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セミナー 2021.12.29

【XR Kaigi 2021】産業から熱視線 生体センターてんこ盛りのVRヘッドセットの活用事例

国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2021」はオンラインカンファレンス「XR Kaigi Online」(11月15日~17日)と、リアル会場での展示・体験会「XR Matsuri」(11月25日・26日)のハイブリッドで実施。XR Kaigi Onlineでは、3日間の期間中に50以上のセッションが行われました。

今回はその中から、11月16日に行われた日本HPのセッション「Sensored HMDが切り開くVRの未来」をレポートします。セッション登壇者は日本HPのビジネス開発マネージャー・島﨑さくら氏。セッションでは、日本でも今冬から提供が始まる「HP Omnicept Solution」について、海外での導入実績や活用事例も含めて紹介。あわせてHPのVRに対するビジョンについても語られました。

法人需要が拡大するHP Reverb G2


(HP Reverb G2はPCに接続して利用するタイプのVRヘッドセット)

島﨑氏はまず、HPが提供するVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)HP Reverb G2を紹介しながら、VRの普及による需要の変化について解説。

コアユーザーから一般層へ、シミュレーションやゲームだけだったところから建築・医療・教育現場へと、導入が広がるVR。さまざまな用途へと拡大する需要に対して、HPが提供するのがHP Reverb G2です。HP Reverb G2は日本国内で第3位の出荷台数をほこり、また、法人需要が広がる中で、特に建築・製造業では必須ともいえる業務アプリケーションの動作検証をハードウェアレベルで行っているのが強みだとしました。

「HP Omnicept」とは

続いて話は、Reverb G2の最新型である「HP Reverb G2 Omnicept Edition」の話に移ります。CES 2021 INNOVATION AWARDを始めとする多くの受賞歴をもつVRHMD「HP Reverb G2 Omnicept Edition」。日本でも今から提供される「HP Omnicept」は、そのHP Reverb G2 Ominicept Editionと、クラウド上に展開されるシステムで構成されています。

(HP Reverb G2 Omnicept Editionは複数の生体センサーを搭載したVRHMD)


(HP OmniceptはHP Reverb G2 Omnicept Editionとつながるプラットフォームを指す名称)

開発者はHP Reverb G2 Omnicept Editionに取り付けられた心拍センサー、瞳孔センサーなどを活用し、これを推論エンジン「Cognitive Load」に通すことで体験者のパフォーマンスを知ることが可能になっています。また、各種センサーの情報を利用して体験者の生理的な反応を見ることで、定量的かつ本質的なフィードバックを得ることができ、アプリケーションの改善や生産性の向上を助けます。

HP Omniceptプラットフォームについて

島﨑氏は続けて、HP Omniceptのプラットフォームの機能について解説。HP Omniceptには大きく「SDK・シミュレーター」「ライセンスの管理・認証システム」「推論エンジン(Cognitive Load)」「データ保護機能」の4つの機能があります。

中でも推論エンジンCognitive Loadは人の「脳の活性度合い」を測ることができるシステムで、エンジン開発のために約2年半、計1000人以上の人間からデータを取得したとのこと。Cognitive Loadを利用することで、体験者の脳の活性度合いをフィードバックし、脳にとって最適な情報量を与えることができているかどうかを調べることができるそうです。

また、センサーを通じて得られた生体情報はGDPR(General Data Protection Regulation、EU一般データ保護規則)に則り、匿名性をもって保護されるほか、決められた年数が経過したデータは自動的に破棄するなど、データの取り扱いにも配慮されています。

なお、HP OmniceptのSDKはUnityやUnreal Engineに対応。セッションでは実際にUnityやUnreal Engineにプラグインを追加する方法も解説されました。また、SDKやシミュレーター、ホワイトペーパーなど、開発に必要なツールや情報を集約した開発者向けポータルサイトも公開されています。


(開発者向けの公式ポータルサイトではクライアントアプリやSDKなどを入手可能)

HP Reverb G2 Omnicept Editionのスペック

セッションではまた、HP Reverb G2 Omnicept Editionに取り付けられた各種センサーとそのスペックも紹介されました。


(HP Reverb G2 Omnicept Editionには複数のセンサーやカメラが搭載されている)

アイカメラ

HMDの内側に設置されたアイカメラからはユーザーの視線や瞳孔の広がり、瞳孔の位置、目の開閉状態のデータを取得できます。


(視線追跡のほか、瞳孔の状態や目の開閉状態も測定可能)

PPGセンサー

HMDの額部分に配置されたPPG(フォトプレチスモグラム、Photoplethysmography)センサーは、皮膚に反射する光信号を使用し、組織の微小血管床の血液量の変化を検出。1分あたりの拍数(BPM)や心拍変動などのデータを取得することができます。


(心拍数だけでなく、心拍変動も測定できるPPGセンサー)

フェイスカメラ

HMDの下側に配置された赤外線カメラからはグレースケール画像のほか、合わせて配置されているIMU(慣性測定ユニット)のセンサーデータを取得することが可能です。


(HMD本体用のIMUとは別に、フェイスカメラ用のIMUも搭載されている)

HP Omniceptの活用事例

続けて、島﨑氏はHP Omniceptの海外での3つの活用事例について紹介しました。


(HP Omniceptの活用事例。セッションでは海外の事例が3つ紹介された)

最初に島﨑氏が紹介したのは、危険トレーニングなどのVRコンテンツを手がけるPIXO社の事例。建築や製造現場などでの安全トレーニングを行う際に、熟練者のデータとVR体験者のデータをリアルタイムに表示し、熟練者の視線や動作を共有しながらトレーニングのゴールとして活用することで効果的なトレーニングを実現したとのことです。

また、体験者の緊張状態などを測ることで、過度な緊張状態でトレーニングに適していないと判断した場合にはトレーニングのシナリオ変更や中止も可能だとしています。


(人前でのスピーチをVRでトレーニング。要改善ポイントをリアルタイムで指摘)

次に紹介されたのは、パブリックスピーチのVRトレーニングを手がけるOvationの事例。1分間あたりの単語数や会場への目配りの記録、フィラー(「あー」「えっと…」など、間を埋めるための言葉)のカウント、目線の動きに関するデータなどをリアルタイムでフィードバックし、体験者のプレゼンテーションにおける弱点を可視化しています。


(人の行動データを元に、施設や乗り物の設計をより使いやすいものにするためのデータを提供)

最後に紹介されたのはTheia Interacive社の事例。ユーザーの先入観や外部からの影響を受けずに、分析データを設計やマーケティングの専門家にフィードバックを提供するVRコンテンツが紹介されました。

この事例では、UIレイアウトやデザインに対するフィードバックのほか、ユーザーがサインを見つけて的確に動くことができるかなどのシミュレーションを行い、ユーザーの誤った行動や混乱を防ぐためのフィードバックを得ることができると解説されました。


(さまざまな分野でHP Omniceptの活用が期待できる)

その他、HP Omniceptにはさまざまな分野での活用が期待されるという島﨑氏。トレーニングでは自己分析を通じた弱点克服、クリエーションではデザインに対するユーザーの好感度モニタリングやUIのレビュー、ウェルネスにおいては心理状態の把握と変化の観測、コラボレーションではフェイスカメラを利用したリアリティのあるコミュニケーションなど、今後のHP Omniceptの活用についての展望を語りました。


(セッションではHP Omniceptの料金体系も紹介。学校法人向けのアカデミックライセンスもある)

HPが目指すVRの未来

島﨑氏は最後に、今後のHPのVRソリューション展開について説明。HPではこれまでPCVRの領域で没入感やインタラクティブ性に重点を置いたVRHMDやソリューションの提供を行なっていたが、今後はPCVRに限らず、トレーニングや初等教育に最適なVRHMDについても提供していくと述べました。

また、HPとともにソリューションの開発を行うVRソリューションパートナーの紹介も。企業からの相談受付はもちろんのこと、パートナー参画も呼びかけつつセッションは終了となりました。


(PCVRだけでなく、スタンドアロン型VRHMDにもソリューションを拡大予定とのこと)


(HPのVRソリューションパートナーには現在51社が参画している)


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