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メタバース 2023.07.07

つんく♂総指揮「TOKYO青春映画祭」キーマンに聞く「メタバースは、映画と青春をどう広げる?」

総合エンターテインメントプロデューサーのつんく♂氏が、2020年から総指揮をとる映画祭があります。「青春」をテーマとする短編映画を公募する「TOKYO青春映画祭」です。

このイベントは、つんく♂氏が代表を務めるTNX株式会社と、オンラインサロン「みんなのつんく♂エンタメTOWN」メンバーが中心になって運営されています。2023年で3回目を迎えるこの映画祭。今回はメタバース上にも会場を展開し、VTuberも起用した企画も始動するとのことです。

大型資本に頼らない映像・上演作品がますます増えるなかで、アイドル、アーティスト、VTuberといった「演じ手」の文化はどのように交わり、どう変わって行くのでしょうか?

今回、「TOKYO青春映画祭2023」を後援するポールトゥウィンホールディングス株式会社の橘鉄平氏と、サロン会員向け配信番組「みんなのつんく♂エンタメTOWN LIVE!」で共同MCを務めるChumuNote/チュムノート氏に、それぞれの視点からお話をうかがいました。

「TOKYO青春映画祭」とは?

「TOKYO青春映画祭」は、オンラインサロン「みんなのつんく♂エンタメTOWN」にてスタートした「中2映画プロジェクト」から発展した、インディペンデント映画祭です。「青春」をテーマとした映画であれば誰でも参加できる映画祭で、今回開催の「TOKYO青春映画祭2023」にて3回目の開催となります。

応募条件は、上記の通り「青春」をテーマとした作品であり、かつ30分以内の作品であること。すでに公開済みの作品や、他の映画祭での受賞作も応募可能です。「TOKYO青春映画祭2023」では、3日間に渡り20以上の作品が上映される予定です。

そして今回は、新たな取り組みとして「メタバース会場」が展開されます。映画祭本編が「映画上映・イベント開催エリア」でも視聴でき、遠隔地からでもコミュニケーションを楽しみながらイベントに参加できます。メタバースならではのイベント開催も予定しており、MCにはChumuNote氏、鴉紋ゆうく氏、桃園りえる氏、奏兎める氏が出演決定!。

公式サイトはこちら

「中2映画プロジェクト」とは?

「TOKYO青春映画祭」のきっかけにもなった「中2映画プロジェクト」は、つんく♂氏が総監修を務める、「中2」をテーマに青春映画を製作するプロジェクトです。

「ヒロイン」役として、中学2年生・14歳の女性に見える人・演じることができる人をオーディションで募集し、実際に女優として映画撮影に挑戦してもらうというプロジェクトで、つんく♂氏も選考に関わります。

こちらも、企画としては今年で3回目。公式サイトはこちら

日本の若者文化におけるインディペンデント映画祭の役割と、メタバースへの期待

開催を間近に控えるなか、「TOKYO青春映画祭2023」を後援する、ポールトゥウィンホールディングス株式会社の橘鉄平・代表取締役社長に、このプロジェクトを後援した経緯などについてお話をうかがいました。

プロフィール:
2004年、ポールトゥウィン株式会社入社。国内デバッグ事業の責任者として、2ヶ所だった拠点を、福岡を皮切りに複数拠点に増やし、国内事業拡大に貢献。2009年には、PTW America, Inc.を設立。以降、2017年まで米国と英国を拠点に海外事業拡大に尽力。2018年に現ポールトゥウィンホールディングス代表取締役社長に就任(現任)。2019年にPTW International Holdings LimitedのChairmanに就任(現任)。2022年にポールトゥウイン株式会社代表取締役CEOに就任(現任)。

――なぜ、映画プロジェクトを後援しようと決めたのでしょうか。

橘:
我々がメタバースの事業を行うにあたって、エンターテイメントのイベントがターゲットの一つにあったということもありますが、私個人の人生の中で一番映画を観たのが高校時代だったので、「青春と映画」という言葉の繋がりがとても自然に思えたのも一つの理由です。この話をいただいた時に、「俺すごい映画好きだったな」と思い出して、映画が好きな人達を応援したいという気持ちになりました。

――「西野亮廣エンタメ研究所」「レインボー・リール東京」など、日本でもオンラインサロン発の作品制作や映画祭が増えてきました。なかでも「中2映画プロジェクト」を選んだ理由はなんでしょうか?

橘:
「青春を撮る青春」を支えたいというシンプルな思いです。

――ゲーム、漫画、アニメ、音楽、映像など、さまざまなメディア・コンテンツをまたいで 活躍するVTuberが増えています。ポールトゥウィンホールディングスも今年1月に事業再編を発表しました。時代の変化をどう見ていますか?

橘:
メディアミックスということであれば特に新しい傾向でもないかと思いますし、IPの活用というのがPTWグループのメディア・コンテンツ事業の一つの核になるものですので、それほど違和感なく受け止めています。

IP展開においてさまざまなプラットフォームを利用することで、IPの活躍の場を広げ、ユーザーがそのIPを利用できる場を広げる。もちろんビジネスとしての効率の良さもあると思うのですけど、利用する側も効率性が上がっているというのが今の流れなのかもと思っています。

“タイパ”ではないですが、できるだけIPに接触する1回あたりの時間やそれの準備に抱える時間を短くする傾向が見られます。例えば、質問に上がったゲーム、漫画、アニメ、音楽、映像は、一つの同じデバイスで楽しめるものだったりします。映画祭はライブだと思うので、そういう効率性の外にあるし、それがライブの良さではありますけど、メタバースの映画祭にはそこに効率性を補完する役割もあるのかなと考えます。

――”メタバース”会場の同時開催が今回のポイントです。メタバース活用について、あるいはメタバース全体について、どのような構想をお持ちでしょうか?

橘:
現段階でのメタバースって、ある程度の人口密度の高さがないとダメなものなんじゃないかと思うんですね。ユーザーに安心して利用してもらうために「過疎化」って言葉を感じさせないように運営していくことが必要なんじゃないかと。

その視点から見ると、メタバースとして需要があるのは「仮想空間」という言葉から想像する非日常感よりも、もっと日常に近いもので、日常の代替のようなものなのかなと思います。より一般的で、潜在するユニークユーザーが多いものなのかなと。例えば役所、銀行などの窓口業務や、学校、塾などの教育、リモート化の進む企業のオフィスなども、メタバース化する場合に対象となるユーザーが多いので、需要があるのだろうと思います。

一方で、エンターテインメントもメタバース化の需要がある分野だと思います。特に、今回のような映画祭や音楽ライブといったイベントは、過疎化しないこと、集客して人口密度を上げることが成否につながるので。日常に近いものではなくて、時間の区切られた非日常的な高揚感、充足感のあるもの、コンテンツ、IPのファンを中心とした特性のあるユーザー層が支えるものにも「仮想空間」側の需要があると思います。

どちらにしても、仮想空間内の人口密度を増やし、成功するためには(仮想)空間としての質が良いこと、優れたUXを提供することが必須です。提供されるものの内容、UI、コストパフォーマンスといったものは当然ですが、PTWとしてはそういった製作側ではなく、運営側としてメタバースを活性化させたいと思っています。

いかにスムーズに、気持ちよく、安全に空間を利用できるか、例えばコミュニティマネージメント、Web監視といった既存のネット関連のサービスはその点において役立てると思いますし、ユーザーがメタバースの空間でよりインタラクティブな体験をする為に存在したいと思っています。

――昔好きだった青春映画や、いまだに忘れられない青春の思い出はありますか?

橘:
青春の思い出は甘いも苦いも引き出しの奥にしまっておくとして、自分の青春時代に上映された青春映画それぞれに思い出があったりするんですけど、その時代、同時代を描いたものより、大人になった主人公が少年時代、青春時代を思い出して語り始めるものの方が、ノスタルジックな演出になっていて好きでしたね。「スタンドバイミー」とか、「ニュー・シネマ・パラダイス」とか。

――世界にはさまざまな年齢・性別・言語圏の「14歳」がいます。自分の「才能」に悩みがちな時期です。彼/彼女たちに伝えたいことはありますか?

橘:
才能のあるなしに悩むなとは言わないです。思春期は自分を他人と比べたり、理想、憧れとのギャップに苦しんだり、自分を構成する要素の全てがコンプレックスになり得るような時期だと思うので。傷付きやすいし、その傷付きやすい人たちがグループでいるので、他人を傷つけてしまうことも多い。

逆に面白い、楽しいって感覚も、その時代は鋭いですよね。箸が転んでもおかしい年頃と言いますか。良いにしても悪いにしても影響を受けやすい、反応をしやすい時期なのだと思います。だからこの時期にいろんな影響を受けて欲しいです。

インプットしようとしないで良いので、いっぱい観て、いっぱい聞いて、いっぱい参加して、とりあえず経験していれば良いと思います。映画を観る、本を読む、アニメを観る、ライブに行く、友達と話す、先生と話す、学校の外で誰かと話す。

数、種類をこなせば良いわけでもないですし、一つの好きなことに打ち込むことも貴重なことなのですけど、何かをすることで自分に起きる感情が何なのかって考える、悩むにふさわしいのが思春期だと思います。そして、その答えを見つけるために、今の自分に足すべき要素を得るためにも新しい経験が必要です。経験する→悩む→経験する→答えに近づく→また悩む→経験する→……というサイクルが必要な時期なのではないかと思います。

再デビューを果たしたVTuber・ChumuNoteが考える「青春」のカタチ

さらに編集部は、「TOKYO青春映画祭2023」総指揮のつんく♂氏のオンラインサロン向け配信番組で共同MCを務めるChumuNoteさんに、本イベントにかける期待や、VTuber、メタバース、映画の今後についての展望をうかがいました。

プロフィール:
「こんまんぼぅ!」
2023年2月17日”再”デビューの個人勢VTuber。本業はミキシングエンジニア。後ろのマンボウリュックには無限の可能性を秘めている。

――まずは読者の方に向けて自己紹介をお願いいたします。

ChumuNote:
はい! 所属していた事務所が解散して姿と名前を失い、心機一転、再デビューを果たした個人勢VTuberのChumuNote(チュムノート)と申します。よろしくお願いします!

――早速ですが、ChumuNoteさんがどのような経緯で「みんなのつんく♂エンタメTOWN LIVE!」のMCに抜擢されたのかをうかがえればと思います。

ChumuNote:
今年の1月20日の金曜日、ちょうど「『つんく♂エンタメ♪サロン〜みんなでエンタメ王国〜』の番組がリニューアルします」というタイミングでお声がけいただいて、MCとして参加することになりました。

ただ、自分の個人勢VTuberとしてのデビューが2月17日だったので、当時はまだ“白い”状態(※)だったんですよね。「見た目がなく、声だけの存在が話している」っていう不思議な参加の仕方だったのですが、そこから一緒にやっていくことになりました。途中で見た目ができあがり、「あ、VTuberだったんだ!」みたいな驚きもありつつ……という感じでしたね。

(※旧事務所の解散によって姿と名前を失ったChumuNoteさんは、新ビジュアルが完成するまでのあいだ、Twitterのアイコンを何も描かれていない白一色の画像に設定していた)

ChumuNote:
番組にはFUJIKINさんがメインMCとしていらっしゃったので、自分はダブルMCの1人として参加しています。自分がハロプロオタクなので、「つんく♂さんの楽曲はこういうところが好き」とか、「わー! これ、つんく♂さんらしいなー!」とか、そういうオタク目線での茶々を入れるような立ち位置ではありますね。

――ChumuNoteさんのポジショニングがわかったところで、7月に開催される「TOKYO青春映画祭2023」についてのお話に移れればと思います。今回は「メタバースでも開催する」という触れ込みで打ち出されたTOKYO青春映画祭ですが、つんく♂さんの番組でMCを務めるChumuNoteさんから見て、どのような見どころがあるかお聞かせください。

ChumuNote:
今回の映画祭に向けて、MCとしていろいろな監督さんとお話をする機会がありました。元東京ゲゲゲイのBOWさんだったり、『ダウンタウンDX』を作られた倉本美津留さんだったり。ジャンルを問わず、「その道のプロ」が集まって映画を撮っているので、それぞれにベクトルの違うおもしろさが作品に出ているんじゃないかなと思います。そういうところがすごく楽しみですね。

――TOKYO青春映画祭の特徴として、「中学生・高校生がライブ・パフォーマンスをする」点が挙げられるかと思います。ChumuNoteさんは元放送部かつ教員免許をお持ちだとお聞きしましたが、中高生が創作活動に熱中することについてどのように感じていらっしゃいますか?

ChumuNote:
中高生って、「夢に向かって突き進む」ような活力があふれ始める時期じゃないですか。でもそれは同時に、挫折や失敗を味わう時期でもあります。それは、普段の部活動とかでも同じことが言えると思っていて……たとえば、大会で失敗してしまうとか。

今回の映画祭だったら、パフォーマンスや演技をするうえで、自分のやりたいものがうまく表現できなかったり、失敗しちゃったりすることもあると思います。でも、撮影の中でうまくいかないことがあって、挫折や困難を味わったとしても、「そこから負けじとどう食らいついていくか」「失敗を乗り越えて自分の活力にしていくか」みたいなところも含めて、「青春」なんじゃないかなと。なので「めげずにがんばれ〜!」って、親戚みたいな気持ちで応援しています(笑)。

中高生の演者さんに話を聞くと、TikTokを使っている方がすごく多かったんです。だからかやっぱり、「自分の『見せ方』を理解している人が多いな」という印象はありましたね。あれはすごいなと思いました。もうプロです。

――ちょっと話が脱線しますが、ChumuNoteさんはTikTokを使ったご経験はありますか?

ChumuNote:
いやー、TikTokは運用が苦手で! 自分は見る専になっちゃってますね……! 「できる人はすごいな」と、尊敬しながら見ております。

メタバースは「それぞれが求めている理想の過ごし方ができる桃源郷」

――前歴を含めると長らく活躍されているChumuNoteさんですが、VTuberとして、今回のTOKYO青春映画祭にはどのように関わっていきたいですか? 「VTuberだからこそできること」など、もし考えていることなどありましたらお聞かせください。

ChumuNote:
これは結構、「回答が難しいな」って思った質問なんですけど……。というのも、この映画祭もそうですが、つんく♂さんの番組のMCに関しても、「VTuberだからこうしよう」みたいな枠組みはあまり決めずにやっていたんです。

映画祭や番組で関わるのは「バーチャル」ではない人がすごく多かったので、なんか「おもしれーやつ」くらいの感覚で思ってもらえたらな、みたいな感じではいました。強いて言うのであれば、映画祭というのはまだ「バーチャル」な文化からは割と遠い存在ではあるので、そこを少しでも近づけられたらいいなと。「バーチャルのファンの方々に少しでも興味を持ってもらって、映画祭の情報を届けることができたらいいな」と思いながら活動しています。

――他方で、今年は「TOKYO青春映画祭inMETAVERSE」と題して、メタバース会場でも展示やイベントが予定されています。この「メタバースとリアル会場で同時開催」という試みに対して、ChumuNoteさんはどのような期待を寄せていらっしゃいますか?


ChumuNote:
映像作品をメタバースで見るのは結構な特別感や別世界感があるので、ぜひ体感していただいて、メタバース文化に足を踏み入れるきっかけになってくれたら嬉しいなとは思っていますね。

――ちなみに、俗に「メタバース」や「ソーシャルVR」と呼ばれるサービスを、ChumuNoteさんご自身は訪問したことはありますか?

ChumuNote:
はい! 世間でメタバースと呼ばれているようなサービスは利用したことが……あります! 僕は水族館が好きで、水族館のようなワールドで寝たり――VR睡眠(※)したり――あとは、VR空間上のクラブイベントを見たりとかもしていました。

(※VR睡眠:文字通り、VR空間で睡眠をすること。VRヘッドセットなどを装着したままベッドなどに横たわり睡眠をするケースが多い)

――がっつり遊ばれていますね(笑)。今年2月にComicVketとコラボするなど、ChumuNoteさんはメタバース文化とも比較的近い場所にいらっしゃる印象があります。メタバースの利用中に、印象に残っている出来事などはありますか?

ChumuNote:
最初は割とハードルが高いのかなって思っていたのですが、サービスによっては「チュートリアルワールド」みたいな、操作感がわかるワールドがあるじゃないですか。そこにいる人たちが優しいんですよね。初心者にいろいろなことを教えてくれて、すごくあったかい気持ちになりました。

――素敵なお話ですね。いわゆる「バーチャル」な存在であるVTuberとして活動されてるChumuNoteさんから見て、こういったメタバースの文化はどのように映っていますか?

ChumuNote:
「リアルとは違うもうひとつの日常」だったり、「もうひとつのコミュニティ」だったり、「エンターテイメントの場」だったりする、「人それぞれが求める理想の過ごし方ができる桃源郷」みたいなものだと自分は思っていますね。なので、その人が「こういうことをしたい!」っていうのに合わせていろんなワールドがある。

――「自分の理想を追求できる」という意味では、VTuberとも重なるのかもしれませんね。今後、メタバースでやってみたいことはありますか?

ChumuNote:
僕はDJをするので、それこそ、見に行ったVR空間上のクラブイベント――VRChatのバーチャルエンタスだったのですが――「そこの出演者になりたいなー!」みたいな気持ちはあったりしますね。「VR空間のDJ」みたいな。

映像の「長さ」を意識した作品づくりを考える

――ここからは映像関係のお話をうかがえればと思います。まず、ChumuNoteさんが4月に発表された楽曲「What do? (feat. VOLTA)」のMVは、紙片のドローイングや2Dアニメに3Dオブジェクトなど、さまざまな映像がミキシングされた独特な表現が見られます。


(「What do? (feat. VOLTA)」MVより)

――また、「BlueSunnyFish (feat.Twinfield)」のMVは、ChumuNoteさんが複数の画面に同時に映り込む描写があるなど、やはり印象に残る演出が施されているように感じました。こういったエッジの効いたMVを楽曲にのせて発表しているChumuNoteさんは、表現としての「映像」や「映画」をどのように捉えていらっしゃいますか?


(「BlueSunnyFish (feat.Twinfield)」MVより)

ChumuNote:
曲名を挙げていただいた「What do?」に関してお話すると、見せ方などの部分で「映画を意識したMV」ではあるんです。最初にクリエイターさんからラフの映像をいただいたときに「映画みたいだな」って思ったんですよ。それで「映画みたいでかっこいいですね!」ってお伝えしたら、「そうなんですよ! 映画を意識して作りました」って。

一方で「映画」は、受け手の解釈が重要なものだと考えています。MVだったら、人それぞれに受け取り方が違っても楽しめますが、映画には明確なストーリーがあるので……やっぱり、そういうところが難しそうだな、というか。

たとえば映画には、映画独自の演出技法がいろいろあるじゃないですか。伏線となる物や人物を映すときにはワンカットをわざと長くして、「ここがキーですよ」ってちょっと怪しませたり。そういうことも考えながら演技・撮影・編集などをする必要がある――って考えると、めっちゃ重労働で大変なんだろうなと。映画ではありませんが、僕も放送部でドラマを作っていた時期があるので、実際に映画を作っている人たちは本当にすごいなと感じています。

――今回のTOKYO青春映画祭には「30分」という公募規定がありますが、VTuberの動画や配信を基準に考えると、「YouTubeに投稿する動画と比べると若干長く、ライブ配信と比べると短い」という絶妙な尺度であるように感じています。こうした映像の「長さ」や「尺」に関して、ChumuNoteさんが普段から意識しているポイントはありますか?

ChumuNote:
映像作品の長さによって視聴者の嗜好が違うこと、人によってその映像を見る目的が違うことを意識して作品を作っていかなきゃな、とは考えていますね。

特にVTuberのあいだではショート動画が伸び始めていて、その尺での映像制作を僕も最近やり始めてはいるんですけど……。やっぱり、ショートはショートでまったく別物で、配信を見ている人とショートを見ている人は違う。そのことを意識する難しさを実感しつつ、それが大事なんだろうなと感じています。

だから今回の「30分」という長さについても、「どの視聴者層が、どういう楽しみ方をするのかな」って考えるのは難しそうだなと。30分で何を見せるのか、その見せ方を考えるにあたって、監督さんをはじめとするみなさんが、何かいろいろな工夫をされているんだろうな、って思っていますね。

――短い時間の中での表現となるショート動画は、たしかに相当に気を遣いますよね。ちなみに、もしChumuNoteさんが30分の枠を使った動画や番組企画を作るとしたら、どのようなものを作ってみたいですか?

ChumuNote:
僕は星新一のショートショートが好きなので――ショートショートを映像化するのに30分はちょっと長いかもしれませんが――似たようなものを作るか、あとはちょっとしたミュージカルのような映像とか。基本はミニライブだけど、曲と曲の間にちょっと会話があって、曲名や歌詞がちょっと繋がっている、とかですかね。

――たしかに、30分枠のミュージカルはあまり見かけないので、表現技法としてどうなるか興味深く感じますし、おもしろそうですね。余談になりますが、最近もVRChatでミュージカル調の演劇の公演があったのですが……。

ChumuNote:
あ! (九条)林檎様のやつですか?

――そうですそうです。舞台演劇としての出来栄えもすごいのですが、「尺が15分の音楽劇」という点がおもしろいんですよね。一般的な「演劇」を基準に考えると短いのですが、「あるジャンルの表現をどのように短く詰め込んで伝えるか」を考えるのはおもしろい切り口なのかなと感じました。

ChumuNote:
でもなんだか、満足感はありますよね。めっちゃ別ジャンルなんですけど、リアル謎解きゲームに最近ハマっていて、15分くらいでもすごく満足感があるんです。なので、15分や30分の尺で起承転結があるコンテンツは、「短く! 太く!」みたいな感じで記憶に残りやすいのかもしれませんね。

業界を越えたコラボレーションによって、おもしろいものが生まれてほしい

――そろそろお時間ですので、最後にひとつうかがいます。近年、VR/イマーシブ部門を設ける映画祭が世界的にも増えていて、XRやメタバースが芸術の分野にも徐々に広がりつつあります。個人で活躍するVTuberとして、日本の芸能・芸術界や、XR/メタバース産業に期待することはありますか?

ChumuNote:
ちょっと別の話になっちゃうかもしれませんが、いま僕がTwitter担当をしているV-TIPSっていうプラットフォームがあるのですが、その運営会社さんが、それまではお堅めのシステムサービスを提供していた会社さんなんです。そこが新たに「VTuber向けにプラットフォームをやる」と始めたのがV-TIPSなのですが、そういうフォーマルな世界の方々にも興味を持ってくれることが、すごく嬉しいなと思っていて。

今回の映画祭もですけど、それまではVRやメタバースとはまったく縁のなかった企業の人たちが、頭の片隅にちょっとでもVRやメタバース、VTuberといったワードを覚えていて、新規事業を作る際に、「あ! これってもしかして、XR/メタバースと相性が良いんじゃないか」ってひらめいて、おもしろいものが生まれる。そういうものが今後もたくさん増えていったら、すごく嬉しいなと思います。

――なるほど。まさに「越境」という言葉が当てはまりそうですね。さまざまな分野の企業や産業のコラボレーションによって、新しいものが生まれるようになったらいいと。

ChumuNote:
そうですね。メタバースだけで閉じてしまうよりも――それでもおもしろいものはあると思うんですけど――既存の別のコンテンツや、本当にまったく関係のない分野とかと合わせてみても、おもしろいものが生まれる業界だと思うので。そういった広がりが増えていったら、もっともっとおもしろくなるんだろうな、って思っています。

――ありがとうございます。ChumuNoteさんの今後の活躍を応援しております。

VTuberが「映画」と「メタバース」をつなぐ架け橋に

この映画祭でプロデューサを務める株式会社vivitoの久保哲哉氏によると、今年からリアル会場・オンライン配信・メタバース会場を併設したのは、「やはり遠方の方からの『見たい!』という声が多かったんです」。出演者も全国各地に居住しており、全員が東京で一堂に会する場を設けづらかったとのこと。

そこで前回は、オンライン上映や会場のライブ配信を試したものの、「今度は『コミュニケーションが取りづらい』というデメリット」も実感。打開策を探るなかで、「今はメタバースが一番おもしろいんじゃないか、と」(久保氏)。

開催中にメタバース会場で行うイベントMCには、ChumuNote氏のほかにも、鴉紋ゆうく氏、桃園りえる氏、奏兎める氏が出演決定。起用の理由について久保氏は、次のようにコメントしました。

「TOKYO青春映画祭を通じて、日本独自の文化である「青春」をもっともっといろんな人に体験していただけたら嬉しいです。メタバース好きの人と映画好きの人は、ものすごく遠い位置にいるように感じています。でも、2つのジャンルをつなぐことで、もっともっと大きな「エンタメ」が生み出せるんじゃないか。双方をつなぐ架け橋として、ChumuNoteさんはじめ、VTuberの方々に関わっていただけるのはありがたいです。すごく期待しています」(久保氏)

「TOKYO青春映画祭」関連リンク一覧

・「TOKYO青春映画祭」公式サイト:https://tyff.tnx.cc/

・「中2映画プロジェクト」公式サイト:https://tyff.tnx.cc/

・「TOKYO青春映画祭」メタバース会場特設サイト:https://metaverseproject.my.canva.site/

・「TOKYO青春映画祭」配信チケット購入URL:https://zaiko.io/event/357376

・クラウドファンディング:https://ubgoe.com/projects/462


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