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【VR映画ガイド第70回】911を忘れない。VRで記録された最後の生存救出者

アメリカ同時多発テロ事件から2021年で20年が経過

今回は「Surviving 9/11 – 27 Hours Under The Rubble」を紹介します。以前、この連載でも紹介した「When We Stayed Home」や「Rebuilding Notre Dame」を制作したTARGOによるVR映画です。

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9月11日アメリカ同時多発テロ事件から20年。今作はグラウンド・ゼロの瓦礫の中から救出された最後の生存者、GuzmanMcMillanさんに焦点を当てています。

テロにより世界貿易センターのツインタワーが崩壊したとき、多くの人々がまだタワーの中にいましたが、生き残った人はほとんどいませんでした。GuzmanMcMillanさんはその時、港湾局の事務所の臨時雇用者としてツインタワーで働いていました。事件による崩壊後、彼女は建物の瓦礫の下に27時間閉じ込められることに。その時の様子が彼女によって語られ、再現されています。

また事件以来初めてグラウンド・ゼロに戻った彼女の様子やテロ前のニューヨークと現在の対比など、記憶に残るドキュメンタリーになっています。

オススメのポイント

1.よみがえったツインタワー

今作の重要な要素の1つが911で崩壊した世界貿易センターのツインタワーをVRで見られることだと思います。また911以前のワールドトレードセンタープラザを歩いたり、展望台からの景色やニューヨーク市のスカイラインを眺めたりできます。

このアイデアは1990年代に写真家たちが世界貿易センターを360度写真を撮っていたことを偶然知ったことから始まったそうです。360度写真を撮っていた写真家を探し出し、元のネガを保存している人を見つけることが必要でした。

その後、写真のネガを8K360度3Dビデオに変換するという未知の領域の作業に取り組んでいます。各画像のネガをスキャンし、それらをステッチ。AIで8Kサイズにしてノイズを除去し、手動で再ペイント。奥行きを加え、3D変換。そして最後にいくつかの要素をアニメーションさせることで、時間の経過による動きの錯覚が生じさせています。

この途方もない作業の結果が、911以前のニューヨークにタイムスリップさせてくれます。

2. 過去と現在の映像の見せ方

TARGOはこれまでにもcovid-19で静まり返った街並みや、ノートルダム大聖堂の焼失前後の姿をとても印象的に見せてきました。

今作ではアメリカ同時多発テロ事件が起こる前のニューヨークと、現在のニューヨークをとても印象的に見せてくれます。2つの映像のブレンドのさせ方はツインタワーという明確なものがある分、明示的です。

今回は20年以上時が離れているので、ツインタワー以外の部分も街並みは変わっている部分は多いです。どこが変わっているのか何度も繰り返して見たくなるような効果的な見せ方であると思います。

3. VRであることの意味

過去と現在をVRで比較することは、これまでのフレームで切り取られた映像の比較より、形容するのが難しいのですが、空気感の違いは感じられると思います。事件前のニューヨークの喧騒と現在のニューヨークの喧騒の違いを肌で感じ取る感覚に近いのではないでしょうか。これはVRでしかできない体験です。

TARGOは、VRであることによってGuzmanMcMillanさんの話を1対1で聞くことができ、体験者がアメリカ同時多発テロ事件の生存者との出会いを可能にすると言います。

黒人旅行者が安全に寝食できる場所をリストしたグリーンブックについて取り上げた「Traveling While Black」(Felix & Paul Studio/2019)というドキュメンタリーがあるのですが、ここでの体験に通ずるものがあります。黒人がグリーンブックにない場所で感じる危険や恐怖について、当事者である黒人がまさに眼の前で語るのです。

今作でも、GuzmanMcMillanさんが閉じ込められたことについて語ります。そこにいて話している感覚の仮想体験はVRにしか表現できないものでしょう。

また、TARGOのVictor AgulhonとChloé RochereuilはVRは歴史保存のゲームチェンジャーであるとインタビューで答えています。体験者は映像に入り込み、すべては体験者の周りでまさにその時に起こります。VRによって過去に起こったことではなく、今眼の前で起こったことになり、即時の関連性を生み出すのはVRの大きな力であるのは間違いないと、私も考えます。

作品データ

タイトル

Surviving 9/11 – 27 Hours Under The Rubble

ジャンル

ドキュメンタリー

制作プロダクション

TARGO

制作年

2021年

制作国

フランス

本編尺

20分20秒

視聴が可能な場所

Oculus TV

https://www.youtube.com/watch?v=ABKDJk2ZGs0

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