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活用事例 2023.06.21

新築で進む“空間コンピューティング” 国内外でXR×建築の事例続々

建築分野、とりわけ新築施工においてXR技術の活用が進んでいます。米国では、ARコンテンツを用いて都市プロジェクトを迅速に竣工するユースケースが登場。さらに日本国内では、ショールーム展示への空間音響導入、完成前施設でのバーチャルイベント開催など、「XR×建築」の可能性が模索されています。

(出所:Google AR&VRのYouTube動画より引用)

”空間を共有”し、周囲からの理解を促進

新築施工は周囲に及ぼす影響の大きさから、慎重に進められるべき事業です。特に都市の印象を左右する大規模施設や社会福祉施設は、住民を含めた利害関係者とのコミュニケーションはより丁寧に行われる傾向にあり、結果としてその建築期間は長期にわたります。

しかし、Googleが6月15日に公開したYouTube動画には、ARを用いて住宅困窮者向けの緊急シェルター施設がスムーズに竣工した様子が解説されています。

動画に登場するプロジェクト関係者は「多くの人は立面図面を読めませんが、3次元の画像であれば、最終的に何が得られるかを理解できます」と語り、新築物件へのAR活用の有効性を強調しています。

本プロジェクトに使用された「ARCore」は、Googleが提供する開発者向けARフレームワークです。2018年にリリースされたフレームワークで、スマートフォンやタブレット向けのARコンテンツ作成を支援するためのものです。この「ARCore」の機能の一つである「Geospatial Creator」では、任意の場所の3Dジオメトリ(形状データ)を取得し、ARコンテンツを正確に配置できます。

2023年5月には、Adobeが提供するARプラットフォーム「Adobe Aero」との提携をプレリリース。開発者はこれらのツールを組み合わせ、高精度なARコンテンツをより簡単に作成・共有できるようになりました。

新築分譲マンション展示に、音声を空間配置

また、国内における新築事業へのXR導入事例も続々と登場しています。2023年6月、MR技術を生かした音声体験を手がける株式会社GATARIは、日鉄興和不動産株式会社と連携し、新築分譲マンションのショールームにおける空間体験サービス「oto rea(オトリア)」を開発しました。

「oto rea」がインストールされたスマートフォンにイヤホンを接続し、モデルルームを歩くと、特定の位置に割り当てられたナレーションやBGMが聞こえます。内見者は実際の生活を想像しながら見学が可能となります。

(出所:GATARI)

施設の竣工前に、バーチャル空間で訪問者データを取得

また、大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、建築データを使って現実にある施設と同様のバーチャル空間を構築するサービスを2023年6月に提供開始します。これは同社が運営するXRロケーションシステム「PARALLEL SITE(パラレルサイト)」の機能拡充によるもの。バーチャル空間の構築には建築関連の3次元データのほか、BIMデータやCADデータ、点群データなどを用います。

本サービスでは、最短2カ月で未完成物件のバーチャル空間を構築。施設のオープン前にバーチャルな物件で大型イベントを開催し、参加者の属性や利用回数、コンテンツ視聴回数などを把握・分析できます。またこれらの訪問データをもとに、現実の施設での企画設計やマーケティング、各種イベントとの連動などを検討が可能です。

(出所:DNP)

DNPはオフィスビルや商業施設等を保有する企業や、それらの施設の建設会社・設計事務所・デベロッパーなどに本サービスを提供予定です。同社は「関連サービスを含め、2028年度までに40億円の売上を目指す」と明らかにしています。

(参考)Google ARCoreAdobe BlogGATARI大日本印刷株式会社


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