Home » 放送直前!VTuber主演ドラマ「四月一日さん家の」テレビ東京プロデューサー・五箇氏インタビュー


VTuber 2019.03.23

放送直前!VTuber主演ドラマ「四月一日さん家の」テレビ東京プロデューサー・五箇氏インタビュー

テレビ東京が打ち出した、VTuberが主演のドラマとして話題となった「四月一日さん家の」。今回、主演を務めるVTuberの方々や、テレビ東京で本番組の制作を手掛ける五箇プロデューサーにインタビューする機会を頂きました。


(テレビ東京・五箇公貴プロデューサー 通称・ごかP。VRの世界にやってきたためカブトムシの姿になっている)

今回は第2弾、本番組を制作するテレビ東京・五箇公貴プロデューサーのインタビューをお送りします。番組がどういった思いや考えで作られているのか?といった部分から、よく見るVTuberは?といったことまでお話いただきました。番組放送の直前となった今、ぜひお読みください。

前回の記事:

ーー「VTuber主演ドラマ」という初めてのお取り組みですが、この番組を企画制作したきっかけを教えてください。

五箇公貴プロデューサー(以下、ごかP):
これまで深夜ドラマなど様々な番組をやってたんですが「全然違った角度から、変わったことがやりたい」と思っていました。そんなときにVTuberという存在を知って、これはとても面白いし、可能性もあるなと。初音ミクさんのような存在や、3D/2Dアニメとも違う。VRの世界で実際に生きている存在という、新しいものだなと。

そこで、先人であるキズナアイさんたちのことを研究をして。この水準の表現力があるのであれば、テレビがやってるドラマのようなことができるんじゃないか、と思いました。特性を研究したところ、一人で配信してることが多いから、一番向いてるのは「ワンシチュエーション・ドラマ」だと持ったんです。

そこで「やっぱり猫が好き」という三谷幸喜さんが脚本を手がけた80〜90年代コメディドラマのような「三姉妹が一つ屋根の下で暮らしている」という、ほのぼのした可愛い話をやったらマッチするんじゃないかと思いました。

そして2018年夏頃から『勇者ヨシヒコ』『ゲームセンターCX』を手がけた酒井健作さんと企画書を作っていました。VTuberのことは、たぶんテレビ東京の偉い上層部の方には伝わりづらいかな、と思ってたんですが、たまたまeスポーツやVTuberとか、テレビ東京内が新しいものに対して貪欲な時期で「これ、面白いからやっていいよ」と、スルッと企画が通ってしまったんですね。え、通るんだ、と(笑)

ーーなるほど(笑)そこから企画を詰めていった形なのですね。

ごかP:
そうですね。ただ最初のコンセプトは変わらなくて、「VTuberドラマ」という言い方は初期から決まっていました。いわゆる実写の世界で面白いものを作っている脚本家・演出家の方々であれば、VRの世界に置き換えたとしても面白いものができるだろう。という考えのもと、「スタッフ一丸となってVRの世界に乗り込んでいく」「VTuberの方と一緒に面白いものを作る」という理念はブレてませんね。

ーーVTuberさん本人が、俳優のように「テレビドラマの役を演じる」というのは新しい試みだと感じました。

ごかP:
本人が本人として確立していることが重要なんでしょうね。たとえば女優でいうと、綾瀬はるかさんは「海街diary」で「綾瀬はるか」本人ではない四姉妹の長女役「香田幸」を演じています、それと同じです。それをVRに置き換えれば、いままで実写で我々がやってきたことと地続きになります。女優として、ときのそらさんたちにドラマに出てもらう。考え方としてはそこですね。


(「四月一日さん家の」出演VTuber・ときのそら(写真左)、猿楽町双葉(写真中央)、響木アオ(写真右) )

ーー実際に制作に入ってみて、既存のドラマ制作との違いや面白さ・難しさはありましたか?

ごかP:
すごく色々あって、どこから話せばいいか……(笑)一番は、実写の映画・ドラマを作っている監督、脚本家、製作スタッフと、VRを作ってるテック系のクリエイターが、一緒になって台本を読みながら話をしていくわけですよ。そうすると、まずお互いの言語が違う。

たとえば、このシーンをもうちょっとタイトにしてくださいとか、このアングルをちょっといじって下さいとかも、「それはどこを起点として言ってるんですか?」という話になったり、「一花が、隣の部屋にいって本棚に本を戻してきます」という台本があったら、VRサイドからは「本棚のどこに戻せばいいんですか?」という話が出てくるんです。で、僕らは「適当でいいですよ」というと「適当じゃ困ります(怒)」って……(笑) VR上の座標のどこどこで……という厳密な指定が必要なんですよね。

作品の表現についても、役者が歩み寄るって画を作るか、VR内のカメラが歩み寄って画を作るか、そのどちらを取るかで表現も異なりますし、VRで何ができるのかについて、VRサイドと実写サイドの話し合いも重ねていきました。お互いに「なんでこの表現ができないんだ」と最初は思ったりするのですけど、結局はVRも実写も、製作スタッフはモノづくりに情熱ある人の集まりだったので、お互いに歩み寄ろうとしてくれるんですよ、新しく良いものを作ろうと。そこは感動しましたね。

ーーVR技術の部分と、テレビ局の手がけてきた実写の番組制作が上手く協力し合ってできたんですね。

ごかP:
映画やドラマを撮影するときの、セットの中のどのアングルを切り取ればいいか、どの方向に顔を向けて目線を向ければよいか、という演出面などは、実写サイドの人は確かな判断基準を持っているので、そこをVR上で実現するためにVRサイドの人が汲み取る…といったように、お互いに補完しあって番組ができたのだと思います。

ーー番組収録前後で、VTuberに対するイメージは変わりましたか?

ごかP:
表現力のある人が想像以上に多いな、と思いました。あとは、向き不向きとか、女優に向いてるタイプ、一人で配信するのに向いてるタイプ、など分かれてくるんだなと。

いまは自分でトークやって、実況やって…という人が多いと思います。一方で、コミュニケーションは上手じゃないけど、歌、踊り、演技なら負けない、という才能が活躍できる場所も増えてくるんじゃないかと思いました。実際にそういう人たちはたくさんいるんだろうし、見てみたいと思いましたね。今後もこの作品以外にも関わることがあれば、一緒に仕事をしたいと思います。

ーー今回の番組製作で、特に部分でこだわった部分などありますか?

ごかP:
今回は、もちろんVTuber好きの人にも見てもらいたいんですけど、同時に「VTuberのことを初めて聞いた」「なんとなくしか知らない」という人たちに、VTuberという凄い方々がいて、彼女たちも人の心を動かす作品をれる、ということを知ってほしいですね。新しいエンターテインメントがまさにそこにあることを。

あとは、女の子が見たときに「この三姉妹可愛い!一緒に住んでみたい」と思ってもらえるように、そこには気を使って作りました。

今後、VTuberのエンターテイメントは増えてくると思いますが、我々も全力でVTuberという文化を盛り上げていきたいと思いますので、ぜひ応援してほしいし、一緒に頑張りたいと思います。

ーーありがとうございます。ちなみに、五箇さんがVTuberの動画を見る機会は増えましたか……?

ごかP:
ああ、すごく増えましたね(笑) 見てる人はけっこう色々いるんですけど、KMNZは音楽の趣味が合うので好きで、ときのそらさん、響木アオさんも見るし……あとはゲーム部プロジェクトは面白いですね!テレビ東京には相内ユウカアナ、七瀬タクもいますし、あと輝夜月さんも、アートワークのセンスなどとてもいいですね……Mika Pikazoさんのクリエイティブに独特なものを感じるので、刺激になります。あとは、日雇玲子さん!大阪のドヤ街に行く動画とかはジャーナリスティックでもあり、興味深く見てましたね。あとおめシス、織田信姫さんも好きです!

ーーなるほど、様々なVTuberの方の動画も見られてるのですね……!本日はありがとうございました!


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード