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VIVE 2023.01.08

HTCの新型XRデバイス「VIVE XR Elite」を体験!「VIVE」シリーズに市場トレンドを取り入れた「ライバルのいいとこどり」

日本時間1月6日(金)3時、HTCは新型XRヘッドセット「VIVE XR Elite」を発表しました。同発表のあった「CES 2023」は1月6日から1月8日まで開催中です。そこでMogulive編集部は、現地取材中の西田宗千佳氏に、早速その試用感をレポートしていただきました。

詳しい製品仕様は速報記事をご覧ください。価格は179,000円(税込)。事前予約はすでに開始され、配送は2月下旬以降を予定しているとのことです(公式発表より)。

「CES 2023」現地でHTCの新作を体験

HTCの新型HMD「VIVE XR Elite」を試してきた。ただ、シンプルなゲームデモを少しプレイした程度なので、詳細な機能などについてコメントするのは難しい。あくまで「ファーストインプレッション」レベルだが、感触をシンプルにお伝えしよう。

(HTC「VIVE XR Elite」。撮影:西田宗千佳。以下同じ)

(つけてみるとこんな感じ)

「VIVE Flow」の知見を生かした「モダンなHMD」

「VIVE XR Elite」は、「Meta Quest Pro」と同じくスタンドアローンで使えるHMDだ。プロセッサーに「Qualcomm Snapdragon XR2」を採用した点でもかなり近い。ただ、構造的には「VIVE」より、「VIVE Flow」の進化系といった方がしっくりくる。「VIVE Flow」はメガネ型でスマホ接続が前提だった。できることは限られていたが、軽量でつけやすく、画質もよかった。

(パンケーキレンズ採用でバッテリーは後ろ側に。昨今のトレンドに乗ったデザインだ)

パンケーキレンズ(編注1)を採用した薄型ボディで、重量バランスに配慮してバッテリーを頭の後ろに配置したデザインも「今のトレンド」である。メガネは併用できないが、視度とIPD(Inter Pupilary Distance:瞳孔間距離)の調整機能があり、見やすさを確保しやすい。この作りは「機器の薄さ」にも影響している。

(編注1:VRにおける「パンケーキレンズ」は、「複数枚のレンズを使い、光学的な折りたたみを行うことでVRヘッドセット全体の小型化を図る」レンズ構造全体を指すことが多い。一般的なカメラにおける「パンケーキレンズ」とは異なる)

(上が「VIVE XR Elite」、下が初代「HTC VIVE」。HMDの大きさや構造はこれだけ大きく変化した)

(視度とIPDの調整が可能。メガネは併用できない)

バッテリーを取り外すと軽量な「メガネモード」に

「VIVE XR Elite」は、「今のトレンド」と「VIVE Flow」で得られた知見がセットになっている。とりわけ大きな特徴は、バッテリーを外せるようにしたことだ。スタンドアローンで動かすときにはバッテリー部をつけたままで使い、もっと軽く使いたいときには外して使える。「メガネモード」の時にも、スマホ接続での映像視聴やPC VR(Steam VR)での利用は可能だ。

(本体後ろにはバッテリーが。中央のネジを回して頭への固定を調節する)

(バッテリー部を取り外すと「メガネモード」に)

バッテリー部を外すと、重量は625gから240gまで軽くなる。ケーブル接続での利用が必須になるが、長時間使う場合にはむしろプラスだろう。バッテリーを外した場合「鼻」でメガネを支えることになるが、短時間つけた感じでは、HMD全体が軽くなった分、そこまで大きな負担は感じなかった。

(メガネモードのときにはパッド必須。鼻と左右の「ツル」で重さを支える)

ビデオシースルーは「ライバルのいいとこどり」

もう一つの特徴は、単眼のRGBカメラを使ってビデオシースルーARが視聴可能である点だ。HMDの正面左右と中央下に、インサイド・アウト方式のトラッキング・センサーがあり、中央にシースルーAR向けのRGBカメラがある。画質は「かなりいい」。体験映像の画像キャプチャなどができなかったため、実際の表示イメージをお伝えできないところはご容赦いただきたい。

(3つのトラッキングセンサーとRGBカメラ)

現状、カメラを使ったカラーのビデオシースルーAR機能というと、「PICO 4」や「Meta Quest Pro」が思い浮かぶ。

どちらも一長一短の品質だ。「PICO 4」は画像の精彩感は良いものの、立体感が正しくなく、手前が大きく歪む。だからつけたまま歩き回ると酔いやすいし、危ない。「Quest Pro」は立体感が比較的正しく、つけたまま動いても問題が少ないのだが、画質が荒く、カラーブレーキング(輝度と色情報の分離)も起きる。

では、「VIVE XR Elite」はどうか?

ライバルの「いいとこどり」だ。RGBでの画質は「PICO 4」に近く、非常にスムーズで見やすい。むしろ「PICO 4」よりも自然だ。移動しても酔いを感じることはなかったし、手元に持ったスマホの文字もちゃんと読めた。この点は「Quest Pro」に大きく勝る。搭載しているカメラの解像度が1,600万画素と高いからであるようだ。

ビデオシースルーARの画像に妙な歪みなどは感じられず、動き回っても違和感はなかった。ただ、映像に「立体感」があるわけではなかった、という印象である。この辺は「Quest Pro」よりちょっと劣る。

なお、距離センサーも搭載はされているが、現状では「正しく動いてはいない」(HTC担当者)という。「CGの後ろに人や物体が隠れる」ことはできていたが、いわゆる「オクルージョン」(CGの前に人が立つと、CGの一部が隠れるような表現)は確認できなかった。

まとめると、「VIVE XR Elite」は多用途・軽量化などの市場トレンドを取り入れた「VIVE Flow」の進化系で、まさに「ライバルのいいとこどり」だ。今後の発売に向けて製品版に近づき、距離センサーが有効に使われていくと、どうなるのだろうか。その点が気がかりではある。

(執筆:西田宗千佳、編集:笠井康平)


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