2024年5月31日に公開予定のVRChatワールド「Tokyo Mood by BEAMS」。
セレクトショップやアパレルブランドを展開する「BEAMS」がVR映画スタジオ「カデシュ・プロジェクト」とタッグを組んでVRChat上にオープンする、常設ワールドです。
BEAMSと言えば2020年末に開催された「バーチャルマーケット5」以来、7回にもわたってバーチャルマーケットに出店している常連企業。昨年末のバーチャルファッションショー「Voyage」でも協賛として参加して新作衣装を発表するなど、VR世界のファッション文化をユーザーと共に牽引してきた存在です。
そんなBEAMSが初めて常設ワールドとして公開するのが、「Tokyo Mood by BEAMS」。
先に触れておくと、今回のワールドは、アパレルショップをそのままメタバースに再現するといったシンプルなワールドではありませんでした。なんと、アパレルショップ周辺に広がる都内の繫華街まで含めて制作されていたのです。
一体、どのようなワールドなのか、なぜBEAMSはそのような企画を打ち出したのか、本記事ではそのメディア向け内覧会の様子をお届けします。
街の喧騒まで再現された、夜の世界を練り歩く
ワールドに入ると、そこは「BEAMS」の店舗の前……ではなく、少し薄暗い高架下のトンネル。と同時に目に飛び込んできたのが、壁面に大きく描かれたグラフィティです。よくよく見ると、ワールド名と「BEAMS」の文字、そしてワールド情報が描かれていることがわかります。
(おしゃれすぎて最初は気づきませんでしたが、グラフィティはワールド用の設定パネルになっています。脇にトレイルペンセットが設置されているので、察しの良いVRChatユーザーならすぐにピンときそうな配置ではあります)
高架下から出た先は、さまざまな店舗が軒を連ねる繁華街。都内の渋谷のようでもあり、秋葉原や神田近辺のようでもありますが、いずれにせよ「夜の都心の繁華街」の雰囲気が如実に感じられる空間が広がっていました(※インスピレーション元は中目黒や裏原宿、新橋などであるとのお話でした)。
今のところはまったく「セレクトショップの常設ワールド」らしさを感じられません。どちらかと言えば、VRChatでも人気の「飲み屋街」系のワールドを彷彿とさせます。
また、ワールドを巡っていて驚かされたのが、「空間」としての臨場感です。
繁華街の喧騒が遠くから聞こえているのみならず、コンビニに入れば店内放送が、居酒屋に入れば有線のような放送が耳に入り、その聞こえ方も自然に感じられます。
裏路地では居酒屋からの話し声が漏れ聞こえ、ゲームセンターに入るとゲームの効果音が反響して聞こえる。高速道路の近くでは車の走行音が耳に入り、高架沿いではたまに通過する電車の音も聞こえてくる。特に電車に関しては、実際に通過する様子と車内の光が目に入るため、本当に夜の高架沿いを歩いているかのような感覚になるほどでした。
(街中には多彩なお店や看板、ポスターが掲示されていますが、もちろんすべてがオリジナル)
そのほかにも、店舗の裏にまわると排気ダクトがむき出しになったビルがあったり、たくさんの自転車が並ぶ高架下のトンネルがあったり、高架を挟んで反対側には都心部を流れる川があったりと、1つの「街」としていろいろな顔を見られ、そのクオリティの高さに驚かされました。
現実離れしたBEAMSショップから、見えてきたもの
居酒屋にミュージックバー、ゲームセンターが並ぶ高架沿いを進んでいくと、電柱に書かれた「ビームス 新光町」の文字を発見。こちらはもともとBEAMSの親会社だった新光株式会社に由来していて、他にもBEAMSに関連のあるフレーズが店名などに使われているそうです。
案内に従って直進すると、やがて目に飛び込んできたのが、2階建ての白い建物。こちらが、この世界のBEAMSの店舗です。
過去のバーチャルマーケットでは実店舗を模したブースを出店していましたが、今回は新しくデザインした架空の店舗なのだとか。入口の両脇には、昨年末の「Voyage」で発表した衣装がディスプレイされています。
清潔感にあふれた白一色の店内では、BEAMSがBOOTHで販売中の商品を展示。
それぞれのマネキンを選択すればBOOTHの商品ページがブラウザ上で開くほか、試着室ではアバターに合わせてその場で試着することもできます。ワールド負荷の問題ですべては展示できなかったそうで、ラインナップはその時々で変える予定とのことでした。
エレベーターで上がった先の2階は、なんとフォトスタジオ! ここでは着飾ったアバターを撮影できるだけでなく、ワールドの全景を見渡すことができ、構図によっては夜の街をバックに自撮りできるようになっていました。
(2階から外に出ると、ワールド全体を見渡せるこれまた絶好のフォトスポットが!)
(店舗の向かいの建物の上はチルスペースになっていて、座ってくつろぐことができます。通過する電車も同じ高さで見られる!)
長居したくなるような空間をつくりたかった。あえてBEAMSらしさをプッシュしなかった理由
案内を担当してくれた株式会社ビームスクリエイティブ VR担当の木下香奈さんに今回のワールドについて話をうかがいました。
木下さんによれば、今回のワールドの構想を持ったのは1年半ほど前。これまでの数々の施策とVR体験を経て、「商品を並べるショップではなく、フレンドと長居したくなるような居心地の良さがあり、こだわってスタイリングしたアバターがとびっきりカッコよく撮影できるような場所」を、VRChatにおけるBEAMSの拠点として持ちたいと思うようになったそうです。
そのことを、以前からBEAMSの3D衣装の制作をしているCornetさんにお話ししたところ、名前が挙がったのがカデシュ・プロジェクト(※)だったのだとか。映像作品のクオリティは言わずもがな、その舞台としてつくられたワールドのリアルな造りに惚れ込み、今回のワールド制作をカデシュにお願いすることにした、とのお話でした。
(※カデシュ・プロジェクト:VRChat内で映画作品の撮影・制作や体験型イベントを提供するエンターテインメントチーム。裏社会の人々が織りなす「ホテル・カデシュ」を体験型イベントや映像作品として展開しているほか、作中に登場する舞台をVRChat上にワールドとして公開。ネオンの煌めく「海上都市『エメス』⁄VLFPs "E․M․E․T․H․"」や、怪しげな雰囲気の繁華街裏「威吹城町の裏路地 ibuki-chō back alley」など、「夜の街」の空間表現には定評があります。詳しくはこちら)
(ビームスの木下さん(右)と、カデシュ・プロジェクトのsumaさん(左))
カデシュ様とは、去年の9月からミーティングを続けてきました。その最初の企画会議で、だめがねさん(カデシュ・プロジェクト代表)が企画書の1ページ目に書いていたのが、「10年愛されるワールドをつくる」という言葉でした。ここは、「私たちの商品を見てね! 買ってね!」ではなくて、みんながいろんな時間を過ごすためにつくった場所です。
BEAMSの店舗がこの街に完全に溶け込んでいるのと同じように、このワールドがBEAMSのワールドであることを忘れるくらい、バーチャル文化に馴染んでいくことを願っています。
(木下さん)
何かイベントがある時に訪れるのではなく、日常をみんなといっしょに過ごす場所――。
普段からVR SNSを利用していなければ「過ごす」という表現はなかなか出てこないでしょうし、これまで何度も期間限定イベントに出店し、ユーザーと交流を重ねてきたBEAMSさんだからこそ自然と生まれたコンセプトなのかもしれません。
また、BEAMS初の常設ワールドとして公開される「Tokyo Mood by BEAMS」ですが、もちろん、完成したワールドを公開して終わり、というわけではありません。
オープン当日の31日夜には3組のVRアーティストが出演するローンチパーティー(協力:YAMAHA)が予定されていますし、それ以外のイベントなどでの活用も検討中とのこと。これからは大きなイベントへの出店だけでなく、このワールドを拠点に、普段からVRで過ごしているユーザーとコミュニティに寄り添った取り組みもしていければ――といった、今後の展開が楽しみになるお話もありました。
/
Tokyo Mood by BEAMS Launch Party with Yamaha
\#TokyoMoodbyBEAMS#YAMAHAConnect📅5/31(金) 開場20:30 開演21:00
📍Tokyo Mood by BEAMS on VRChat🖤出演🖤#AMOKA #StrollZ #JOHNNYHENRY
👇JOIN先https://t.co/KFfcYR3a1D
👇生配信https://t.co/GQMUZfbY85 pic.twitter.com/XYQMhdWAms
— BEAMS_virtual_staff (@Virtual_BEAMS) May 28, 2024
7回にも及ぶバーチャルマーケットへの出店に、実際の店舗スタッフによるバーチャル接客、リアル店舗でのバーチャルショップ体験の実施に、ファッションショーの協賛など、数々の施策に取り組んできたBEAMS。今回、常設ワールドという拠点を設置したことで、いよいよメタバースでの施策に本腰を入れてきたように感じさせます。
また、今回は取材として足を運んだワールドでしたが、1人のVRChatユーザーとしても公開が待ち遠しく感じられる体験となりました。
「フレンドと居酒屋で集まって飲みたいな」「そのままゲーセンでワイワイ遊んでいる写真も撮れそう」「ミュージックバーならスーツとの組み合わせが良さそうだな」「ビルの裏でたむろっているような1枚を撮ってもおもしろいんじゃ?」。あの街でやってみたいことが次々と浮かび、いろいろな服に着替えて写真を撮りに行きたくて、今からうずうずしているほどです。
普段からVRファッションや自撮りを楽しんでいる人はもちろん、風景写真を撮りにワールドを散策している人や、フレンドとおしゃべりを楽しむ場所を探している人にも自信を持っておすすめできる、夜の都心の繁華街。「Tokyo Mood by BEAMS」は、5月31日(金)オープンです!
Tokyo Mood by BEAMS メディア向けお披露目会でした。
31日の公開をおたのしみに。
新光町で待ってます。#BEAMS #ホテルカデシュ #VRChat pic.twitter.com/hCEyzzvo6z— すま / suma (@suma_VRC) May 28, 2024
- BEAMS Virtual Staff X:https://x.com/Virtual_BEAMS
- BEAMS公式BOOTH:https://beams.booth.pm/
- カデシュ・プロジェクト公式X:https://x.com/HOTELQADESH_VRC
- ホテル・カデシュ公式サイト:https://www.hotelqadesh.com/