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PR 2019.05.24

VRでなければ伝わらないメッセージがある、大学教授もお墨付き「避難訓練VR」

近年、社会のさまざまな局面にVRやARが導入される事例が増加しています。とはいえ、「VRだから」「流行だから」という理由で導入される時期はすでに過ぎ去り、現在は個々のコンテンツのクオリティや、VRを活用することの意味が求められるフェーズに入ってきているのではないでしょうか。

火災・地震・水害といった災害に対する教育や防災訓練といった現場でも、VRの導入が積極的に進められています。そのなかで株式会社理経は2017年4月より、「避難体験VR」と題された火災避難訓練のVRコンテンツを提供しています。そして2018年11月には新たに、避難体験VR~煙の怖さを知ろう~とのタイトルで、内容を全面的にリニューアルしたコンテンツの提供を開始しました。

理経ではいったいなぜ、このようなリニューアルを行ったのでしょうか。そして新たな「避難体験VR」には、どのような意図が込められているのでしょうか。ここではコンテンツの体験と関係者への取材を通して、新たな「避難体験VR」をはじめとする同社の防災教育への取り組みをご紹介します。

火災で急速に煙が広がり、視界が奪われるなかで避難する怖さをVRで体感

「避難体験VR~煙の怖さを知ろう~」はそのタイトルが示しているとおり、実態に近い煙の動きを伴った火災環境をVRで再現することで、火災時の煙の怖さを実感できる点に重点が置かれています。

Oculus Rift等のPC向けVRヘッドセットで体験できるこのコンテンツは、ホテルの一室に滞在している時に火災が発生し、警報ベルが鳴り始めるという状況からスタートします。体験者は速やかにホテルの廊下に出て、立ちこめていく煙に注意しながら、非常口を目指して進んでいきます。


火元からフロア全体に拡散していく煙は当初、天井付近をうっすらと漂っています。ところが時間が経過するに従って、煙の色が白から灰色、そして黒へと濃く変化するとともに、煙の量も増えて、より低い位置にまで広がっていきます。そうなると、体験者は煙で視界を奪われてしまうため、自身の姿勢を低くして煙を避けなければなりません。

この煙の色と量の変化が本VRコンテンツのポイント。段階的ではなくじわじわとシームレスに変化していくため、体験している側は「気がついたら煙に巻かれていた」という、現実の火災と同じ状況を目の当たりにすることになります。まさに“煙の怖さ”を実感する瞬間です。

さらにこのコンテンツでは、体験者がしゃがんで頭の高さを低くすればするほど、移動の速度が低下していきます。そこで体験者は煙を避けられるギリギリの姿勢を保ちながら、非常口まで可能な限り素早く移動する必要があるのです。このあたりも災害現場で求められる行動が、忠実に反映されていると感じました。

ちなみに筆者が体験した際は、火元を確認するなど余計な行動を取って時間がかかりすぎたために、フロアから脱出できなくなってしまい……。無事に非常口まで到達して避難に成功した後は、避難までにかかった時間や煙を吸ってしまった時間など、避難行動に対する評価とアドバイスを見ることができます。

現実の実験映像や建物の構造を参考に、リアルな火災の煙を表現

「避難体験VR」を実際に体験してみて、このコンテンツで感じられる“煙の怖さ”は、非常に真に迫ったものだということがよくわかりました。このリアリティの実現には、東京理科大学大学院 国際火災科学研究科の関澤愛教授による監修が、大きな役割を果たしています。


(東京理科大学大学院 国際火災科学研究科教授 工学博士 関澤愛氏(写真右)、株式会社防災コンサルタンツ 代表取締役 堀田博文氏(写真左))

当初、開発が行われていた「避難体験VR」は、防災の専門家である関澤教授から見れば「テーマパークのアトラクションのようなもの」だったそうです。例えば映画やTVドラマなどで火災現場を描く際は、俳優の顔を見えるようにするために煙が薄く表現され、炎ばかりが強調されてしまうとのこと。既存の火災VRコンテンツも、そのイメージがそのまま踏襲されてしまっているとのこと。

関澤教授によると、実際の火災では「1カ所の出火点から大量の煙が広がって、出火から2分以内で室内にいる人間の視界を奪う量にまで達する。50センチメートル先も見えなくなるという煙の濃さのため、自宅などのよく見知った場所でも避難経路がわからなくなり、やがて呼吸困難に陥って生命を落としてしまう」とも。関澤教授は長年の火災生存者からのヒアリングなどで、こうした知見を得たそうです。

理経では関澤教授との話し合いや火災実験の映像などを見て学習した結果から、火災で発生する煙にフォーカスし、煙の怖さを認識できる教育的効果を狙ったコンテンツを制作することを決定。大のポイントである煙の表現は、開発にあたって最も困難な部分となりました。


(株式会社理経 新規事業推進室 XRソリューショングループ グループ長 石川大樹氏(写真右)株式会社理経 新規事業推進室 XRソリューショングループ シニアエンジニア ジャホン・クシノブ氏(写真左))

開発を担当した株式会社理経 新規事業推進室 XRソリューショングループのジャホン・クシノブ氏によると、廊下の長さは現実のサイズに換算して合計すると約60メートルにもなるとのこと。「煙が広がっていく様子を体験者に実感してもらうため、廊下全体を見渡せるレイアウトになっていることから、広い空間に大量の煙を一気に表示するのが非常に難しかった」と語りました。また、じわじわと広がっていく煙を描写するため、一般的なパーティクル(粒子を表現するCG技法)ではなく、特殊な方法を用いて煙を表現しているそうです。

また、XRソリューショングループのグループ長を務める石川大樹氏によれば、舞台となっているフロアの天井高や廊下の幅などは想像で作られたものではなく、現実の建物を採寸したリアルなスケールを再現しているとのこと。非常口の位置を示す誘導灯も、基本的には実際の建物の位置に基づいているそうです。

通路誘導灯の位置に関しては、筆者がVRで体験した際に、煙が急速に広がっていくなかで緑色のライトを認識できることの安心感を、非常にリアルに味わうことができました。「実際の建物の通路誘導灯は、過去には壁の上方に取り付けられていましたが、現在は身をかがめた時によく見えるように、壁の下側に取り付けられています」という、株式会社防災コンサルタンツの堀田博文代表取締役による説明が、自身の体験を通じて納得できたのです。この点などは、火災現場での煙によるインタラクションを、可能な限り忠実に再現する本コンテンツだからこそ得られる学習効果だと言えるでしょう。

人々の生命に関わる防災について、正しいメッセージを伝える

「避難体験VR~煙の怖さを知ろう~」はコンテンツの内容だけでなく、実際の運用面も考慮した上で開発が行われています。オペレーションを行うPC側では、コンテンツに不慣れなオペレーターがアテンドを行う場合も想定して、テンキーによる操作説明を常時表示することが可能になっています。

また、体験終了時の評価は当初VRヘッドセット内で見る形になっていましたが、これは体験者の交代に時間がかかる要因になってしまっていたとのこと。そこで本コンテンツでは、PC側に表示された番号をスマートフォンやタブレットのアプリに入力して閲覧する形に変更されています。

このような防災訓練VRは常設展示だけでなく、防災イベントや避難訓練などで学校や企業などに出張する機会も多いものです。その場合、ルームスケールなどの技術を使用していると、準備や撤収に時間がかかるほか、屋外での運用にも支障が出てしまいます。本コンテンツの場合、Oculus Riftとノートパソコンを使用することでワンセットで移動でき、設置も5分ほどで可能になっているそうです。

さらに本コンテンツは日本語だけでなく、英語や中国語での体験も可能になっています。現実問題として防災訓練は、日本で暮らす外国人の方々にとっても重要なものです。2019年1月には、東京都が主催する外国人のための防災訓練イベントにおいて、本コンテンツの体験が行われて好評を得たとのこと。

ところで、IT・エレクトロニクス業界のソリューションベンダーである株式会社理経が、なぜ「避難体験VR」のような防災に関するコンテンツを提供しているのでしょうか。

石川氏によると、同社が防災関連の事業を行っていることが背景にあるそうです。理経では、災害の緊急情報を住民へと瞬時に伝達する“Jアラート”の衛星通信システムやその端末機器をはじめ、各種の防災情報システムを手がけています。それだけに、「この『避難体験VR』のように人々の生命に関わるものを作る際には、フィクションではなく現実に基づいた正しいメッセージを伝えなければいけないという思いがある」と石川氏。

監修を行った関澤教授もまた、防災訓練の際に正しいメッセージを伝える重要性を語っていました。防災訓練の一環として、「本物の煙を溜めたテントに入って、煙の怖さを体験できる」というものがありますが、安全のために非常に薄い煙を使用しているため、本物の災の煙とは異なるものとなってしまっているそうです。「こうした状況では、逆に間違ったメッセージを伝えてしまう可能性がある」「現実で直面すると生命に関わるような危険な状況をリアルに体感できるところに、VRを用いる意味がある」と関澤教授は語りました。

土砂災害対策にもVR活用、神戸市と協力

株式会社理経の防災に対する真摯な考え方は、火災の避難訓練だけでなく、他の防災関連コンテンツにも活かされています。

2019年3月12日、株式会社理経は神戸市が実施する自治体の地域課題解決プロジェクト 「Urban Innovation KOBE」において、「土砂災害VRの実証開発」の研究開発チームとして採択された旨を発表しています。株式会社理経は本プロジェクトにて、土砂災害VRの実証開発ならびに防災研修を実施しており、同社の取り組みはますます広がりを見せています。

株式会社理経の「避難体験VR」等への問い合わせはこちらのフォームから。電話の場合は03-3345-2146、新規事業推進室 XRソリューショングループまで。同社の公式Webサイトはこちらです。

(PR)株式会社理経