作ったレイヤーなど、渋谷に無数のレイヤーができるそうです。

具体的なケースとして、キズナアイの歌唱特化型AI「#kzn」のXRライブを紹介。こちらは、渋谷でSTYLYを起動すると、スクランブル交差点前に#kznが現れてライブをするコンテンツです。松岡氏は、「序盤はAR的な表現から始まり、全面が覆われてVR的な表現になったり、グラデーションになって混ざりあったりと、面白い表現になった」と明かしています。また「AIR RACE X」では、空のF1と呼ばれる小型飛行機のレースをARで展開し、街の中で臨場感のある体験ができるようになりました。

その他にも、NFTブランド「BOSO TOKYO」「NEO TOKYO PUNKS」ともコラボし、ブランドの世界観を体験できるコンテンツも制作。同じ渋谷でも違うコンテンツが配信されていることについて、広報の森崎氏は「テレビのリモコンをカチャカチャ変える感覚」と例えています。

これまでの事例は渋谷の話でしたが、東京・関東はもちろん、全国では九州や鳥取、新潟、関西、東北でも数多くのプロジェクトを展開しているとのこと。

これだけ多くのユースケースを作る理由を、松岡氏はSTYLYの目指す「空間を身にまとう時代」が実現するまでのステップであると解説。「まずは誰もがXRのコンテンツを作れるプラットフォームを提供し、その上でクリエイターたちがコンテンツを作って、それを体験する視聴者がいたり、ビジネスや課題を解決したり、エンターテインメントとして興行していくことで、都市の中でのエコシステムが生まれていく」と述べています。

「そうしてユースケースが出来上がると、MRグラスが日常的に利用するようになり、都市で展開されていたものがパーソナル化する」と、意図を明かしました。

体験設計におけるプロトタイピングの重要性

「空間を身にまとう時代」のクリエイティブディレクターについて、松岡氏は「まだ誰も体験したことのないユースケースを具現化する」役割と述べました。

体験を作るためのアプローチとして、実現したいことから体験設計を考えるのが一般的ですが、XRの場合は体験設計をもとに何が実現したいかを考えるやり方もあるそうです。

一般的なステップでは、情報収集から仮説立て、課題を特定してどうアプローチするか考えていきます。しかし体験を伴う場合、体験を軸にして何度もリライトしていくプロセスが必要とのこと。「仮説を立ててプロトタイプを作り検証する1サイクルを、1週間に1回やって4回繰り返すのが重要」と述べています。

このやり方のメリットとして、最終的な体験の精度も速度も上げられる強みがあります。誰も体験したことのないものは、想像で語りあっても噛み合わないまま議論が進むことがよくあるそうです。そのため、「実際に体験ができるものを作り、それと向き合って議論を進めるスタイル」を大切にしているとのこと。

STYLYの場合、プロトタイピングの面でも優れているそうです。WEBブラウザ上でXRコンテンツを簡単に作り、パブリッシュを押してデバイスを起動すると、即コンテンツを体験できます。例えば実際の現場で、「このインフォメーションはなしにして、もっとパーティクルや演出を入れよう」といった変更が可能です。

XR体験を実現するため、実際に行ったこと

ここからは体験設計について深掘り。XRはHMDで深く没入するものもあれば、スマートフォンでより多くの人に視聴してもらったり、配信でAR的なエフェクトを掛けて視聴したりと、色々な形があります。

重要なのが、実現したいことのためにひとつに絞るのではなく、特性を活かしてトータルでデザインしていくことです。例えばひとつのXR体験があったとき、VRだと没入できるけれどHMDの数が限られたり、視聴者を増やすため配信が必要だったり、現地に来られない人がいるなどがあります。どちらかに絞るだけでなく、両取りできるようトータルで考えることを大事にしているそうです。

前述の「AIR RACE X」の場合も、体験だけでなく体験の質や量を上げ、会場のコーディネートも含めてトータルで考えていました。XRの場合どう導入していくかも重要で、急に見せられると没入の度合いが低く心に残らないことも。丁寧に世界観や裏側の原理を説明すると、「こういうことが伝えたい体験だったんだ」と深く浸透していくそうです。

実際のプロジェクト例として、「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2023」を紹介。アーティストの長場雄氏とコラボした他、有明のビル群にARで装置を表示して、街が循環しているさまをポップな世界観で表現しました。

最初にボールが街を循環しているアイデアが出た際、「本当に面白いのか?」という疑問があったそうです。そこで、玉が転がる簡単なプロトタイプを作り、各方面のステークホルダーの方と見て、「こうしたらもっと面白くなりそうじゃないか」「ここにギミックを入れたら分かりやすい」と繰り返し、完成版の体験に至りました。

テスト期は真夏の炎天下だった模様。現地で体験する人と同じ導線を辿ると、日差しが強すぎてスマホの画面が見えない、暑すぎて熱中症になるなど、フォロー・ケアすべきところが見えてきたそうです。

そのため現地では来場者に日傘をレンタルし、XR体験を担保しつつ、より安全・快適に体験できるようフォローしました。

あらためて、「まだ誰も体験したことのないユースケースを具現化する」場合、体験しながら作ることが大切で、その上でSTYLYは最適と述べています。今後「提案フィールドはデスク上から空間そのもの」になっていくことがこれからのフェーズだそうです。

STYLYが求めるディレクター像

最後に、STYLYではディレクターやパートナーを求めており、広報から松岡氏に質問を投げかける形で進行。「クリエイティブディレクターの仕事の面白さは?」という問いに対し、松岡氏は「答えのないことを創り続ける面白さ」と解答。

また、「STYLYのクリエイティブディレクターに今なる魅力」には、「STYLYというプラットフォームに文化や産業が起きてきて、今まで結びつかなかったヒトや企業が共創する面白さがある」とのこと。異文化と交信して新しいものを作っていきたい人には魅力的なチャンスがあるとのこと。

「どんな仲間と一緒に働きたいか」に対しては、「自分がいる世界とは異なる世界に好奇心を持っている人や会社と一緒に仕事をしたい」と述べました。実際には、行政やデベロッパー、通信社やテレビ局と仕事をしてきましたが、個人のクリエイターと一緒に課題を解決することもあったそうです。

STYLYではディレクターや、XR制作パートナー企業・クリエイターを募集中です。

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