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VIVE 2023.02.07

HTC新型XRヘッドセット「VIVE XR Elite」先行体験! VRもMRもいける、メガネ型にもなれる万能機の予感

1月6日に発表された、HTCの新型XRヘッドセットVIVE XR Elite。小型軽量かつ高画質で、従来のヘッドセット型にもメガネ型にも変形可能、さらにMR(Mixed Reality)表現にも対応しているなど、盛りだくさんなスペックから多くの注目を集めています。

MoguLive編集部は今回、この「VIVE XR Elite」の先行体験会に参加。よりどりみどりとも言える新機軸のXRヘッドセットの実力を体験してきました。

おさらい:VIVE XR Eliteとは?


「VIVE XR Elite」は、1月6日にHTCが発表した新型XRヘッドセットです。ヘッドセット単体で動作する一体型ヘッドセットであり、かつVRに加えてMR表現にも対応しています。

解像度は片眼1,920×1,920ピクセル、最大リフレッシュレート90hz、視野角は110°と高水準でまとまったスペックながら、本体重量はバッテリー込みで625gとやや軽量。バッテリーを取り外して、より軽量なメガネ型としても使用できるのが特徴です。

さらに、ヘッドセット外部の映像をフルカラーで表示できるフルカラーパススルー機能も搭載しており、VRだけでなくMRにも対応したデバイスとして打ち出されています。

本体単体ではVRアプリケーション配信プラットフォーム「VIVEPORT」の対応アプリケーションを実行できます。一方、PCと接続してSteamVR対応アプリケーションもプレイすることができます。PC接続は無線・有線両対応で、無線接続はWi-Fi 6Eに対応しています。

本体チェック:びっくりするほど軽く、コンパクト

こちらが「VIVE XR Elite」の実機です。写真2枚目の左側が「ゴーグル型」モード、右側が「メガネ型」モードです。

ゴーグル型はバッテリーが搭載され、ヘッドセット単独で動作します。稼働時間は最大で約2時間。後頭部からダイヤルを回して頭部に固定するスタンダードな構造ですが、従来機種とくらべて全体的にコンパクトになっています。

HTCの一体型VRヘッドセット「VIVE Focus 3」(写真右)と比較すると、小型化の度合いは一目瞭然。当然ながら、本体重量も軽くなっています。

トラッキング方式は、本体の4基のカメラを用いたインサイドアウト方式。トラッキング用カメラに加えて、正面中央下部にパススルー用カメラが、直上に深度センサーが設置されています。

左右のレンズには焦点距離調整ダイヤルが搭載。レンズ部のダイヤルを操作して焦点を調整、視力0.1程度であればメガネなしでVR体験ができるとのことです。IPD(瞳孔間距離)も54〜73mmの幅で調節可能です。

フェイスクッションはマグネット式で簡単に脱着できます。素材は芯はありつつもやわらかめ。


そして最大の特徴が、ゴーグル型からメガネ型へ”変形”できる点です。ゴーグル型のときに、後頭部のバッテリーを取り外し、テンプルパッド(メガネの「つる」の部分)を差し替えればメガネ型へと変形します。

メガネ型になると、本体重量は圧倒的に軽くなります。やや大型なスキーゴーグル程度の重さで、「Meta Quest 2」はもちろん、「PICO 4」よりも圧倒的に軽量。フェイスクッションを外せばメガネのように折りたたむことができ、持ち運びが非常に容易になります。

メガネ型時の重量を計測してみると、なんと273.5g。以前、筆者が計測した「PICO 4」の588.5gをはるかに超えてくる軽さでした。

そして、取り外したバッテリークレードルは353.5g。メガネ型状態の本体よりも重いです。「取り外したバッテリーのほうが重い」というデバイス構成はなかなかにめずらしく、「VIVE XR Elite」の大きな特徴とも言えるでしょう。

メガネ型のときには給電をUSB Type-Cケーブルで直接行います。この状態でもデバイス本体に多少の電源が用意されており、バッテリーなどの給電が絶たれても直ちに電源が落ちません。いわゆる「ホットスワップ」です。したがって、予備のバッテリーがあれば、コンテンツを起動したままその場で交換して稼働時間を延長する、といった運用もできます。

コントローラーは「VIVE Focus 3」と同一。2ボタン・1スティック・リングパーツありのスタンダードなコントローラーで、グリップ部分は少し長め。乾電池などを使うタイプではなく、充電式です。

体験①:メガネ型でお手軽MRライブ体験

実機体験に移ります。今回は「メガネ型」「ゴーグル型(スタンドアロン状態)」「PCVR連携」の3軸からコンテンツを体験しました。


まずはメガネ型モードで装着。ケーブルはポータブルバッテリーに接続されています。言わずもがな軽く、フェイスクッションのつけ心地も良好です。テンプルは後頭部まで保持してくれますが、強くはないので激しい動きには弱いと思われます。また、テンプルの先端はやや固めで、数時間連続で装着する場合は痛くなるかもしれません。

体験したのは、XRコンテンツプラットフォーム「STYLY」で公開されているMRコンテンツです。筆者が体験したのは、クリエイターのYORIMIYAさんによるMRライブコンテンツです。


眼前にYORIMIYAさんのアバターが登場! 「VRChat」で見るパーティクルライブのような、アーティストと視覚効果が重なり合うコンテンツです。これが現実の光景にしっかりと重なって表示されており、回り込んだり、少し下から見ることもできます。まさに「VTuberが目の前にいる」とでもいうべき体験です。

体験してみて瞬時に気付かされたのが、パススルー機能によって表示される映像の鮮明さです。フルカラーでチラつきもなく表示され、解像度も非常に高く、文字まではっきりと読み取れます。


さらに、遠近感も適切に表現されていました。肉眼で見ているときと変わらない遠近感なので、ものを手に取るのはもちろん、ヘッドセットをつけたまま歩き回り、段差を上ることも問題なくできました。ヘッドセットを装着していないときと大差ない感覚で動き回れる、というのが正直な感想です。

言ってしまえば、「PICO 4」の鮮明さと「Meta Quest Pro」の適切な遠近感が両立した、理想的なパススルーが実現しています。仕組みとしては正面の単眼カメラで取得した映像を、独自のアルゴリズムによって補整し、遠近感も備わった理想的なパススルー映像を作り出しているのだそうです。

体験②:スタンドアロンでMRお絵かきに没頭

次に、バッテリーユニットを取り付けたゴーグル型の状態でコンテンツ体験をしてみました。2時間連続稼働する、最も標準的な形態です。

さて、バッテリーを取り付けた状態で装着してみて気づいたのは、その特異な重量バランスです。後頭部のバッテリーがヘッドセット本体より重い、いわゆる「バックヘビー」であり、首が後ろへ持っていかれるような感覚があります。そのおかげか、顔面への圧力はあまりあまりないように感じました。

そして、ダイヤルで締めて頭部に固定する方式のため、安定感はグッとアップ。メガネ型の状態では少し不安定になる姿勢も、臆することなくとれるようになります。

この状態で体験したのはお絵描きアプリケーションの「Open Brush」。空間に自由にペンを走らせてお絵かきができるアプリですが、このMRモードが実に新鮮でした。


「VIVE XR Elite」から見る、高精細で正確な現実世界に、コントローラーで自由に落書きをしていくような体験ができ、子どものころ無性にクレヨンを走らせていた無邪気なあの頃を思い出させてくれます。もちろん、描いたものは正確に現実世界の上に配置されます。

現実世界をキャンバスに、自由なお絵かきができる「Open Brush」は、「VIVE XR Elite」のプリインストールアプリとのこと。大人はもちろん子供まで、「VIVE XR Elite」を体験する全ての人に遊んでみてほしいアプリです。

体験③:PCとつないでVRChat検証。そして睡眠へ…

そして最後に、PCVRストリーミングモードで「VRChat」を体験しました。筆者はVRChatは1,000時間ほどプレイしているため、「普段との差」をよく察知できるタイトルです。今回はHTC VIVE公式ワールド「VIVE Wonderland」での体験となりました。

PCと接続するには、専用のハブアプリケーションをインストールしておく必要があります。初期接続設定さえ済めば、以降はほぼ自動的に接続されるとのこと。また、PC側にあるVRアプリケーションも、「VIVE XR Elite」のホーム画面へ自動的に表示される仕組みになっています。

ゴーグル型での無線接続を体験しましたが、おおむね問題なし。片眼1,920×1,920ピクセル、両眼で4K相当の画質は遺憾なく発揮されており、VRChatもしっかりきれいに表示されていました。メガネ型の状態で有線接続も検証しましたが、こちらも問題なし。基本的には、有線接続のほうが最大画質で安定して表示されます。

全体的なプレイ体験の質は良好。特にメガネ型は軽さが活きてくるため、既存のVRヘッドセットで重いと感じている人ほどありがたいと感じるはずです。一方、コントローラーは「VIVE Focus 3」と同一なので、デフォルトのキーコンフィグがしっくりこない人もいるかもしれません。適宜使いやすいように修正するのがベターです。

余談ですが、メガネ型は後頭部の凹凸が少ないため、寝転がることも容易です。ベッドに横たわったり、椅子の背もたれに身を預けたりしてプレイできるのはなかなか快適です。

法人から一般ユーザーまで。お高いが”万能”なXRデバイス

率直に言えば、想像以上によくできたデバイスでした。とても軽量なメガネ型、後ろが重いことで顔面に負荷のかからない安定したゴーグル型の2つの形態を使い分けでき、ヘッドセット単独で扱うことも、PCに接続することもできる。基本性能も申し分なく、ホットスワップなど法人向け用途でほしい機能も備わっています。

なにより、独自の機構によって実現した「理想的なフルカラーパススルー」が、競合機種である「PICO 4」や「Meta Quest Pro」に対して大きな優位点となっています。VRヘッドセットとしてはもちろん、MRコンテンツにも対応した「XRヘッドセット」として、相当に高い完成度だと感じられました。

そんな「VIVE XR Elite」は、ゲーム用途、クリエイティブ用途のみならず、ビジネス用途にも活用が見込まれているとのことです。現実のPCと接続し、PCや机をバーチャル空間に取り込んだ「バーチャルワークスペース」機能も検討されているとのことで、PCモニターを大画面かつ複数表示する「バーチャルスクリーン」と合わせて、VR空間に拡張した仕事場を提供するという構想もあるのだそうです。

また、スマートフォンとも接続可能で、「Netflix」や「Disney+」といった映像ストリーミングサービスを大画面で楽しむこともできる「ゴーグルのように身につけるポータルホームシアター」としての使い方もできるとのことです。

「VIVE XR Elite」は、系譜としては「VIVE Focus 3」に連なっていますが、同時にHTCが提供中のVRグラス「VIVE Flow」の流れも汲んでいます。このため、本デバイスは法人から一般ユーザーまで幅広く対応した「万能機」として打ち出したいと、HTC NIPPONの児島全克 代表取締役社長は構想を語りました。

「CES 2023」での発表以来、「VIVE XR Elite」は各所で非常に好評のようで、すでに予約もHTCの「想像を大きく超えた」勢いで数を伸ばしているのだそう。179,000円(税込)という価格はなかなかにお高いものの、幅広い用途に対応するその実力を評価している人は多いということでしょう。実際、筆者も体験してみて初めて、このXRヘッドセットの実力を思い知った次第です。

ひさしぶりに、HTCから手応えのある新型ヘッドセットが登場したと言えるかもしれません。今後はアイトラッキングモジュールやフェイストラッキングモジュールも展開し、さらに幅広いユースケースへと対応していくとのこと。HTCが展開中のメタバース「VIVERSE」とも接続することが予告されており、発売後もさらに幅広い用途で活躍するかもしれません。

「VIVE XR Elite」は、2月15日まで事前予約を受付中です。事前予約した人全員に、合計100ドル相当のVRコンテンツがもらえるキャンペーンも実施中です。

公式サイトはこちら。
https://www.vive.com/jp/product/vive-xr-elite/overview/


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